著者の所属・活動拠点の国は、ナイジェリアです。
掲載誌:FUDMA Journal of Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
アクリルアミドは、炭水化物を多く含む食品を揚げる、焼く、焙煎するなど高温で加熱したときに生じる物質です。2002年に食品中から見つかって以降、発がん性が懸念される物質として研究が続けられてきました。
プランテン(料理用バナナ)を薄く切って揚げたプランテンチップスは、アフリカや中南米などの熱帯地域で広く食べられている軽食です。通常は150℃を超える油で揚げられ、原料にアクリルアミドの材料となる糖とアミノ酸が含まれています。そのため、アクリルアミドができやすい食品とされています。
著者らはこの総説で、プランテンチップスのアクリルアミドについてこれまでに発表された研究を整理しました。生成の仕組み、含有量を左右する要因、報告された濃度、測定方法、健康面の懸念、生成を抑える方法を検討し、安全性と製品の品質や食文化をどう両立させるかに焦点を当てています。
どのようにしてできるのか、何が量を左右するのか
論文によると、主な生成経路はメイラード反応です。これは、加熱によってアミノ酸のアスパラギンとブドウ糖や果糖などの「還元糖」が反応し、香ばしい風味や焼き色を生む一連の化学反応です。この反応は好ましい風味をもたらす一方で、アクリルアミドも生み出します。著者らは、油脂の酸化から生じるアクロレインを経由する経路など、ほかの経路も紹介しています。
含有量に影響する要因として、まずプランテンの熟し具合が挙げられています。熟すにつれてブドウ糖や果糖が増え、アクリルアミドが生じやすくなります。紹介された研究では、熟度とアクリルアミド量の間に統計的に有意な正の相関(r = 0.57)が報告されていました。ブドウ糖や果糖の量とはさらに強い相関が示されていました。熟したプランテンでは、アスパラギンが少なくてもアクリルアミドが多かったという報告もあります。この結果から著者らは、生成には還元糖の量がより重要だと指摘しています。また、抗酸化作用をもつフェノール類は熟成とともに減り、アクリルアミド量と負の相関を示したという研究も紹介されています。
加工条件も重要です。揚げる温度が高いほど、また揚げる時間が長いほどアクリルアミドは増えると報告されています。一方、クエン酸の溶液であらかじめ処理すると減ったという研究もあります。
報告されている含有量
著者らが集めた研究では、プランテン製品のアクリルアミド量に大きなばらつきがありました。熟度の異なるプランテンチップスで1kgあたり49.8〜2062マイクログラム、別の研究では検出されない量から1542マイクログラムまでの値が報告されています。熟したプランテンの平均を26.6マイクログラムとした低い報告もあります。熟したプランテンを揚げた製品で894.40マイクログラムという値や、210℃で揚げたプランテンチップスで706マイクログラムという値も紹介されています。
論文は、プランテンチップスの含有量がポテトチップスと同程度になることが多いとまとめています。ばらつきの理由としては、熟度、糖やアミノ酸の組成、揚げ温度、油の種類、下処理の違いを挙げています。また、EUが揚げスナックに設けている目安値(1kgあたり750マイクログラム以下)は、プランテンチップスを明示的には対象にしていないとも指摘しています。
測定方法については、液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析(LC-MS/MS)、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)などが整理されています。これらは成分を分離して量を測る分析法です。中でもLC-MS/MSは、水に溶けやすいアクリルアミドを微量まで測れる精度の高い方法として位置づけられています。より速く安価な測定手段として、バイオセンサーなども紹介されています。
生成を抑える方法と研究の意味
健康面について著者らは、動物実験や職業上の曝露で示されてきた神経毒性などの有害作用を紹介しています。そのうえで、ヒトでの疫学研究の結果はまだはっきりしないこと、熱帯地域でのプランテンチップス摂取に関する疫学的な情報が不足していることにも触れています。
生成を抑える方法としては、いくつかの研究成果がまとめられています。クエン酸による下処理と、低めの温度・短時間での揚げ方を組み合わせると、アクリルアミドが大きく減ったという報告があります。食塩水による下処理では、10%の食塩濃度で熟したプランテンでは98.9%、未熟なものでは35.4%の減少が報告されています。加熱温度を一定にしない加熱方法で最大50%減らせたという報告や、赤外線を使った揚げ調理で栄養の質を保ちながら生成を抑えたという報告もあります。さらに、原料の熟度を選ぶことや、糖やアスパラギンの少ない品種を育てることも対策として挙げられています。
著者らは結論として、プランテンチップスのアクリルアミド量は揚げ条件、原料の成分、下処理によって大きく変わると述べています。そして、分析による監視、原料の改良、加工条件の最適化、消費者の理解を組み合わせることで、食品の安全と地域の食文化の両方を守ることが重要だとしています。身近な軽食であっても、原料の選び方や調理の仕方によって含まれる量が変わりうることを、この総説は示しています。
原著論文の著者・所属:Hassana Jibril(Aliko Dangote University of Science and Technology)、Sabo Muhammad Abdulkarim、Nouradeen Bamalli Zahra’u、Salisu Abubakar(Department of Food Science and Technology , Aliko Dangote University of Science and Technology , Wudil , Kano State , Nigeria)、Raliya Iliyasu(Department of Food Science and Technology , Aliko Dangote University of Science and Technology , Wudil , Kano State , Nigeria)、Muhammad Alhaji Adamu
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hassana Jibril, Sabo Muhammad Abdulkarim, Nouradeen Bamalli Zahra’u, et al. Acrylamide Formation and Concentration in Plantain Chips: A Comprehensive Review. FUDMA Journal of Sciences 2026-10-06. DOI: 10.33003/fjs-2026-1020-6175. 原著ライセンス:CC BY.