この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Sustainability

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

ナッツ類は不飽和脂肪酸を多く含み、健康的な食品として広く知られています。しかし「体にいいと分かっている」ことと「実際に日常的に食べる」ことの間には、ズレがあるのではないか——特に、お金の使い方に制約が多い若い世代ではどうなのか。この素朴な疑問に取り組んだのが、トルコの大学生を対象にした今回の研究です。学術誌「サステナビリティ」に2026年07月に掲載予定の論文で、健康に対する意識調査と、実際に売られているナッツの脂肪酸を分析するという2つのアプローチを組み合わせているのが特徴です。

研究チームは、18歳から28歳のトルコの大学生666名を対象に、ナッツに対する意識や食習慣についてアンケート調査を行いました。この意識を測る質問項目は、統計的な手法(主成分分析)によって妥当性が検証されており、データの適合度や信頼性の指標も一定の基準を満たしていたと報告されています。それと並行して、実際に市販されている5種類のナッツについて、ガスクロマトグラフィーという分析手法で脂肪酸の組成を調べたところ、いずれも全脂肪酸中80.05〜87.72%が不飽和脂肪酸であることが確認されました。これは、ナッツが栄養密度の高い食品であるという一般的な認識と一致する結果だとされています。

「体にいい」と思っていても、食べているのは1割未満

興味深いのは、学生たちの多くがナッツに対して一貫して肯定的な健康イメージを持っていたにもかかわらず、実際に毎日ナッツを食べていた学生はわずか9.3%にとどまったという点です。では、食べる頻度を左右していたのは何だったのでしょうか。分析の結果、最も強く関連していたのは「月々の食費支出」であり、統計モデルの中でも最も説明力の高い要因だったと報告されています。健康に関する意識も一定の関連は見られたものの、ナッツそのものの脂肪酸の質(つまり実際の栄養的な良し悪し)は、消費頻度とは統計的に関連していなかったとされています。さらに、学生が抱く健康イメージと、実際に測定された脂肪酸の質との対応関係も弱く、統計的に意味のある関連は認められなかったとのことです。

つまりこの研究では、「体にいいと知っているかどうか」よりも「無理なく買える価格かどうか」の方が、ナッツを日常的に食べるかどうかを分ける鍵になっている可能性が示唆されています。研究チームは、手頃な価格で栄養価の高い食品を身近にすることが、持続可能で健康的な食生活への現実的な入り口になり得ると位置づけています。

この研究を読むうえで気をつけたいこと

今回の結果は、トルコの大学生という特定の集団を対象にした調査と、5種類の市販ナッツの分析に基づくものです。年齢層や国、対象となる食品が異なれば、結果も変わる可能性があります。また、この研究は「意識」と「実際の消費行動」、そして「食品の成分」という複数の要素の関連を統計的に調べたものであり、価格を下げれば消費が増える、といった因果関係を直接証明したものではない点にも注意が必要です。あくまで一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。

それでも、「知識があれば行動が変わる」という単純な図式だけでは説明しきれない食習慣の実態を、具体的なデータとともに示した点は、食と健康について考えるうえで示唆に富む内容だと言えそうです。

まとめ

この研究では、トルコの大学生を対象にした調査から、ナッツに対する健康イメージは総じて肯定的である一方、実際に日常的に食べている学生は少数派にとどまることが報告されました。そして、消費頻度に最も強く関連していたのは健康意識ではなく、月々の食費という経済的な要因だったとされています。健康的とされる食品を日々の食生活に取り入れてもらうためには、価格面でのアクセスのしやすさが重要な論点になり得ることを、この研究は示しています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):手頃さ、健康認識、脂肪酸組成:トルコの大学生におけるナッツ消費の統合分析(サステナビリティ・2026年07月)

著者:Deniz Çağla Bal(Department of Agricultural Economics, Faculty of Agriculture, Tekirdağ Namık Kemal University, 59030 Tekirdağ, Türkiye)、Yasemin Oraman(Department of Agricultural Economics, Faculty of Agriculture, Tekirdağ Namık Kemal University, 59030 Tekirdağ, Türkiye)、O. Gaytancıoglu(Department of Agricultural Economics, Faculty of Agriculture, Tekirdağ Namık Kemal University, 59030 Tekirdağ, Türkiye)