白米よりも玄米、精製された小麦粉よりも全粒粉のパンのほうが体によさそうだ、という話を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。こうした食品に多く含まれているのが「食物繊維」や「レジスタントスターチ(消化されにくいでんぷん)」といった、消化管を通過する際にゆっくりと分解される多糖類です。これらは血糖値や脂質(コレステロールなど)の代謝に関わっている可能性があるとして、これまで数多くの研究が行われてきました。ただし個々の研究では対象者や方法もさまざまで、結果を横断的に見渡した情報は多くありません。そこで今回紹介する論文は、世界各国で行われた関連研究を集めて内容を整理し、全体としてどのような傾向が見えるかをまとめた「ナラティブレビュー」です。
この研究では、レジスタントスターチや非デンプン性多糖類(食物繊維の一種)を対象とした研究を、複数の学術データベースを用いて網羅的に検索しました。検索は2026年4月14日に実施され、各データベースの収録開始時点から検索日までのすべての記録が対象とされています。最終的に、13か国から報告された21件の研究が analysisの対象として選ばれました。
集められた研究の内容は、大きく「血糖値」「インスリン」「脂質」「エネルギー摂取量」「満腹感・食欲」という5つのテーマに整理されました。血糖値に関しては、レジスタントスターチや非デンプン性多糖類の摂取によって、空腹時血糖値や食後血糖値、HbA1c(過去数か月の平均的な血糖状態を示す指標)、インスリンの反応が改善したと報告する研究がある一方で、これらの指標に有意な変化が見られなかったとする研究も存在し、結果は一貫していませんでした。脂質についても同様に結果はまちまちでしたが、一部の研究では総コレステロールやLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)の低下が報告されています。また、エネルギー摂取量や満腹感・食欲への影響は、調べられた多糖類の種類やその物理化学的な性質(粘性や発酵のされやすさなど)によって異なる結果が示されました。
このように、今回のレビューで得られた結果には研究間でかなりのばらつきがありました。それでも全体として見ると、食事性多糖類が血糖コントロールや脂質代謝の改善に何らかの形で寄与する可能性が示唆されるとされており、その中でも血糖値に関する指標については、比較的多くの研究で肯定的な結果が報告される傾向があったとされています。ただし、この論文自体が述べているとおり、効果の大きさや一貫性は対象集団や介入の種類、研究デザインによって異なっており、多糖類が血糖・脂質パラメータの調節に果たす役割を確立するには、より長期間にわたる、質の高いランダム化比較試験を含むさらなる研究が必要だと結論づけられています。今回の内容はあくまで既存研究を整理したレビューであり、特定の食品や成分の摂取によって病気が予防・改善されると断定するものではない点には注意が必要です。
まとめ
今回紹介したレビューは、レジスタントスターチや非デンプン性多糖類といった食事性多糖類が血糖値や脂質パラメータにどのような影響を与えうるかを、世界13か国・21件の研究にもとづいて整理したものです。血糖コントロールに関して比較的多くの改善報告が見られた一方、脂質やインスリン、満腹感などへの影響には研究間で差があり、結論は一つに定まっていません。多糖類と健康の関係について理解を深めるうえで参考になる整理ではありますが、著者ら自身が指摘するとおり、今後さらに質の高い研究の蓄積が待たれる段階だといえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:食物繊維(多糖類)による血糖・脂質パラメータの調節―ナラティブレビュー(ニュートリエンツ・2026年07月)