あんまんや肉まんのような中華まんは、工場で生地を成形したあと冷凍し、必要なときに解凍して蒸し上げる「冷凍生地」の形で流通することが多い食品です。しかし冷凍と解凍を繰り返すと生地の中に氷の結晶ができ、生地を膨らませる役割を持つグルテンの網目構造が壊れてしまい、できあがったまんじゅうの膨らみや食感、風味が損なわれることが知られています。こうした課題に対して、食品に粘りや保水性を持たせる「増粘多糖類(ハイドロコロイド)」を生地に加える工夫が研究されてきました。今回紹介する論文は、スイカズラ(Lonicera japonica)に由来する多糖(LJP)を冷凍生地に添加することで、この問題を和らげられるかを調べたものです。研究は中国・信陽(しんよう)農林学院食品科学工程学院などの研究者らによって行われました。
どんな方法で調べたのか
研究チームは、LJPを0%(無添加)、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%という異なる割合で加えた冷凍生地をそれぞれ用意しました。これらの生地に凍結と解凍を繰り返す処理(フリーズ・サー処理)を行ったうえで、生地の糊化特性、レオロジー特性(粘弾性)、熱特性を測定し、あわせて生地の中の水分がどのように移動・分布しているか、生地に含まれるたんぱく質の二次構造がどう変化するかを調べました。さらに、これらの生地から作ったあんまんについて、食感(テクスチャー)、比容積(生地の膨らみ具合を示す指標)、色、電子鼻による香りの応答、そして人による官能評価(味や香り、食感などの総合評価)も分析しています。
研究でわかったこと
結果として、LJPは自身が持つ親水性の基(水と結びつきやすい化学構造)によって水分子を捕まえることで、冷凍保存中の生地の安定性を高めることが示されました。これにより、氷の結晶がグルテンの網目構造に与えるダメージが和らぎ、生地の保水力と構造的なまとまりが保たれやすくなったと報告されています。
特にLJPを1.5%加えた生地では、貯蔵弾性率(G′、生地の弾力性を示す指標)と損失弾性率(G″、生地の粘りを示す指標)がもっとも高く、生地中で動きにくい状態にある「結合水」の割合が最大になりました。また、たんぱく質の二次構造の中でも比較的安定とされるα-ヘリックス構造とβ-シート構造の含有量が増え、グルテンの網目構造を顕微鏡で観察するともっとも緻密で連続性のある状態になっていたとされています。
これに対応して、1.5%のLJPを加えて作られたあんまんは、比容積が1.28mL/g、高さと直径の比が0.534と、いずれもこの中でもっとも高い値を示し、食感の面でも良好な特性が見られました。また香りの面では、香気成分やテルペノイド類の含有量が増え、好ましくない揮発性成分の生成が抑えられたと報告されています。官能評価のスコアも89.4点でもっとも高く、総合的な品質がもっとも優れていたとされています。一方で、LJPを2.0%と多く加えすぎた場合には、逆にグルテンの網目構造の連続性が損なわれ、製品の品質にはマイナスの影響が出たことも示されています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、LJPという増粘多糖類を冷凍生地の品質改良剤として使う可能性を示す基礎的な検討であり、著者らも「冷凍生地向けのハイドロコロイド系品質改良剤の開発に向けた理論的根拠と技術的な参考を提供するもの」と位置づけています。特定の添加量(1.5%)で良好な結果が得られた一方、添加量が多すぎるとかえって品質が低下する結果も示されており、量に応じて効果が変わることが示唆されています。これは一つの実験条件のもとで得られた結果であり、この記事の内容だけで健康効果や食品としての優劣を断定するものではありません。
まとめ
今回の研究では、スイカズラ由来の多糖であるLJPを冷凍あんまん生地に加えることで、水分保持やグルテンの網目構造の安定性が高まり、特に1.5%の添加量で生地の物性やできあがったあんまんの膨らみ・食感・香り・官能評価が良好になったことが報告されました。一方で2.0%まで増やすと構造や品質にマイナスの影響が出ることも示されており、多糖類を使った冷凍生地の品質改良には適切な添加量の見極めが重要であることがうかがえる研究といえます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:スイカズラ多糖が冷凍あんまん生地の水分移動、ネットワーク構造、品質に及ぼす影響(DOAJ(オープンアクセス学術誌ディレクトリ)・2026年09月掲載予定)