竹は成長が早く加工しやすい植物として知られていますが、竹材を加工する過程では大量の残渣(ざんさ)が発生します。この残渣にはセルロースやポリフェノールといった成分が豊富に含まれており、そのまま廃棄するのではなく有効活用できないかという発想から生まれたのが今回の研究です。中国の竹研究機関や食品科学系の大学に所属する研究者らが、竹由来の材料を使ってバナナと青ピーマン(グリーンペッパー)の保存性を高めるスプレー式コーティング剤を開発し、その効果を調べました。
果物や野菜は収穫後も呼吸や酵素反応を続けており、水分の蒸発による重量減少、酵素による褐変(かっぺん)、脂質の酸化などによって品質が低下していきます。こうした劣化を抑える方法として、食品の表面に薄い膜を作るコーティング技術が研究されていますが、今回はその材料として竹セルロースナノファイバー、竹ポリフェノール、そして抗菌性を持つとされるε(イプシロン)-ポリリジンを組み合わせた「CBS-PB-G」という名称のヒドロゲル(水を多く含むゲル状素材)コーティングが作られました。このコーティングはスプレーで吹き付けられる形状に調整されており、食品表面に密で安定した網目状の構造を形成するとされています。
研究でわかったこと
研究チームは、このCBS-PB-Gコーティングを施したバナナと青ピーマンを保存し、無処理のものと比較しました。まずバリア性(水分や酸素の出入りを防ぐ性質)、抗酸化性、抗菌性が改善されたことが確認されたとしています。具体的な保存試験では、バナナの重量減少率が無処理では11.81%であったのに対し、コーティングを施すと6.91%にとどまったと報告されています。また、褐変に関わる酵素であるPPO(ポリフェノールオキシダーゼ)の活性についても、1467.83マイクロカタール毎キログラム(新鮮重量あたり)から679.33マイクロカタール毎キログラムへと低下したことが示されました。これはコーティングが酵素による褐変反応を抑える方向に働いたことを示す数値とされています。
青ピーマンについては、保存12日後の時点でMDA(マロンジアルデヒド、脂質が酸化することで生じる物質)含量が、無処理の0.25マイクロモル毎グラムからコーティング処理で0.15マイクロモル毎グラムへ減少したことが報告されています。MDAは脂質の酸化ストレスの指標として使われる物質であり、この結果は青ピーマンにおいても酸化による劣化がある程度抑えられたことを示唆するものとされています。全体として、CBS-PB-Gは水分の損失、酵素による褐変、酸化ストレスの三つの側面から収穫後の品質低下を遅らせる方向に働いたと結論づけられています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、竹加工の副産物という未利用資源を、食品保存に役立つ機能性コーティングへと変換する一つの試みとして位置づけられます。ただし、今回報告されている結果はバナナと青ピーマンという特定の品目を対象とした実験によるものであり、他の果物や野菜、あるいは実際の流通・小売の現場でも同様の効果が得られるかどうかは、この要旨の情報だけでは判断できません。あくまで一つの研究段階の成果であり、コーティング技術として確立し実用化されたと断定できるものではない点には留意が必要です。
まとめ
竹の加工残渣を原料としたスプレー式ヒドロゲルコーティング「CBS-PB-G」は、バナナの重量減少や褐変を抑え、青ピーマンの脂質酸化を軽減する方向の結果が得られたと報告されています。廃棄されがちなバイオマス資源を食品保存の分野で活用しようとする研究の一例として、今後の展開が注目されます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Qifeng Chen, Qiong Shao, Feng Yao, et al. Sprayable bamboo cellulose-based hydrogel coating functionalized with bamboo polyphenols for postharvest preservation of bananas and green peppers. エルダブリューティー(食品科学技術誌) (2026). DOI: 10.1016/j.lwt.2026.119812. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.