この研究は、タイの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を目的とした研究か
食事の持続可能性を考えるとき、環境への負荷と栄養の質は、どちらか一方ではなく互いに補い合う要素として捉えられるようになってきました。しかし著者らは、この二つの側面を同時に検討した研究は少なく、とりわけ東南アジアの料理を対象としたものはほとんどないと指摘しています。
そこで研究チームは、タイでよく食べられる「カレー・オーバー・ライス」——ご飯におかずをかけて一皿にした、いわゆるぶっかけご飯形式のメニュー90品を取り上げ、レシピ単位で温室効果ガス(GHG)の排出量と栄養価の両方を評価しました。
どのように調べたか
研究チームは、食材ごとのカーボンフットプリント(生産から流通までに排出される温室効果ガスを二酸化炭素に換算した量)のデータベースを土台にして、これをメニュー単位まで積み上げました。その際、調理過程で生じる排出も計算に含めています。
さらに、比較の基準をそろえるため、実際に提供される一食分——蒸したご飯とさまざまなおかずを組み合わせた完全な一皿——の形で標準化しました。加えて、GHG排出量と22項目の栄養指標との関係を、値をそろえて(正規化して)ヒートマップとして可視化する分析も行っています。
報告された主な結果
90品のうち、動物性たんぱく質として最も多く使われていたのは豚肉で、次いで鶏肉、魚が最も少なかったと報告されています。
排出量については、動物性たんぱく質を含むメニューが一食分1キログラムあたり平均2.9±0.2 kgCO2e(二酸化炭素換算キログラム)であったのに対し、動物性たんぱく質を含まないメニューは平均1.2±0.2 kgCO2eでした。排出が集中していた段階は食材の調達で、動物性たんぱく質を含むメニューでは排出量全体の86%、含まないメニューでは69%を占めていたとされています。
栄養と排出量を突き合わせた分析からは、いくつかの傾向が示されました。魚を使ったメニューは、排出量あたりで得られる三大栄養素の量という点で鶏肉や豚肉を上回り、気候面での効率が高いとされています。米や麺を中心としたメニューは、排出量に対するエネルギー(カロリー)と炭水化物の得られ方が優れていました。野菜のメニューは、環境への影響を抑えながらミネラルやビタミンを供給する点で効果的だったと報告されています。
この研究が示すこと
著者らは、こうした定量的な結果から、動物性たんぱく質の種類と量の調整が、気候に配慮した料理をつくるうえで大きな手がかりになると述べています。また、炭素と栄養の両方を示す表示(デュアルラベリング)のように、消費者が自分で選択を調整できるよう後押しする働きかけの導入も、今回の知見が支持するものとして挙げられています。
なじみのある一皿の中身を、栄養と排出量の両面から測り直すことで、日々の食事選択のどこに調整の余地があるのかが見えてくる——この研究はそうした視点を提示しています。
著者:Kanokporn Aree(Department of Environmental Engineering, Faculty of Engineering, Chiang Mai University)、Santi Phithakkitnukoon(Department of Computer Engineering, Faculty of Engineering, Chiang Mai University)、Karn Patanukhom(Department of Computer Engineering, Faculty of Engineering, Chiang Mai University)、Sarunnoud Phuphisith(Department of Environmental Engineering, Faculty of Engineering, Chiang Mai University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kanokporn Aree, Santi Phithakkitnukoon, Karn Patanukhom, et al. Climate and nutritional implications of Thai curry-over-rice menus: a recipe-level assessment of carbon footprints and dietary quality. Frontiers in Sustainable Food Systems 2026-09-16. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1902426. 原著ライセンス:CC BY.