バナナといえば果実部分ばかりが利用され、収穫後に残る偽茎や葉、そして花(バナナブロッサム、いわゆる男花)の多くは廃棄・焼却されているのが実情です。世界のバナナ生産量は年間1億3500万トンを超えるとされ、そこから生じる残渣は温室効果ガスの発生や土壌劣化といった環境負荷にもつながっているといいます。インドの研究チームが今回、この未利用資源であるバナナの花を粉末化し、グルテンフリーの押出スナック(エクストルーダーで成形するパフ状スナック)に配合する研究を行いました。
研究を行ったのは、インド・マハラシュトラ州にあるVasantrao Naik Marathwada Krishi Vidyapeeth(VNMKV)食品工学カレッジなどに所属する研究者らです。
バナナの花をどう粉末にし、どんなスナックを作ったのか
使われたバナナの品種はGrand Naine(Musa paradisiaca L.)です。収穫直後の花は水分含量が約89〜91%と非常に多く、そのままでは腐敗しやすいため、外側の苞を取り除いて食用部分(小花)を厚さ3〜5mmに切り、褐変を防ぐために750ppmのメタ重亜硫酸カリウム(KMS)溶液に15分浸してから、60±2℃のキャビネット式乾燥機で5〜7時間乾燥させています。乾燥後は粉砕し、目開き180マイクロメートル(80メッシュ)のふるいにかけて粉末に仕上げました。この60℃という乾燥温度は、水分をしっかり飛ばしつつ、色や機能性成分の劣化・褐変をできるだけ抑えるバランスを狙って選ばれたと説明されています。
このバナナブロッソム粉末を、コーン粉、アマランサス粉、フィンガーミレット(シコクビエ)粉、フォックステールミレット(アワの一種)粉と組み合わせ、配合比率の異なる5種類の生地(無添加の対照区と、バナナブロッソム粉末の配合量を増やした4種の処理区)を用意。ツインスクリュー押出機(直径4mmのダイから成形)で加工し、できあがったスナックの一般成分(水分・タンパク質・脂質・灰分・炭水化物)、食物繊維、ミネラル、色、食感を分析しています。
バナナの花を増やすとスナックはどう変わったか
バナナブロッソム粉末の配合量を増やすほど、タンパク質・食物繊維・灰分(ミネラルの総量の目安)が増加し、逆に炭水化物と脂質は減少する傾向が見られました。タンパク質含量は対照区の11.79%から、最も配合量の多い処理区で13.17%まで上昇しています。水分含量も対照区の6.00%から最大7.70%まで緩やかに増えましたが、これは食物繊維の高い保水力によるものと考察されています。
ミネラルについては、カルシウム・リン・亜鉛・マグネシウムが配合量に応じて増加傾向を示した一方、鉄と銅はやや変動があり、カリウムには一定の増加傾向は見られなかったとされています。色については、バナナブロッソム粉末を増やすほど明度(L*値、明るさの指標)と黄色み(b*値)が低下し赤み寄りの色調に変化しました。これはバナナブロッソムに含まれるポリフェノールやアントシアニン様の色素、および押出加工中に起こる非酵素的褐変(メイラード反応やカラメル化)によるものと説明されています。
食感の分析(対照区と、最も評価の高かった配合の比較)では、バナナブロッソム粉末10%配合区は硬さが2802gから5474gへと大きく増加し、逆に凝集性(噛んだときのまとまりやすさ)は0.29から0.17へ低下、弾力性(スプリンギネス)も2.61mmから1.82mmへ減少しました。これは食物繊維の増加によって押出加工時のデンプンの膨化(パフ化)が抑えられ、より密で硬い構造になったためと考えられています。
複数の配合の中では、バナナブロッソム粉末を10%配合した処理区(論文中でT2と呼ばれる配合)が、9点尺度の官能評価で最も高い総合嗜好スコア(8.8点)を獲得し、栄養面の向上・色調・食感・嗜好性のバランスが最も良い配合として位置づけられています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、廃棄されやすいバナナの花という副産物を、グルテンを含まない雑穀ベースのスナックに活用できる可能性を示したものです。ただし、これはあくまで実験室レベルでの配合開発と成分分析の結果であり、健康への効果を直接確かめたものではありません。論文の著者らも、今後は保存中の品質安定性や消費者による受容性評価、大規模生産化の検討が必要だとしています。特定の配合や成分量がそのまま製品として市場に出ているわけではない点にも注意が必要です。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Sachin Arun Giri, Rajesh Baliram Kshirsagar, Amol P. Khapre, et al. Development of Functional Gluten-free Extruded Snacks Incorporated with Banana Blossom Powder. アジアン・ジャーナル・オブ・デイリー・アンド・フード・リサーチ (2026). DOI: 10.18805/ajdfr.dr-2518. 原著ライセンス: cc-by.