魚の体長や体重を測ることは、水産資源の管理や加工現場での品質管理に欠かせない作業です。しかし従来の手作業による計測は人手がかかるうえ、測る人によって値がばらつきやすく、大量の魚を短時間で処理するには限界がありました。今回紹介する研究では、この課題に対して非接触の3Dカメラを使った計測システムが検証されています。
どのように計測したのか
研究チームは、飛行時間型(ToF)カメラと呼ばれる3Dセンサーをコンベヤベルトの上に設置し、ベルトで運ばれる冷凍カツオ(Katsuwonus pelamis)を撮影しました。対象となったのは合計207尾の冷凍カツオで、この3Dシステムによる計測と、従来通りの手作業による計測の両方が同じ個体に対して行われています。3D点群データからは尾叉長(フォークレングス、魚の吻端から尾びれの中央の切れ込みまでの長さ)、体高、体幅の3つの形態計測値が抽出されました。さらに、これらの形態データの組み合わせを使い、ランダムフォレスト回帰という機械学習の手法によって体重を推定するモデルが構築されています。
研究でわかったこと
3Dシステムによる計測値は、尾叉長25〜75cmの範囲の個体において、尾叉長の平均絶対誤差が1.43cm、体高が0.59cm、体幅が0.52cmとなり、手作業による計測値に近い結果が得られたと報告されています。体重推定については、尾叉長・体高・体幅の3つを組み合わせたモデルが最も精度が高く、体重7kgまでの個体で平均絶対誤差0.20kgとなり、尾叉長だけを使うモデルより明確に精度が高かったとされています。また、この3Dシステムによる推定体重の分布は、手作業で実測した体重の分布と統計的に有意な差が見られなかったとのことです。加えて、実測に基づく重量クラス分類との一致率は80.7%となり、市場での熟練者による目視等級判定の一致率73.9%を上回ったことも示されています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は筑波大学に所属する著者を含む研究チームによって行われたもので、対象となったのはカツオという、日本の食生活や水産業になじみの深い魚種です。研究チーム自身が述べているように、この成果は魚の3D点群データから生物学的に意味のある形態情報を取り出せること、そして体幅の情報を加えることで体重推定の精度が向上することを示す概念実証(プルーフ・オブ・コンセプト)の段階にあります。対象がカツオという単一魚種であり、個体数も207尾に限られていることから、この結果がそのまま他の魚種や、より広い実運用環境にあてはまるかどうかは、今後の研究による確認が必要と考えられます。
まとめ
今回の研究では、コンベヤベルト上を流れる冷凍カツオをToFカメラで非接触に3D計測し、機械学習を用いて体重を推定する手法が試みられました。手作業計測に近い精度が得られ、体幅を加味することで体重推定の精度が向上したことが示唆されていますが、これは一つの研究による知見であり、水産加工現場での実用化に向けてはさらなる検証が必要と考えられます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Miyamoto Ryusuke, Nakata Eisuke, Suzuki Yusuke, et al. Non-contact 3D morphometrics and weight estimation of frozen skipjack tuna using time-of-flight point clouds on a conveyor belt. 機関リポジトリデータベース(IRDB) (2026). 原著ライセンス: cc-by.