著者の所属・活動拠点の国は、イランです。

掲載誌:DOAJ (DOAJ: Directory of Open Access Journals)

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

コーヒーは世界で最もよく飲まれている飲み物の一つで、年間におよそ5000億杯が消費されていると見積もられています。コーヒー豆の焙煎は、好ましい色や風味、香りを生み出す重要な工程です。一方で焙煎は、糖とアミノ酸が加熱によって反応する「メイラード反応」を通じて、アクリルアミドという物質を生じさせます。アクリルアミドは「ヒトに対しておそらく発がん性がある」物質に分類されており、加熱調理されたさまざまな食品に含まれることから注目されてきました。

著者らは、イランでコーヒーの人気が高まっていることを背景に、市販のエスプレッソに含まれるアクリルアミドの量を調べました。そのうえで、10代の若者(11〜17歳)と成人(18〜60歳)がエスプレッソを飲むことで受けるがんのリスクと、がん以外の健康影響のリスクを評価することを目的としました。

何をどのように調べたか

研究チームは市場から集めた合計35杯のエスプレッソを分析しました。このうち26杯はコーヒーショップで提供されたもので、残りの9杯は市販のコーヒー粉を使い、現地で一般的な淹れ方に従って家庭用エスプレッソマシンで抽出したものです。アクリルアミドの量は、液体中の成分を分離して測定する高速液体クロマトグラフィーという分析法で求めました。

次に、測定した濃度と既存の消費量データをもとに、体重1キログラムあたり1日にどれだけアクリルアミドを取り込むかを、10代と成人それぞれについて推定しました。リスク評価には三つの指標を用いています。一つ目は「暴露マージン(MOE)」です。これは、動物実験などで影響が現れ始めるとされる量が、実際の推定摂取量の何倍にあたるかを示します。値が大きいほど余裕があるという意味で、1万が判断の目安とされています。二つ目は、生涯にわたってがんになる確率がどれだけ上乗せされるかを示す「生涯過剰発がんリスク」です。三つ目は、がん以外の健康影響を見る「標的危険商(THQ)」で、1を下回れば懸念は小さいと判断されます。これらの値は、米国環境保護庁(USEPA)などが示す国際的な基準と比較されました。

主な結果

分析した35杯すべてからアクリルアミドが検出されました。コーヒーショップのエスプレッソでは100ミリリットルあたり2.15〜9.16マイクログラムでした。家庭で淹れたものは0.93〜4.00マイクログラムで、コーヒーショップのものの方が一貫して多い結果でした。

一方、エスプレッソを飲むことによるアクリルアミドの推定摂取量は比較的少ないと報告されています。体重1キログラムあたり1日の推定摂取量は、10代で0.004マイクログラム、成人で0.007マイクログラムでした。暴露マージンは、すべての試料で両年齢層とも1万を上回りました。最も小さかった値は、成人がコーヒーショップの試料の一つを飲んだ場合の約1万400です。研究チームは、発がん性の観点から懸念は低く、リスク管理上の優先度も低い水準だとしています。

生涯過剰発がんリスクは、10代で0.244×10⁻⁵、成人で0.221×10⁻⁵と推定されました。いずれもUSEPAが示す10⁻⁵という目安を下回ります。がん以外の影響を示す指標も、10代で0.0019、成人で0.0026と、基準の1を大きく下回りました。推定摂取量とがん以外の影響の指標は成人の方が高く、著者らはその理由を、成人の方が消費量が多く、体重あたりの摂取量も大きいためだと説明しています。

この研究が示すこと

この研究では、市場から集めた35杯のエスプレッソすべてからアクリルアミドが検出され、コーヒーショップのものは家庭で淹れたものより多い傾向がありました。それでも、エスプレッソだけから摂取する量であれば、調査対象の10代と成人に深刻な健康リスクをもたらす水準ではないと評価されました。ただし著者らは、アクリルアミドは他の加熱食品にも含まれるため、エスプレッソは食事全体から取り込む量の一部にすぎず、さまざまな食品からの合計の摂取量を評価することが課題として残るとしています。

原著論文の著者・所属:Shima Taghavi(Department of Food Science and Technology, Faculty of Agriculture, Ferdowsi University of Mashhad, Mashhad, Iran)、Marzieh Moeenfard(Department of Food Science and Technology, Faculty of Agriculture, Ferdowsi University of Mashhad, Mashhad, Iran)、Reza Farhoosh(Department of Food Science and Technology, Faculty of Agriculture, Ferdowsi University of Mashhad, Mashhad, Iran)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shima Taghavi, Marzieh Moeenfard, Reza Farhoosh. Acrylamide in Espresso Coffee: Occurrence and Risk Assessment Study in Adolescents and Adults. DOAJ (DOAJ: Directory of Open Access Journals) 2026-09-01. DOI: 10.22067/ifstrj.2026.98206.1560. 原著ライセンス:CC BY.