レントゲンやCT検査など、医療現場で放射線を扱う仕事に従事する人たちは、日常的に低線量の放射線にさらされる環境で働いています。こうした職業性の慢性的な放射線曝露が、働く人たちの健康にどのような影響を及ぼしうるのか、そしてふだんの食生活がその健康状態と関係しているのかは、これまであまり詳しく調べられてこなかったテーマです。今回、中国・広州の医療放射線業務従事者を対象に、食事の内容と病気のかかりやすさ(罹病負担)との関連を調べた横断研究が報告されました。
この研究は、フロンティアーズ・イン・ニュートリション誌に2026年07月に掲載予定です。研究チームは2024年1月から12月にかけて、広州で働く医療放射線業務従事者1,080人を対象に調査を実施しました。参加者の食事内容は、信頼性が検証された食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて評価され、罹病負担は医師によって臨床的に診断された慢性疾患の有無として定義されました。年齢や性別といった人口統計学的な要因、職業に関する要因、生活習慣の違いなどの影響をできるだけ取り除いたうえで、食事要因と病気のかかりやすさとの関連が統計的に分析されています。
研究でわかったこと
調査対象者全体のうち、45.5%が何らかの慢性疾患を有しており、中でも甲状腺疾患が最も多く23.5%を占めていたと報告されています。食事内容については、いくつかの興味深い関連が見いだされました。茶を週3回以上飲む人では、そうでない人に比べて病気を有するオッズ(起こりやすさの指標)が低く(オッズ比0.41)、野菜を週3回以上食べる人でも同様に低い傾向が見られました(オッズ比0.44)。果物についても、週200g以上摂取するグループでオッズがやや低い結果でした(オッズ比0.71)。
一方で、赤身肉を週3回以上摂取する人では、病気を有するオッズがおよそ1.88倍高いという関連が示されました。また、野菜よりも肉を好んで食べる傾向がある人でも、罹病リスクが高い方向の関連が確認されています。研究チームはこれらの結果から、植物性食品や茶を中心とした食習慣が、放射線業務従事者における罹病負担の低さと関連していると述べています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ある一時点での食事内容と健康状態を同時に調べる「横断研究」という手法で行われています。そのため、茶や野菜を多く摂ることが病気を減らす「原因」であると証明されたわけではなく、あくまで両者の間に統計的な関連が見られたという段階にとどまる点には注意が必要です。因果関係を確かめるには、今後さらに別の種類の研究が必要になると考えられます。また、この研究は広州の医療放射線業務従事者という特定の集団を対象にしたものであり、一つの研究であり結論が確定したわけではない点も踏まえて読んでいただきたいと思います。
まとめ
今回の研究では、中国広州の医療放射線業務従事者1,080人を対象とした調査から、茶・野菜・果物の摂取が多い人ほど慢性疾患を有するオッズが低く、赤身肉の摂取が多い人や肉を好む人ではオッズが高いという関連が示されました。研究チームは、こうした知見が放射線業務に従事する人たちの職業保健の枠組みに、個々の状況に合わせた栄養指導を組み込むことを検討する材料になりうると述べています。今後の研究の広がりが注目されるテーマといえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:中国広州における職業性放射線業務従事者の食事要因と罹病負担との関連:横断研究(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)