この研究は、オーストラリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を明らかにしようとしたのか
果物や野菜の摂取不足は、世界で年間およそ390万人の死亡に関わるとされ、いくつかの非感染性疾患のリスク上昇とも関連づけられています。オーストラリアの成人で推奨量を満たしているのは4%にすぎないと研究チームは指摘しています。果物・野菜に多く含まれるカロテノイドは、赤・橙・黄の色のもとになる脂溶性の色素で、抗酸化・抗炎症の性質をもち、体内で使われなかった分は皮膚や脂肪組織に蓄えられます。
この皮膚のカロテノイドは、専用の機器で肌の黄色み(b*)として測ることができ、自己申告に頼る食事調査の偏りを補う客観的な指標として注目されてきました。ただし肌の黄色みは食事だけでなく、年齢、性別、体脂肪、日焼けなどにも左右されます。そこで研究チームは、肌の反射分光法で測った黄色みと果物・野菜の摂取量との関係が、年齢層・性別・民族的背景・自己申告の肌の色によってどう見えるのかを調べることを目的としました。研究チームによれば、自己申告で白人系とアジア系が混在する集団を対象に、分光測色計による黄色みと食物摂取頻度調査票との関連を検討した研究はこれまでなかったとされています。
どのように調べたか
調査はオーストラリア・ニューカッスルで、2023年10月から2025年6月にかけて実施された横断研究です。18歳以上で、喫煙者でなく、調査前1週間にセルフタニング製品を使っていないなどの条件を満たし、自己申告で白人系またはアジア系とした人が対象となりました。募集した167人のうち、対面測定を終えた137人が分析に含まれています。平均年齢は38.6歳、6割が女性、約77%が白人系でした。
食事は、オーストラリアで妥当性が検証されている120項目の食物摂取頻度調査票を使い、果物・野菜の摂取量、食事の質の指標(ARFS)、カロテノイド摂取量を推計しました。肌の黄色みは、日光に当たりにくい額・左手のひら・左腕の内側・左足裏の4か所を各3回ずつ測り、平均値を用いています。このほか身長・体重・体組成・腹囲も測定しました。解析では、肌の色、性別、年齢層、体脂肪率、肌の明るさ、脂肪摂取量、季節といった要因を考慮したうえで、食事の要因を段階的に加えた4種類の重回帰分析を行っています。なお対面測定は日光に当たりにくい部位を選んでいる点、体脂肪率は男女で異なる必要最低限の値を基準に換算している点が、この研究の工夫として挙げられています。
報告された主な結果
研究チームの報告によると、果物と野菜を合わせた摂取量および果物単独の摂取量は、肌の黄色みと有意に関連していました。果物が1サーブ増えるごとに黄色みは0.30、果物・野菜合計では1サーブあたり0.10の増加と示されています。総カロテノイド摂取量についても、1標準偏差の増加が黄色み0.41の増加と関連し、個別のカロテノイドでは β-カロテンのみが有意な関連を示しました。
一方で、野菜だけの摂取量と黄色みには有意な関連が見られませんでした。この集団の野菜摂取量は平均4.4サーブ/日で推奨の5〜6サーブに届いておらず、果物は平均2.1サーブ/日で推奨を満たしていました。研究チームは、摂取量の水準のほか、野菜の種類や調理法によってカロテノイドの吸収されやすさが変わることも、関連が見えにくかった理由として考えられると述べています。
食事以外では、体脂肪率と肌の明るさ(L*)がすべてのモデルで黄色みと負の関連を示しました。自己申告の肌の色では、「very fair(非常に色白)」を基準としたとき「light olive」が一貫して高い黄色みを示しました。また、肌の色の代わりに民族的背景を入れたモデルでは、自己申告のアジア系が白人系より高い黄色みと関連していました。ただし研究チームは、この違いは民族そのものよりも、両群で分布が異なる肌の色で説明できる可能性があるとしています。年齢層(35歳未満と35歳以上)、性別、季節、総エネルギー摂取量、脂肪摂取量については、いずれのモデルでも有意な関連は認められませんでした。
研究チームは限界も挙げています。標本数が比較的少ない便宜的なサンプルであること、肌の色が客観的測定ではなく6段階の自己申告であること、食事も自己申告に基づくこと、標本数の制約から民族的背景と肌の色を同じモデルに入れられなかったことなどです。またモデルが説明できたのはデータのばらつきの38〜41%にとどまり、食事の変数を加えても増加はわずかだったと報告されています。
この研究が示すもの
この研究は、肌の黄色みという非侵襲的な測定値が、果物・野菜やカロテノイドの摂取という外的な要因だけでなく、体脂肪率や肌の色といった個人にもともと備わった要因からも影響を受けることを示しました。肌の黄色みを食事の指標として読み取ろうとするなら、こうした背景の違いをあわせて考える必要があるということです。
また、性別による差が見られなかった点について、研究チームは体脂肪率を男女それぞれの必要最低限の値を基準に換算したことが関係している可能性を挙げ、体脂肪率を扱う際には性差を踏まえることの重要性を指摘しています。
著者:Anna K. Jansson(Nutrition and Metabolic Health Research Program, Hunter Medical Research Institute, New Lambton Heights, NSW 2305, Australia)、María Gómez‐Martín(Nutrition and Metabolic Health Research Program, Hunter Medical Research Institute, New Lambton Heights, NSW 2305, Australia)、Erin D. Clarke(Nutrition and Metabolic Health Research Program, Hunter Medical Research Institute, New Lambton Heights, NSW 2305, Australia)、Marc T. P. Adam(Nutrition and Metabolic Health Research Program, Hunter Medical Research Institute, New Lambton Heights, NSW 2305, Australia)、Clare E. Collins(Nutrition and Metabolic Health Research Program, Hunter Medical Research Institute, New Lambton Heights, NSW 2305, Australia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Anna K. Jansson, María Gómez‐Martín, Erin D. Clarke, et al. Examining Demographic Variables Associated with Fruit and Vegetable Intake and Skin Yellowness. Nutrients 2026-08-27. DOI: 10.3390/nu18172804. 原著ライセンス:CC BY.