著者の所属・活動拠点の国は、フランス、スイスです。

掲載誌:Infectious Diseases of Poverty

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

祭りの後に相次いだ発症を調べる

研究チームは、ニューカレドニアのリフー島で起きた広東住血線虫による感染症の集団発生について、患者の広がりと感染源を調べました。きっかけは、クリスマス時期の地域の祭りに参加した住民3人が、2023年1月に入院したことでした。ほかの参加者にも似た症状があり、調査が始まりました。

広東住血線虫は、ネズミやカタツムリ、ナメクジなどを介して生活する寄生虫です。人が感染力のある幼虫を口にすると、中枢神経で炎症が起こり、好酸球という白血球が脳や脊髄を取り巻く液体に増える「好酸球性髄膜炎」を引き起こすことがあります。持続する頭痛などが主な症状です。

19人に症状、飲み物と調理環境を調査

研究チームは診療記録を確認し、祭りの参加者40人に聞き取りを行いました。その結果、感染に合う症状があった19人を把握しました。このうち3人は、脳や脊髄を取り巻く髄液のPCR検査で寄生虫の遺伝物質が検出された確定例で、16人は疑い例でした。19人のうち4人が入院し、最も多く報告された症状は頭痛でした。

症状のあった全員が12月27日の祭りに参加していたため、研究チームはこの日を最も可能性の高い感染機会と考えました。その日から発症までは2〜6週間で、中央値は3週間でした。食べ物や飲み物、参加日程を照合したところ、共通する感染源の候補は、貯めた雨水で薄めた自家製の果物ジュースとレモネードに絞られました。

雨水の貯水容器の周辺にはネズミのふんやカタツムリなどが見られましたが、採取した水から幼虫や寄生虫の遺伝物質は検出されませんでした。一方、屋外の調理場では、ミキサーなどの器具を夜間も外で乾かしており、周囲の草木や、乾燥中の器具の上でナメクジなどが観察されました。

有力だったのはジュース調製時の混入という仮説

著者らが最もありそうだと考えたのは、小さなナメクジなどがミキサーに入り込み、気づかれないまま果物と一緒に砕かれて、多数の幼虫がジュースに混入したという経路です。周辺には寄生虫を運ぶ可能性のある陸生の扁形動物もいましたが、多くの人の発症につながり得る幼虫数を考えると、著者らは、多数の幼虫を持つナメクジなどの関与がよりもっともらしいと論じています。

ただし、感染源は確定していません。調査は感染が疑われた時期から約1か月後に始まり、残った飲食物は検査できず、現場のカタツムリなどについても寄生虫検査を実施できませんでした。疑い例の一部には診断の不確かさも残りました。

この調査が示したのは、生の果物そのものだけでなく、屋外に置かれた調理器具への小さな生物の侵入も、感染経路を考える手がかりになるということです。共用のミキサーで作る飲み物を通じて、複数の人が一度に幼虫を口にする可能性が浮かび上がりました。

原著論文の著者・所属:Yves-Marie Ducrot(Cardiology Department, Centre Hospitalier Universitaire de La Réunion, Saint-Pierre, France. [email protected]; Department of Health and Community Services, Loyalty Islands Province, Lifou, New Caledonia. [email protected])、Jean-Sébastien Mora(Department of Health and Community Services, Loyalty Islands Province)、Morgane Bahu(Department of Health and Community Services, Loyalty Islands Province)、Alexandre Bourles(Institut Pasteur de Nouvelle Calédonie, NC)、Matthieu Pot(Institut Pasteur de Nouvelle Calédonie, NC)、Thibaut Mathieu(Institut Pasteur de Nouvelle Calédonie, NC)、Antoine Biron(Centre Hospitalier Territorial de Nouvelle-Calédonie, NC)、Nicolas Molko(Centre Hospitalier Territorial de Nouvelle-Calédonie, NC)、Alexandre Duvignaud(Department of Infectious Diseases and Tropical Medicine, Division of Tropical Medicine and Clinical International Health, CHU de Bordeaux, Bordeaux, France; National Institute for Health and Medical Research (INSERM) UMR 1219, Research Institute for Sustainable Development (IRD) EMR 271, University of Bordeaux, Bordeaux Population Health Research Centre, Bordeaux, France)、Beatrice Nickel(Swiss Tropical and Public Health Institute, Allschwil, Switzerland; University of Basel, Basel, Switzerland)、Julien Colot(Centre Hospitalier Territorial de Nouvelle-Calédonie, NC; Institut Pasteur de Nouvelle Calédonie, NC)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yves-Marie Ducrot, Jean-Sébastien Mora, Morgane Bahu, et al. Cluster of 19 cases of eosinophilic meningitis due to Angiostrongylus cantonensis in Lifou, New Caledonia: an outbreak investigation. Infectious Diseases of Poverty 2026-08-31. DOI: 10.1186/s40249-026-01498-7. 原著ライセンス:CC BY.