肉や魚、大豆や穀物などから摂取するタンパク質には、大きく分けて「動物性」と「植物性」があります。どちらも体をつくる大切な栄養素ですが、その由来によって健康への影響に違いがあるのかどうかは、近年関心を集めているテーマです。特に、比較的若い世代を長期間追跡し、しかも摂取量の変化を繰り返し測定した研究はまだ多くありません。今回紹介するのは、スペインの大学卒業生を対象とした大規模追跡調査「SUNプロジェクト」のデータを用いて、植物性タンパク質と動物性タンパク質の摂取量が死亡リスクとどう関連するかを調べた研究です。

どのように調べたのか

この研究は「Seguimiento Universidad de Navarra(SUN)」と呼ばれる、多目的の前向き追跡調査コホートを用いたものです。参加者の食事内容は、スペインで妥当性が確認された食物摂取頻度調査票(FFQ)を使って把握され、ベースライン時点と10年後の追跡調査時点の2回、タンパク質摂取量が測定されました。参加者は植物性・動物性それぞれのタンパク質摂取量に応じて4つのグループ(四分位)に分けられ、摂取量が最も少ないグループを基準として、他のグループの死亡リスクがコックス回帰分析という統計手法で比較されました。

わかったこと

解析対象となったのは17,989人(女性10,961人、男性7,028人)で、ベースライン時点の平均年齢は38歳(標準偏差12歳)でした。追跡期間は合計251,363人年、追跡期間の中央値は12年に及び、この間に460人の死亡が確認されています。

その結果、植物性タンパク質の摂取量が最も多いグループは、最も少ないグループと比較して、さまざまな交絡因子を調整した後でも全死因死亡リスクが35%低いという関連が見られました[ハザード比:0.65(95%信頼区間:0.45〜0.93)、傾向性のp値=0.009]。一方、動物性タンパク質の摂取量については、死亡リスクとの間に統計的に意味のある関連は見られませんでした[ハザード比:0.94(95%信頼区間:0.70〜1.26)、傾向性のp値=0.555]。また、植物性タンパク質の摂取量と、心血管疾患やがんによる死亡との関連についても、有意な関連は見られなかったと報告されています。

この研究をどう読むか

この結果は、地中海沿岸地域の集団において、植物性タンパク質の摂取量が全死因死亡率と逆の関連を示した、というものです。つまり「植物性タンパク質を多く摂る人ほど死亡リスクが低い傾向にあった」という観察結果であり、植物性タンパク質を摂ることで死亡が防げると証明されたわけではない点には注意が必要です。この種の追跡調査(コホート研究)は、あくまで摂取量と結果の「関連」を示すものであり、因果関係を直接証明するものではありません。また、対象はスペインの大学卒業生という特定の集団であり、比較的若い年齢層を含む点も踏まえて結果を捉える必要があります。動物性タンパク質については今回、死亡リスクとの明確な関連は認められなかったとされています。

まとめ

今回紹介した研究では、スペインの大規模追跡調査において、植物性タンパク質の摂取量が多いグループほど全死因死亡リスクが低いという関連が示された一方、動物性タンパク質の摂取量については死亡リスクとの明確な関連は見られませんでした。あくまで一つの研究による観察結果であり、今後さらなる研究による検証が期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:植物性タンパク質の高摂取は「ナバラ大学追跡調査(SUN)」コホートにおいて全死因死亡率を低下させる(ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ニュートリション・2026年08月)