羊肉は世界中で食べられている食材ですが、同じ「羊肉」でも品種や育て方によって成長のしかたや肉の質は変わります。中国内モンゴル農業大学の研究チームは、ドモン種とモンゴル種という2種類の子羊を対象に、与える粗飼料(牧草などの繊維質のエサ)の種類を変えることで、成長のようす、枝肉(食肉処理後の肉のかたまり)の特徴、肉の栄養成分がどう変わるのかを調べました。粗飼料は反芻動物である羊の飼育において基本となるエサですが、その種類の違いが品種ごとにどう影響するのかは、生産現場でも関心の高いテーマです。
どのように調べたのか
研究では、アルファルファ乾草(AH)とトウモロコシの茎(コーンストーク、CS)という2種類の粗飼料を用意し、ドモン種とモンゴル種の子羊、合わせて24頭を対象に、品種と飼料の組み合わせ(2×2の要因配置)で飼育しました。子羊は品種によって出発時点の体重が異なっていたため、90日目の体重や出荷前の体重、枝肉重量については、その体重差を統計的に補正したうえで(共分散分析という手法を用いて)比較しています。また、背最長筋(ロース肉にあたる部位)の脂肪酸組成やアミノ酸組成も分析し、複数の比較を行う際に生じやすい誤った有意差を抑えるための統計処理(多重検定補正)も行われました。
研究でわかったこと
まず飼料の違いについては、アルファルファ乾草を与えたグループのほうが、1日あたりのエサの摂取量や体重の増加量が多い結果となりました。体重差を補正した後の分析でも、90日目の体重や出荷前の体重には品種と飼料の両方が関係していることが示されました。一方、枝肉重量については、品種と飼料の組み合わせによる相互作用がみられ、特にドモン種ではアルファルファ乾草とトウモロコシの茎を与えた場合の枝肉重量の差が、モンゴル種よりも大きく現れていました。
肉の成分に関しては、アルファルファ乾草を与えたグループで、背最長筋中のα−リノレン酸(C18:3n3)や、n−3系多価不飽和脂肪酸の総量が増え、n−6系とn−3系の脂肪酸の比率(n−6/n−3比)が下がる傾向が、多重検定補正を経てもなお認められました。この比率は栄養学的に注目されることが多い指標ですが、今回の研究ではあくまで飼料による違いとして観察されたものです。アミノ酸組成についても品種や飼料による差はみられたものの、著者らはこれらの結果の多くを探索的な性質のもの(今後さらに検証が必要な予備的な結果)として位置づけています。全体として、粗飼料の種類は主に成長のようすや枝肉の特徴、一部のn−3系脂肪酸の特徴に影響し、品種の違いはエサの摂取量、補正後の体格、枝肉重量、そして肉の赤み(肉色の指標のひとつ)に関係していたとまとめられています。
この研究を読むうえでの注意
この研究は24頭という限られた頭数を対象にした一つの飼育試験であり、ここで得られた結果がすべての羊や飼育環境に当てはまるとは限りません。またアミノ酸組成の違いについては、著者ら自身が探索的な結果と位置づけており、さらなる検証が必要とされています。特定の飼料や品種が肉の質を一方的に高める、あるいは健康に良い影響を与えると断定するものではなく、育て方と品種の組み合わせによって成長や肉の特徴に違いが生じうることを示したデータとして受け止めるのが適切でしょう。
まとめ
今回の研究は、ドモン種とモンゴル種という2つの羊の品種に対して、アルファルファ乾草とトウモロコシの茎という異なる粗飼料を与えたときに、成長や枝肉、肉の脂肪酸組成にどのような違いが現れるかを比較したものです。飼料の違いが成長速度やn−3系脂肪酸の含有に関わり、品種の違いが体格や枝肉重量、肉色に関わるという結果は、畜産における品種選択や飼料設計を考えるうえでの一つの手がかりになりそうです。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Ran Zhang, Meila Na, Wenliang Guo, et al. A comparative analysis of growth performance, carcass and meat traits between Dumont and Mongolian lambs under different roughage sources. フード・ケミストリー・エックス (2026). DOI: 10.1016/j.fochx.2026.104278. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.