お米には白いものだけでなく、黒や赤みを帯びた色つきの品種も存在します。こうした色つき米には、天然のアントシアニンやポリフェノールなどの植物由来成分が含まれていることが知られており、育種の現場でも注目が集まっています。今回紹介する研究では、サウジアラビアで栽培される「ハッサウィ米」という在来品種に着目し、黒米や、エジプトで栽培される非色つき品種(ギザ177、エジプシャン・ヤスミン)との比較を通じて、粒の品質や栄養成分がどのように異なるのかが調べられました。
研究チームには、サウジアラビアのキング・ファイサル大学農学食品科学部に所属する研究者に加え、エジプトの農業研究センター・イネ研究訓練センター、アインシャムス大学の研究者らが名を連ねています。
4つの品種で何を比べたのか
この研究では、色つき米である黒米とハッサウィ米、非色つき米であるギザ177とエジプシャン・ヤスミンの計4品種について、粒の外観や加工特性、含まれる植物化学成分、栄養素の量が測定・比較されました。具体的には、粒の脱穀・精米のしやすさ(もみすり・精米・整粒歩留まり)、アミロース含量、粒の伸長率や白濁(チョーク質)の程度といった品質面に加え、アントシアニン、フラボノイド、総フェノール含量、抗酸化能、たんぱく質、鉄分といった成分が測定対象となりました。
色つき米は植物化学成分やたんぱく質・鉄分が多い傾向
測定の結果、黒米とハッサウィ米はアントシアニン含量がそれぞれ100グラムあたり777ミリグラムと443ミリグラムと高く、フラボノイド含量もそれぞれ乾燥重量100グラムあたり14.24ミリグラムと10.21ミリグラム(ルチン相当量換算)、抗酸化能も100グラムあたり335.23ミリグラムと223.13ミリグラムと、他の2品種より高い値を示したと報告されています。一方、総フェノール含量については、非色つき品種であるエジプシャン・ヤスミンが最も高い値を示しており、この品種が持つ香り成分に関連している可能性が論文中で指摘されています。
たんぱく質についても、黒米(12.04%)とハッサウィ米(11.62%)は、ギザ177(6.86%)やエジプシャン・ヤスミン(7.53%)より高い割合を示したとされています。鉄分の含有量も同様の傾向で、黒米が100グラム換算で15.21マイクログラム、ハッサウィ米が10.51マイクログラムと、エジプシャン・ヤスミン(8.24マイクログラム)やギザ177(3.77マイクログラム)を上回ったと報告されています。
粒の加工特性に関しては、非色つき品種のギザ177が、もみすり・精米・整粒の各歩留まりで最も優れた結果を示し、アミロース含量は4品種中最も低い17.8%、千粒重も最も高かったとされています。また、ギザ177とエジプシャン・ヤスミンは炊飯時の粒の伸長率がそれぞれ47.82%、41.83%と高く、一方でハッサウィ米は粒の白濁(チョーク質)の割合が17.2%と4品種中最も高かったことが示されています。
この研究をどう受け止めるか
この研究は、限られた4つの品種を対象とした比較分析であり、栽培条件や年次による変動、他の品種との比較については触れられていません。また、論文では色つき米に含まれる植物化学成分が健康に何らかの利益をもたらす可能性が示唆されているものの、これは成分の含有量に基づく考察であり、ヒトでの効果を直接検証したものではない点に注意が必要です。一つの比較研究として位置づけられるものであり、この結果だけで特定の品種の健康効果が確定したわけではありません。
まとめ
今回の比較分析では、黒米とハッサウィ米という2つの色つき米が、アントシアニンやフラボノイド、抗酸化能、たんぱく質、鉄分の面で非色つき米より高い値を示す一方、精米のしやすさや粒の外観といった加工品質の面ではギザ177のような従来品種に及ばない傾向があることが示されました。著者らは、こうした植物化学成分がどのように合成されるかを理解することが、今後の品種改良や栄養価の向上に役立ちうると述べています。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Ali Jawad Almusallam, Adel A. Rezk, El-Malkey MM, et al. Comparative analysis of grain quality, phytochemical profile, and nutritional composition of Hassawi rice (Oryza sativa L.) and selected rice varieties. ノトゥーレ・シエンツィア・ビオロジカエ (2026). DOI: 10.55779/nsb18312962. 原著ライセンス: cc-by.