メロンと聞くと甘い果肉を思い浮かべる方が多いと思いますが、その甘さや栄養価が果実の成長過程でどのように変化していくのかは、実はあまり詳しく調べられていません。特に世界各地に存在する在来品種については、品種改良された主要品種に比べてデータが乏しいのが実情です。今回紹介する研究は、イランで栽培されているものの詳しい特性が知られていない2つのマクワウリ品種『チャゲルチェ(Chaghercheh)』と『ザムチェ(Zamcheh)』を対象に、開花後の果実がどのように育ち、味や香り、栄養成分がどう変わっていくのかを調べたものです。研究はイランのゴルガン農業科学天然資源大学とゴンバデ・カーヴース大学の研究者らによって行われました。
どのように調べたのか
研究チームは、果実がついてから完全に熟すまでを5つの段階に分け、10日おきに果実を採取して分析しました。この調査は1年だけでなく、2年連続で実施されています。調べた項目は、果実の重さや大きさ、果肉の厚み、果肉が果実全体に占める割合といった見た目や物理的な特徴に加え、果実の硬さ、皮の厚みや皮・種の割合も含まれます。さらに、糖の甘さに関わる可溶性固形分(糖度の指標)やpH、酸味の指標である滴定酸度、そして甘さと酸味のバランスを示す成熟指数も測定されました。糖の種類についてはショ糖・ブドウ糖・果糖を個別に分析し、色素成分としてクロロフィル(葉緑素)とカロテノイド、さらにフラボノイド、ビタミンC(アスコルビン酸)、総フェノール量、そして抗酸化活性も測定されています。
成長段階でわかった変化
果実が育つにつれて、重さや大きさ、果肉の厚みと果肉の占める割合は右肩上がりに増加し、収穫の最終段階で最大になりました。反対に、果実の硬さや皮の厚み、皮と種が果実に占める割合は成長とともに一貫して減少していきました。完全に熟した段階では、両品種とも可溶性固形分とpHが最も高く、酸度は最も低くなり、その結果として成熟指数も最大になったと報告されています。糖の内訳を見ると、開花後30日を過ぎたあたりからショ糖が大きく蓄積する一方で、ブドウ糖と果糖は徐々に減少していく傾向が見られました。色素については、クロロフィルは成長とともに減少し、逆にカロテノイドとフラボノイドは増加していきました。一方、ビタミンC、総フェノール量、抗酸化活性は成長の途中である開花後30日目でピークを迎え、その後は最終収穫に向けてやや低下する動きを示したとされています。また、これらすべての項目において、チャゲルチェとザムチェの2品種の間には明確な違いが認められたとのことです。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、特定の栄養成分が健康に良い・悪いといった効果を検証したものではなく、あくまで果実の成熟過程における成分変化を記録・比較した基礎的な調査です。対象はイランの2つの在来マクワウリ品種に限られており、他の品種や地域、栽培条件で同じ傾向が当てはまるとは限りません。研究チームは、収穫のタイミングを工夫することで栄養価や商品価値を高められる可能性、また両品種が生理活性化合物や抗酸化活性に富む遺伝資源として、今後の品種改良や機能性食品の開発に役立つ可能性を指摘していますが、これは今回の結果を踏まえた展望であり、効果が確立された結論ではありません。
まとめ
今回の研究は、イランの希少なマクワウリ2品種を対象に、果実が育つ過程で大きさや硬さ、糖の種類、色素、ビタミンCや抗酸化活性がどのように変化するかを丁寧に追跡したものです。甘みのもとになるショ糖は熟す後半に蓄積する一方、抗酸化に関わる成分は成長途中でピークを迎えるなど、収穫のタイミングによって果実の性質が大きく異なることが示されました。一つの研究による知見であり、今後さらに多様な品種や条件での検証が期待されます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Elnaz SoleimanyFard, Kambiz Mashayekhi, Seyed Javad Mousavizadeh, et al. Insights into physicochemical traits, bioactive compounds, and antioxidant activity of two lesser-known Iranian melon accessions in developmental stages. フード・ケミストリー・アドバンシズ (2026). DOI: 10.1016/j.focha.2026.101373. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.