男性の不妊というと、生活習慣や環境要因がよく話題になりますが、日々の食事内容との関係はまだ十分に解明されていません。特に、加工食品や外食に多く含まれるナトリウム(塩分)、糖、トランス脂肪酸(TFA)については、男性不妊との関連を調べた研究がこれまでほとんどありませんでした。今回紹介するのは、イラン・イスファハンの男性を対象に、この3つの栄養素の摂取量と不妊の関連を調べた症例対照研究です。
研究の方法
研究の方法
この研究は2024年にイスファハンに住む20歳から55歳の男性600人を対象に実施されました。内訳は、不妊治療を目的に主要な不妊センターを受診し新たに不妊と診断された男性300人(症例群)と、不妊のない男性300人(対照群)です。参加者の食事内容は、過去1年間の食習慣を尋ねる168項目から成る妥当性の確認された食物摂取頻度調査票を用いて評価され、そこからナトリウム・糖・トランス脂肪酸の摂取量が算出されました。
わかったこと
年齢や体格など考えられる交絡要因を調整したうえで解析した結果、ナトリウム摂取量が最も多いグループ(上位4分の1)は、最も少ないグループと比べて不妊のオッズが71%高いという関連が示されました(オッズ比1.71、95%信頼区間1.05〜2.80)。同様に、トランス脂肪酸の摂取量が多い方から3番目のグループ(3分位のうち上位グループ)は、最も少ないグループと比べて不妊のオッズが78%高いという関連も見られました(オッズ比1.78、95%信頼区間1.03〜3.05)。
一方、糖の摂取量については、対象者全体で見ると不妊との間に統計的に意味のある関連は認められませんでした。ただし、体重が正常範囲の男性に限定して見ると、糖の摂取量が最も多いグループは最も少ないグループに比べて不妊のオッズが3.47倍高いという関連が示されました(95%信頼区間1.38〜8.72)。興味深いことに、過体重または肥満の男性では逆の傾向が見られ、糖の摂取量が多い方から2番目・1番目のグループ(上位4分の1のうち第3・第4グループ)は、最も少ないグループに比べて不妊である可能性がむしろ低いという結果でした(それぞれオッズ比0.54、0.53)。研究者らは、こうした結果は食事全体の質も関わっている可能性があると述べています。
この研究を読むうえでの注意点
この研究は、症例対照研究という手法で、ある時点での食習慣と不妊の有無との関連を調べたものです。そのため、「ナトリウムやトランス脂肪酸の摂取が多いと不妊になる」という因果関係を証明するものではなく、あくまで統計的な関連が示されたにとどまります。また、対象はイランのイスファハンに住む男性に限られており、対象者の記憶に頼る食事調査法の特性上、実際の摂取量とのずれが生じる可能性も考えられます。糖に関する結果が体格によって逆方向に出ている点も含め、一つの研究で得られた知見であり、結論が確定したわけではない点に留意する必要があります。
まとめ
今回の研究では、食事中のナトリウムとトランス脂肪酸の摂取量が多いことが男性の不妊のオッズの高さと関連していることが示唆されました。また、糖の摂取については全体では明確な関連が見られなかったものの、正常体重の男性においては高い摂取量が不妊のオッズの高さと関連する可能性が示されました。今後さらに研究が重ねられることで、食事と男性不妊の関係についての理解が深まることが期待されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:食事性ナトリウム、糖、トランス脂肪酸摂取と男性不妊の関連:イラン人男性を対象とした症例対照研究(サイエンティフィック・リポーツ・2026年07月)