著者の所属・活動拠点の国は、デンマーク、トルコです。

掲載誌:Applied Food Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

二つの貯蔵タンパク質を分ける理由

菜種(アブラナの種子)には、ナピンとクルシフェリンという二つの主要な貯蔵タンパク質が含まれています。研究チームによると、この二つは溶けやすさや物理化学的な性質、食品加工での働き方が対照的です。そのため両者が混ざったままでは、食品への利用が制限されます。

それぞれを精製した形で得られれば、目的に合わせた食品利用がしやすくなります。しかし、簡単で効率のよい精製方法はまだ限られています。そこで研究チームは、市販の菜種タンパク質分離物を原料として、ナピンとクルシフェリンを精製する方法の開発に取り組みました。

試した精製方法と比較の観点

研究チームが検討したのは二つの方法です。一つは硫酸アンモニウム沈殿法で、塩を加えてタンパク質を沈殿させ、分けて回収します。もう一つはマイクロ波を用いた精製法です。

得られたタンパク質は、基準となる従来の方法で精製したものと比較されました。基準とした方法は、タンパク質が最も溶けにくくなる酸性度で沈殿させる等電点沈殿と、膜ろ過です。比較では、分光法やクロマトグラフィー、光散乱測定を用いて、タンパク質の立体構造や粒子の大きさ、アミノ酸組成などを調べました。

あわせて、加熱や酸によって生じるタンパク質の変化も評価しました。指標としたのは、リシノアラニンとランチオニンと呼ばれる「架橋」、つまりタンパク質の中に新たにできる化学的なつながりの量で、質量分析によって測定しました。さらに、試験管内で消化の過程を模した実験を行い、消化されやすさも調べました。

主な報告結果

硫酸アンモニウム沈殿法では、純度79±1%のナピンと純度87.9±0.2%のクルシフェリンが得られたと報告されています。マイクロ波を用いた方法では、80℃で1分という短時間の処理で、純度80.35±0.30%のナピンを分離できました。この方法では添加物も必要ありませんでした。

構造の分析では、どの精製方法でも、両タンパク質の全体的な立体構造の変化はわずかでした。一方で、ナピンのアミノ酸組成には有意な変化が見られたとされています。

加熱や酸による架橋は、いずれの方法でも少量でした。リシノアラニンはタンパク質1グラムあたり0.35〜1ナノモル、ランチオニンは0.01〜0.12ナノモルでした。試験管内での消化率は73〜79.8%で、精製方法による大きな違いは見られなかったと報告されています。

研究が示すこと

著者らは、硫酸アンモニウム沈殿法とマイクロ波を用いた精製法を、簡便かつ迅速で有望な手段と位置づけています。これらの方法により、性質の異なる二つの菜種タンパク質を高い純度で得られるとしています。今回の結果は、市販の菜種タンパク質から成分を分け、それぞれの性質に応じて食品に使い分けるための一つの手がかりを示しています。

原著論文の著者・所属:Shivani Karalia(Department of Food Science, Faculty of Science, University of Copenhagen, Rolighedsvej 26, 1958 Frederiksberg C, Denmark)、Mohammad Bayati(Department of Food Science, Faculty of Science, University of Copenhagen, Rolighedsvej 26, 1958 Frederiksberg C, Denmark)、Nour MH Awad(Department of Food Technology, Vocational School of Technical Sciences at Mersin Tarsus Organized Industrial Zone, Tarsus University, 33100, Mersin, Turkey)、Gulden Goksen(Department of Food Technology, Vocational School of Technical Sciences at Mersin Tarsus Organized Industrial Zone, Tarsus University, 33100, Mersin, Turkey)、Mahesha M. Poojary(Department of Food Science, Faculty of Science, University of Copenhagen, Rolighedsvej 26, 1958 Frederiksberg C, Denmark)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shivani Karalia, Mohammad Bayati, Nour MH Awad, et al. Ammonium sulfate and microwave‑assisted purification of rapeseed proteins and their effects on physicochemical properties and digestibility. Applied Food Research 2026-10-08. DOI: 10.1016/j.afres.2026.102713. 原著ライセンス:CC BY.