この研究は、チリの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜ「凍らせて濃縮する」のか

アーモンドミルクは、牛乳の代わりとして選ばれることが増えている飲料です。研究チームによれば、その背景には、牛乳アレルギーや乳糖不耐症の広がり、植物性の食生活への関心、乳製品の生産にともなう環境面・倫理面の問題意識があります。一方でアーモンドミルクは傷みやすく、日持ちが短いため、輸送や保管の途中で損失が生じやすいという課題も指摘されています。

そこで注目されるのが「濃縮」です。液体から水分を取り除いて成分を濃くすれば、より安定した形で扱いやすくなります。ただし従来の濃縮法である「蒸発(加熱して水分を飛ばす方法)」は高い温度を使うため、熱に弱い成分が損なわれる可能性があります。

これに対して本研究が取り上げたのが「凍結濃縮」です。これは液体を凍らせる際、氷の結晶が糖やビタミン、生理活性成分などの溶けている物質を押し出す性質を利用する技術です。凍結が進むと、これらの成分は氷の外側に集まり、最終的に「濃縮された液体部分」と「氷の部分」の二つに分かれます。加熱を使わないため、低温のまま濃縮できる点が特徴です。研究チームは、この技術のなかでも装置や操作が簡単な「ブロック凍結濃縮」に遠心分離を組み合わせた方法(本文では遠心ブロック凍結濃縮と呼ばれます)を採用しました。著者らは、アーモンドミルクに凍結濃縮を適用した先行研究はこれまで見当たらないと述べています。

何をどう調べたか

研究チームは、チリ産の生アーモンドを水に浸してから皮をむき、粉砕・ろ過してアーモンドミルクを自作しました。比較の参考として、市販のアーモンド飲料も分析対象に加えています。

凍結濃縮の手順は次のとおりです。45 mLの試料を容器に入れ、上下以外を断熱材で覆って上下方向に熱が伝わるようにしたうえで、−20 ℃で12時間凍結させます。その後、15 ℃で20分間、4000 rpmの遠心分離にかけて濃縮液と氷を分けます。ここで得られた濃縮液を次の原料として、同じ工程を合計3回繰り返しました。

比較対象として、加熱による蒸発濃縮も行いました。このとき重要なのは、各回の凍結濃縮で得られた濃縮液と「同じ濃さ(糖度を表すブリックス値で一致させたもの)」になるように蒸発濃縮を調整した点です。濃さをそろえることで、方法の違いによる品質の差を公平に比べられるようにしています。

測定項目は、水分・タンパク質・脂質といった成分組成、糖度・pH・酸度・色といった物理化学的性質、総ポリフェノール・総フラボノイド・タンパク質量といった生理活性成分の総量、そしてDPPH・FRAP・ORACという三つの方法で測る抗酸化能です。さらに、訓練を受けた21名のパネルによる官能評価も行われました。凍結濃縮の性能を数値で評価するため、濃縮指数・分離効率・溶質収率といった指標も算出されています。

報告された主な結果

凍結の様子を記録したところ、濃縮を重ねるごとに凍り始める温度が下がっていくことが確認されました。元のアーモンドミルクでは約−2.0 ℃だったのに対し、1回目・2回目・3回目の濃縮液ではそれぞれ約−6.0 ℃、−10.0 ℃、−14.0 ℃でした。著者らはこれを、水分が除かれて溶けている成分の濃度が上がったためと説明しています。凍結の進む速さも、約7.8 μm/sから6.3 μm/sへと段階的に遅くなりました。研究チームは、これらの速度がいずれも氷の中に成分が閉じ込められにくい範囲にあり、分離に適した条件だったと述べています。

濃度については、凍結濃縮で1回目・2回目・3回目がそれぞれ約2.7、3.3、4.1 °Brix、蒸発濃縮では約2.8、3.3、4.0 °Brixとなり、対応する回どうしで統計的に有意な差はありませんでした。つまり、狙いどおり同じ濃さで比較できていたことになります。

成分組成では、元のアーモンドミルクは水分約92.1%、タンパク質約1.6%、脂質約1.3%でした。濃縮後はどちらの方法でも水分が減りましたが、タンパク質と脂質の含量は凍結濃縮のほうが高い値を示しました。著者らは、低温で処理することがタンパク質の変性や凝集、脂質の熱による酸化といった現象を起こりにくくした可能性を指摘しています。

pHと酸度は濃縮回数が進むにつれて逆向きに動き、pHは5.7から5.2へ下がり、酸度は0.4から1.0 g クエン酸/100 gへ上がりました。これは成分が濃くなるにつれて有機酸も濃くなったためと説明されています。

色の変化も方法によって差が出ました。凍結濃縮を3回行った試料は明るさL*=57.3、a*=−0.5、b*=29.9だったのに対し、蒸発濃縮ではL*=41.1、a*=0.9、b*=37.7となり、より暗く黄色みが強くなりました。元の試料との色の隔たりを表すΔE*も、凍結濃縮では17.2、22.9、27.7、蒸発濃縮では20.0、25.7、33.0と、加熱のほうが大きな変化を示しています。なお、ΔE*が3.5を超えると人の目でも違いがはっきり分かるとされる基準があり、今回はどの濃縮試料も元のアーモンドミルクと見分けられる範囲にありました。

参考として加えられた市販品は、水分が最も多く、タンパク質・脂質・糖度・酸度が低い値でした。研究チームはこれを、市販品のアーモンドの配合割合が少ないこと(今回の市販品ではアーモンドペーストが3%)や、安定剤・乳化剤などの副原料が使われていることと結びつけて説明しています。

この研究が示すこと

同じ濃さまで濃縮したとき、加熱を使わない凍結濃縮のほうが、タンパク質や脂質をより多く保ち、色の変化も小さかった ― これが本研究の中心的な報告です。加熱による蒸発濃縮と条件をそろえて比べたからこそ、その差が処理方法そのものに由来することを示せた点に、この研究の意味があります。

著者らは、アーモンドミルクのように熱に弱い植物性飲料にとって、低温で進む凍結濃縮が扱いやすい選択肢になりうることを、実際の測定値をもって示しました。同時に、より多くの回数や異なる条件での検討が今後必要だとも述べています。

著者:Guillermo Petzold(Grupo de Crioconcentración de Alimentos y Procesos Relacionados, Departamento de Ingeniería en Alimentos, Facultad de Ciencias de la Salud y de los Alimentos, Universidad del Bío-Bío, Av. Andrés Bello 720, Chillán 3780000, Chile)、Indira Pérez(Centro de Estudios en Alimentos Procesados (CEAP), Avenida Lircay s/n, Talca 3460000, Chile)、Max Vásquez-Senador(Grupo de Crioconcentración de Alimentos y Procesos Relacionados, Departamento de Ingeniería en Alimentos, Facultad de Ciencias de la Salud y de los Alimentos, Universidad del Bío-Bío, Av. Andrés Bello 720, Chillán 3780000, Chile)、Patricio Orellana‐Palma(Escuela de Nutrición y Dietética, Centro Integrativo de Biología y Química Aplicada (CIBQA), Facultad de Ciencias de la Salud, Universidad Bernardo O’Higgins, Calle General Gana 1702, Santiago 8370854, Chile)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Guillermo Petzold, Indira Pérez, Max Vásquez-Senador, et al. Effect of Freeze Concentration on the Process Parameters, Physicochemical Properties, Total Bioactive Compounds and Antioxidant Capacity of Almond Milk. Foods 2026-08-27. DOI: 10.3390/foods15173021. 原著ライセンス:CC BY.