著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:OpenAlex
ライセンス: CC BY 確認元: OpenAlex
研究の目的
自然療法(ナチュロパシー)は、体にもともと備わる回復力を自然な手段で引き出すことを重視する医療体系です。その中心には「何を食べるかが健康や病気からの回復に影響する」という考え方があり、食事は100年以上にわたって治療の手段として用いられてきました。
この論文の著者らは、自然療法で食べ物が治療的にどう使われているかについて、現在の知見を整理することを目的としました。具体的には、食品に含まれる主な生理活性成分(体の働きに作用する成分)の作用の仕組み、慢性疾患の管理における役割、そして通常医療と補完的な手法を組み合わせる「統合医療」の中での位置づけを扱っています。
どのように調べたか
著者らは、PubMed、Scopus、CINAHLという医学・看護系の文献データベースから、2000年から2024年までの査読付き論文を集め、ナラティブレビューとしてまとめました。ナラティブレビューとは、決められた統計手順で結果を統合するのではなく、既存の研究を幅広く読み解いて論点ごとに整理する形式の総説です。
対象としたのは、自然療法における食事介入、植物由来成分の作用の仕組み、腸内細菌叢(腸内に住む微生物の集まり)への働きかけ、慢性疾患の経過に関する研究です。論文では、抗炎症作用が報告されている食品、発酵食品などの腸に関わる食品、ストレスや免疫に関わるとされる食品、肝臓の解毒経路を支えるとされる食品といった分類ごとに知見が紹介されています。
主な報告内容
著者らは、抗炎症作用のある食品、発酵食品、アダプトゲン(ストレスへの抵抗力を高めるとされる)ハーブ、植物性栄養素を多く含む食事が、2型糖尿病、心血管疾患、炎症性腸疾患、自己免疫疾患、精神・神経系の状態など多くの慢性疾患に対して治療的に有効となりうる根拠があるとまとめています。その仕組みとして、腸・脳・免疫の相互のつながりへの作用、遺伝子の働き方の調節(エピジェネティックな調節)、酸化ストレスの軽減、腸内細菌叢の改善が挙げられています。
論文では、既存研究の具体的な報告も紹介されています。たとえば糖尿病については、27件のランダム化比較試験をまとめた解析で、血糖が上がりにくい低GI食により、長期的な血糖の指標であるHbA1cが対照の食事に比べ0.5%低下したと報告されていることが取り上げられています。心血管疾患については、7,447人が参加したPREDIMED試験で、エキストラバージンオリーブオイルまたはナッツを加えた地中海食を割り当てられた高リスクの人々では、低脂肪の対照食に比べて主な心血管イベントが30%少なかったことが紹介されています。
心の健康については、追跡型の観察研究で、地中海食などの自然食品中心の食事を守る人ではうつ病のオッズが25〜35%低いという関連が示されていると述べられています。また、うつ病の人を対象としたSMILES試験では、食事療法を受けたグループの32%が寛解に至り、社会的支援を受けた対照グループでは8%だったことが紹介されています。
さらに著者らは、腸・脳・免疫のつながりを、食事が消化器だけでなく全身や神経にも影響するという見方を支える中心的な枠組みとして位置づけています。また、食品成分と遺伝子の関わりを調べる「栄養ゲノミクス」によって、個人の遺伝的特徴や腸内細菌叢に合わせた食事の提案につながる可能性にも触れています。
一方で、著者らは限界も明記しています。作用の仕組みに関する根拠の多くは試験管内の実験や動物実験によるものであり、臨床試験は規模が小さい、期間が短い、対象者がばらついている、盲検化(参加者や評価者に割り当てを伏せること)が不十分といった制約を抱えることが多いとしています。また、観察研究では因果関係を確かめられず、測られていない食事や生活習慣の影響を受けやすいことも指摘しています。キレート作用(重金属の排出)を目的としたクロレラなどの利用については、強い臨床的根拠が限られているとも述べています。
この研究が伝えること
著者らは、食べ物を治療の手段とする自然療法の考え方について、それを支える根拠は非常に多く、増え続けていると述べ、伝統的な知恵と現代の栄養科学・腸内細菌研究・栄養ゲノミクスが重なり合うところで支持されていると結論づけています。そのうえで、作用の仕組みの根拠が実験室や動物での研究に多く由来すること、臨床試験にしばしば規模や期間などの制約があること、観察研究だけでは因果関係を確かめられないことを、注意すべき限界として挙げています。このレビューは、自然療法の立場から食と慢性疾患の関わりについての知見を整理し、その根拠を読む際の注意点もあわせて示したものといえます。
原著論文の著者・所属:Dr Keerthana .K(Associate Professor, Department of Fasting & Diet Therapy, G.T.N medical College of Naturopathy and Yogic Science Research Center, Dindigul, Tamilnadu, India)、Dr. V. Deepa、Dr. M. Sivamani、Dr. Ishwariya、Dr. Vasunthara. M、M. Panchayathu Raja
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Dr Keerthana .K, Dr. V. Deepa, Dr. M. Sivamani, et al. Therapeutic Role of Food as Medicine in Naturopathy: A Comprehensive Review. OpenAlex 2026-08-04. DOI: 10.5281/zenodo.21786965. 原著ライセンス:CC BY.