トマトはジュースやピューレ、ソースなどに加工される機会の多い野菜だが、その加工工程では必ず「トマトポマース」と呼ばれる搾りかす(皮や種が主成分)が出る。原料の重量に対して13〜15%ほどが廃棄物となり、世界全体では年間540万〜900万トンにも達すると見積もられている。このトマトポマースは食物繊維(乾物あたり25.4〜50.0%)やたんぱく質(15.4〜23.7%)を比較的多く含む一方、多くは廃棄・処理の対象になってきた。今回紹介する研究は、このトマトポマースを粉末にしてトウモロコシ生地に混ぜ込み、押出機(エクストルーダー)で加熱・加圧しながら成形する「押出パフ」スナックの開発を試みたものだ。ICAR(インド農業研究評議会)傘下のインド農業研究所に所属する研究者らによる研究である。
実験では、ジュース搾汁後に残ったトマトポマースを「泡沫マット乾燥(フォームマット乾燥)」という方法で乾燥させて粉末にした。この方法は起泡剤を使って表面積を広げることで乾燥時間を大幅に短縮できるため、リコピンなどの熱に弱い機能性成分の劣化を抑えやすいとされている。使用した品種は、インド農業研究所が開発した加工用トマト「Pusa Prasanskrit」。この粉末とコーンを混ぜた生地を、直径5mmの丸型ダイを装着した二軸押出機に投入し、ダイ出口温度160℃の条件で、トマトポマース濃度(5〜15%)・供給水分(12〜16%)・スクリュー回転速度(200〜300rpm)の3つの条件を組み合わせて27通り(3×3×3の実験計画)の押出パフを作り、膨化率・気孔率・硬さ・パリパリ感(クリスプ性)・色・気孔の大きさ・リコピン含量・官能評価(50人のパネルによる9段階評価)を調べた。
押出条件によって食感や見た目がどう変わったか
トマトポマースの配合を増やすほど、生地に含まれる食物繊維がでんぷんの膨化を妨げ、膨化率が下がって硬い製品になる傾向がみられた。ポマース濃度が5%から15%に増えると、硬さは53.42Nから80.68Nまで上昇したという。ただし、この硬さの上昇は供給水分を調整することである程度和らげられることも分かった。水分量を12%から16%まで増やしていくと、気孔率はいったん14%付近まで上昇して内部構造がより多孔質になったが、それ以上水分を増やすと、生地の粘弾性が失われて押出直後に構造がつぶれてしまい、かえって気孔率が下がる現象が確認された。またスクリュー回転速度を200rpmから300rpmへ上げると、パリパリ感の評点は4.5から9.5まで明確に上昇し、ポマース添加による食感低下を補う方向に働いた。一方で総合的な嗜好度(官能評価のスコア)は、回転速度250rpm付近で最も高くなり、それより速いと風味の劣化などでむしろ評価が下がる傾向がみられている。
色に関しては、ポマース濃度が上がるほど赤み(a値)が増し、これはポマースに含まれるリコピンによるものと考えられた。実際にリコピン含量は、ポマース濃度が高いほど直線的に増加し、実験した範囲では0.12〜0.74mg/100gの幅がみられた。興味深いのは、スクリュー回転速度を上げるとリコピン含量はむしろ減少する傾向が観察された点で、回転速度が速いほど摩擦熱やせん断力が強まり、熱や機械的な力に弱いリコピンの分解が進んだ可能性が論じられている。押出加工自体は高温・短時間の処理であるため、リコピンのような熱に比較的強い成分は大きくは損なわれず、むしろ加工によって細胞壁が壊れることで取り出されやすくなる面もあるとされた。
最適化された配合と、できあがったパフの栄養成分
これらのデータをもとに、研究チームは膨化率・パリパリ感・硬さ・総合評価などのバランスが取れる条件として、トマトポマース濃度14.39%、スクリュー回転速度213rpm、供給水分13.44%という配合を導き出し、モデルの予測値(望ましさ指数0.716)と実際の測定値を照らし合わせて妥当性を確認した。この最適化された配合で作ったパフは、ポマースを加えない対照品に比べて、たんぱく質が10.6%(対照品1.58%)、食物繊維が15.19%(対照品9.97%)と大幅に高く、リコピンも0.54mg/100g含んでいたと報告されている。ただし硬さについては対照品の31.5Nに対し最適化品は68.37Nとかなり硬く、総合的な嗜好度も対照品の8.3点に対し7.0点とやや下がっており、栄養価の向上と食感・嗜好性の間にはトレードオフがあることもうかがえる。
この研究をどう読むか
この研究は、廃棄されがちなトマトポマースを「価値のない廃棄物」から「食物繊維やリコピンを含む機能性素材」へと転換できる可能性を示したものであり、健康効果を保証するものではない。得られた結果は特定の品種・特定の押出機・実験室規模の条件のもとで得られたものであり、著者ら自身も、でんぷん・食物繊維・リコピンがどのように結合し、それが体内での利用されやすさ(生体利用率)にどう影響するかは今後の研究課題だとしている。一つの研究段階の成果であり、実際の商品化や健康への影響について結論づけられたものではない点に留意したい。
まとめ
トマト加工の副産物であるトマトポマースを乾燥粉末にしてコーンパフに配合し、押出機の条件(ポマース濃度・水分・スクリュー回転速度)を調整することで、たんぱく質や食物繊維、リコピンを増やしつつ食感を保てる配合が見いだされたことが、この研究のポイントだ。食品廃棄物の有効活用と、機能性を持たせたスナック開発の両立に向けた基礎データとして位置づけられる。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Bindvi Arora, Avinash Kumar Jha, Alka Joshi, et al. Process Optimization and Product Characterization of Tomato Pomace Incorporated Biofunctionalized Extruded Puffs: Effect of Extruder Operational Parameters. フード・アズ・メディシン (2026). DOI: 10.53941/fm.2026.100008. 原著ライセンス: cc-by.