著者の所属・活動拠点の国は、ニュージーランドです。

掲載誌:Aquaculture Fish and Fisheries

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

タコの養殖を実用化するうえで大きな壁となっているのが、餌の問題です。研究チームによると、タコが進んで食べ、しかも必要な栄養を満たす配合飼料(原料を調合して作る人工飼料)は、まだ開発されていません。

そこで著者らは、有効な配合飼料ができるまでの間、持続可能な形で調達できる天然の魚介類を餌にする方法が現実的な代替策になり得ると考えました。この研究では、貝類の養殖で廃棄される二枚貝を、オーストラリア周辺に生息する「グルーミー・オクトパス」(学名 Octopus tetricus)の幼体に与え、食べる量、成長、体の成分を調べました。

三種類の餌で56日間飼育

実験では56日間にわたり、三種類の餌が比較されました。一つ目は、廃棄された二枚貝を解凍してそのまま与える「天然餌」です。二つ目は、刻んだ二枚貝をゼラチンと酵素のトランスグルタミナーゼで固めて粒状にした餌、三つ目は、刻んだ二枚貝にオキアミの粉末を加え、同じ方法で固めた餌です。

研究チームは、体重に対して1日に食べた餌の量の割合(摂餌率)、体重の増え方(成長率)、食べた餌がどれだけ体重増加に結びついたか(飼料効率や飼料転換)、そしてタコの体の生化学的な組成を測定しました。

主な結果

抄録によると、湿重量でみた平均摂餌率は、期間を問わず天然餌のグループで最も高く、体重の1日あたり12.1%でした。著者らはこれを、固めた二種類の餌は天然餌に比べて食いつき(嗜好性)が劣ることを示すものと解釈しています。

平均成長率は、餌の種類とは関係なく、実験前半(0〜28日目)の体重1日あたり1.8%のほうが、後半(29〜56日目)の1.0%より高い値でした。実験全体を通じた平均の飼料効率は23.3%、飼料転換の値は5.5で、いずれも餌の種類による違いは見られなかったと報告されています。

タコの体の成分も餌の違いによる差はおおむね見られませんでしたが、天然餌を与えたタコでは腕の組織の脂質含量が30%多くなっていました。

研究が示すこと

著者らは、商業養殖で廃棄される二枚貝が、この種のタコの幼体にとって、速い成長と良好な飼料転換をもたらす有効な餌であると結論づけています。

一方、固めた粒状の餌では食べる量と成長が低下しました。それでも研究チームは、こうした水分を含む魚介ベースの餌は、本来なら捨てられる資源を活用しながらタコ用の配合飼料づくりに踏み出す手がかりになり得るとし、とくに食いつきを改善できればその可能性が高まると述べています。

原著論文の著者・所属:Stefan Spreitzenbarth(Leigh Marine Laboratory, Institute of Marine Science University of Auckland Auckland New Zealand)、Al Alder(Leigh Marine Laboratory, Institute of Marine Science University of Auckland Auckland New Zealand)、Fiona MacKechnie(Leigh Marine Laboratory, Institute of Marine Science University of Auckland Auckland New Zealand)、William McKay(BioMarine Ltd. Auckland New Zealand)、Luis Nahmad‐Rohen(Leigh Marine Laboratory, Institute of Marine Science University of Auckland Auckland New Zealand; Optometry and Vision Science, Faculty of Medical and Health Sciences University of Auckland Auckland New Zealand)、Sophie M. Roberts(Leigh Marine Laboratory, Institute of Marine Science University of Auckland Auckland New Zealand)、Andrew Jeffs(Leigh Marine Laboratory, Institute of Marine Science University of Auckland Auckland New Zealand; School of Biological Sciences University of Auckland Auckland New Zealand)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Stefan Spreitzenbarth, Al Alder, Fiona MacKechnie, et al. Using Discarded Shellfish From Aquaculture as Food for Rearing Juvenile Gloomy Octopus, Octopus tetricus. Aquaculture Fish and Fisheries 2026-10-28. DOI: 10.1002/aff2.70355. 原著ライセンス:CC BY.