マルベリー(Morus属、和名クワ)は、実だけでなく葉・樹皮・枝までもが世界各地の伝統医療で利用されてきた植物です。利尿作用や血糖・血圧に関わる民間療法の素材として使われてきた歴史があり、その働きの背景には果実に含まれるさまざまな活性成分が関わっていると考えられています。では、同じ種類のマルベリーでも、育った場所が違えば中身の成分は変わるのでしょうか。今回紹介する論文は、この素朴でありながら興味深い疑問に取り組んだ研究です。

研究チームは、トルコ・イズミル県のオデミシュ地区にある3つの異なる場所で採取したクロミグワ(Morus nigra L.、黒い実をつけるマルベリー)を対象に、抗酸化に関わる成分を比較しました。具体的には、実から得たさまざまな抽出物について、ポリフェノールの総量(総フェノール含量)、フラボノイドの総量(総フラボノイド含量)、そして全体としての抗酸化能力(総抗酸化能)という3つの指標を測定し、産地ごとに違いがあるかを調べています。

研究でわかったこと

測定の結果、総フェノール含量は100gあたり408.89〜574.38mg(没食子酸相当量)の範囲で産地によってばらつきが見られました。総フラボノイド含量も100gあたり13.67〜19.27mg(カテキン相当量)の幅があり、総抗酸化能も89.35%〜97.78%と、採取場所によって差が確認されています。

これらの結果から、マルベリーの実に含まれる生化学的な成分は、遺伝的な要因だけでなく、栽培条件や生態的な環境の違いにも影響を受けている可能性があると報告されています。同じ種類の植物であっても、育つ場所や環境次第で中身の成分バランスが変わりうるということが示唆された形です。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

今回の研究は、トルコ国内の3地点で採取したクロミグワを対象にした比較であり、あくまで一つの研究として得られた知見です。ここで示された数値の幅や傾向がすべての産地・すべてのマルベリーに当てはまるとは限らず、健康効果や機能性を保証するものでもありません。総フェノール含量や抗酸化能が高い・低いということが、実際の健康への影響にどうつながるかについては、この要旨の範囲では述べられていません。今後さらに多くの産地・条件での検証が積み重ねられることで、より確かな傾向が見えてくるものと考えられます。

まとめ

この研究では、トルコの3つの異なる場所で採取したクロミグワの実を比較したところ、総フェノール含量、総フラボノイド含量、総抗酸化能のいずれにも産地による違いが見られ、遺伝的要因に加えて栽培環境や生態的条件も成分に影響しうることが示されました。マルベリーを「機能性食品」として捉える上でも、こうした産地・環境による変動を考慮することの重要性が指摘されています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:異なる産地から採取したマルベリー(Morus属)遺伝資源の生化学成分(メイヴェ・ビリミ(果実科学)・2026年07月)