この研究は、ペルーの研究機関の研究論文です。

掲載誌:EQA - International Journal of Environmental Quality

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的と背景

ゴマ(Sesamum indicum L.)は油分含量が高く、食品や化粧品などの需要を背景に世界で生産されている作物です。論文によれば、ペルーでは主にピウラやランバイエケなどの沿岸地域で生産されてきましたが、近年はアマゾン地域のピチャリなどにも栽培が広がっています。一方で、病害虫や栽培管理上の制約が収量を左右する課題として残っていると著者らは述べています。

研究チームは、化学的手段に頼らない管理の選択肢として微生物資材に注目しました。トリコデルマ・ハルジアヌム(Trichoderma harzianum)は土壌中の有用な糸状菌で、病原菌を抑えたり根の働きを助けたりすると報告されている微生物です。もう一つの「有用微生物群(EM)」は、複数の有益な微生物を組み合わせた資材を指します。著者らは、これら二つの資材の施用と、1ヘクタールあたりの株数(栽植密度)を組み合わせたときに、ゴマの生育と収量がどう変わるのかを圃場で確かめることを目的としました。

どのように調べたか

試験は2024年の作期に、ペルー・クスコ州ラ・コンベンシオン郡ピチャリの試験圃場(標高577メートル)で行われました。論文の記載では、年平均気温は約24℃、年降水量は約1,100ミリメートルの高温多湿な熱帯気候で、土壌は砂壌土、pHは6.3〜6.8でした。

著者らは乱塊法という圃場試験の設計を用い、三つの要因をそれぞれ二水準ずつ組み合わせた8区を設けました。要因は、栽植密度(1ヘクタールあたり119,000株と143,000株)、T. harzianumの施用の有無、EMの施用の有無です。各区を3反復し、計24の試験区としました。T. harzianumは出芽後15日に液体懸濁液として、EMは出芽後20日と40日に葉面散布として施用されたと報告されています。栽培期間は110日で、各区の中央列から無作為に10株ずつ、合計240株を調査対象としました。測定項目は、株の高さ(草丈)、さく果(種子の入る果実)がつき始める位置までの高さ、さく果の長さ、1株あたりのさく果数、そして1ヘクタールあたりの子実収量です。結果は分散分析とテューキー法による平均値の比較で検討されました。

報告された主な結果

著者らの報告によると、最も明確な反応が現れたのは子実収量でした。T. harzianumの施用(p = 0.0197)と、T. harzianumとEMの組み合わせによる交互作用(p = 0.0424)で統計的に有意な差が認められています。交互作用とは、二つの要因が組み合わさったときの効き方が、それぞれ単独の効果の足し算とは異なることを指します。全処理区の平均収量は1ヘクタールあたり1,123.15キログラムで、最も高い値は、T. harzianumを施用し143,000株の密度とした区で得られた1,252キログラムでした。

1株あたりのさく果数では、T. harzianumの施用のみに有意差が認められました(p = 0.0140)。施用した区の平均は89.67個、施用しなかった区は62.18個と報告されています。草丈については、T. harzianumとEMの交互作用に有意差がみられ(p = 0.0147)、全処理区の平均は207.88センチメートルでした。

一方で、さく果がつき始める位置までの高さとさく果の長さには、処理区の間で有意な差はみられませんでした。著者らは、これらの形質は微生物の施用よりも、その地域の品種がもつ性質や環境条件と結びついている可能性があると考察しています。なお論文は、試験が1作期のみであり、土壌微生物の解析や根圏の分析は行っていないという限界も明記しています。

この研究が示すこと

この研究は、高温多湿なペルー・アマゾンの圃場条件下で、T. harzianumを中心とする微生物の接種がゴマの収量やさく果数に寄与しうることを、実際の栽培現場のデータとして示しました。著者らは、こうした生物的な資材の利用が、適切な栽培管理と組み合わせられたときに、熱帯条件下でのゴマ生産性の向上に貢献しうると結論づけています。栽培が新たに広がりつつある地域で、どの手法がどの形質に効くのかを一つずつ切り分けた記録として意味をもつ研究だといえます。

著者:Juan Aníbal Galindo Galindo(Universidad Nacional de San Cristóbal de Huamanga, Peru)、Jhongver Rogel Mucha Suiqui(Agroforestry Engineering. Universidad Nacional de San Cristóbal de Huamanga, Peru)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Juan Aníbal Galindo Galindo, Jhongver Rogel Mucha Suiqui. Effects of Trichoderma harzianum, effective microorganisms, and plant density on the yield of Sesamum indicum L. under tropical humid conditions: A field study in Pichari, Peru. EQA - International Journal of Environmental Quality 2026-09-16. DOI: 10.60923/issn.2281-4485/25688. 原著ライセンス:CC BY.