著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。
掲載誌:DEMETRA Alimentação Nutrição & Saúde
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ブラジルでは、果物や野菜を食べる量が減り、超加工食品を食べる量が増えてきました。超加工食品とは、そのまま食べられるように工業的に作られた食品です。栄養のバランスが偏りやすく、つい食べ過ぎてしまう味に作られています。著者らによると、こうした食生活の変化は肥満や糖尿病、心血管疾患などの慢性疾患と関連しています。また、近年は経済危機や食品価格の上昇によって、十分な食料を得られない世帯が増えています。
食品の値段は、人々が何を食べるかを左右する重要な要因です。ところが、どの食品をどれだけ買い、いくら払い、それが家計のどれだけを占めるのかをまとめて分析した研究は少ないといいます。都市と農村の違いを合わせて扱った研究も限られています。そこで研究チームは、所得の水準と住む地域によって、食品の購入内容・費用・家計に占める割合がどう違うのかを分析しました。
何をどのように調べたか
研究チームは、ブラジル地理統計院が2017年7月から2018年7月に実施した家計調査のデータを使いました。この調査は全国を代表するように設計されており、5万7920世帯が実際に回答しています。分析では、各世帯が7日間に家庭で食べるために入手した食品と飲み物の記録を使い、それらを575の地域区分(層)ごとに集計しました。
この調査には、実際に食べた量と食品価格を結びつけたデータがありません。そのため著者らは、家庭で購入・入手した食品を実際の摂取の目安として扱っています。食品は加工の程度によって四つに分類しました。未加工・最小限の加工の食品、油や砂糖などの調理用材料、加工食品、超加工食品の四つです。購入量は熱量(キロカロリー)に換算しました。さらに、異なる集団を比べられるように、1人1日2000キロカロリー分の食事に換算して、食品群ごとの熱量の割合と費用を計算しています。この2000キロカロリーは比較のための基準値であり、実際の摂取量を示すものではありません。1日あたりの費用を30倍して月額とし、平均所得で割ることで、食費が家計に占める割合を求めました。
主な結果
全国全体では、2000キロカロリー分の食事にかかる費用は1人1日6.83レアルで、家計の12.35%に相当しました。熱量の最も大きな割合(51.80%)は未加工・最小限の加工の食品が占めていました。その中でも米と豆が最大でした。一方、果物と野菜は熱量全体のわずか4.02%にとどまりました。超加工食品は18.15%を占めていました。
所得を三つの階層に分けて比べると、差がはっきり表れました。最も所得の低い層では、食費が家計の22.43%を占めました。最も所得の高い層では8.80%でした。地域別では、農村が18.78%、都市が11.60%で、農村のほうが家計に占める食費の割合が大きくなっていました。超加工食品が熱量に占める割合は、所得の高い層(22.33%)のほうが低い層(13.02%)より高くなりました。都市(19.78%)も農村(11.83%)より高い値でした。
著者らは、世界保健機関が目安とする1日400グラムの果物・野菜の摂取を、2000キロカロリーの食事のおよそ5.2〜6%の熱量に相当するとしています。今回の分析では、どの集団もこの水準に届いていませんでした。特に所得の低い層と農村で低い値でした。研究チームの計算では、所得の低い層が果物・野菜を熱量の6%まで増やすと、家計に占める食費の割合は1.84%増えます。農村でも同様に1.87%の増加が必要になるといいます。
研究から見えてくること
この研究は、所得の低い世帯や農村の世帯ほど、すでに家計の大きな部分を食費に充てていることを示しています。著者らは、こうした世帯がさらに果物や野菜を増やそうとすると、ほかの生活必需品への支出を圧迫しかねないと指摘しています。食品の費用は健康的な食事を妨げる構造的な壁であり、食の仕組みに深い不平等があることを示している、というのが研究チームの見方です。そのうえで論文は、健康的な食事をより公平で手の届くものにする必要性を訴えています。具体的には、果物や野菜の消費を促し、超加工食品の消費を抑える公共政策が欠かせないと結論づけています。
原著論文の著者・所属:Laura de Castro Nassif(Universidade Federal de Minas Gerais, Escola de Enfermagem, Departamento de Nutrição. Belo Horizonte, MG, Brasil)、Thaís Cristina Marquezine Caldeira(Universidade Federal de Minas Gerais, Escola de Enfermagem, Departamento de Nutrição. Belo Horizonte, MG, Brasil)、Bruna Barbosa Furtado(Universidade Federal de Minas Gerais, Escola de Enfermagem, Departamento de Nutrição. Belo Horizonte, MG, Brasil)、Rafael Moreira Claro(Universidade Federal de Minas Gerais, Escola de Enfermagem, Departamento de Nutrição. Belo Horizonte, MG, Brasil)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Laura de Castro Nassif, Thaís Cristina Marquezine Caldeira, Bruna Barbosa Furtado, et al. Impacto financeiro da alimentação no orçamento familiar dos brasileiros conforme renda e localidade geográfica. DEMETRA Alimentação Nutrição & Saúde 2026-08-31. DOI: 10.12957/demetra.2026.91200. 原著ライセンス:CC BY.