著者の所属・活動拠点の国は、ドイツです。
掲載誌:Journal of Clinical Epidemiology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
食事と健康の長期的な関係は、主に大規模な前向きコホート研究などの観察研究で調べられてきました。観察研究は、人々の実際の食生活と病気のなりやすさの関係を広く捉えられるため、食事ガイドラインや公衆衛生の方針づくりにも使われています。
一方で、観察研究には「バイアス」がつきものです。バイアスとは、研究の計画や実施の仕方に限界があるために、本当の関係が実際より強く、または弱く見えてしまうことです。たとえば教育歴、運動習慣、喫煙などは、食べるものと健康状態の両方に影響しうるため、見かけ上の関係が本当に食事によるものか分かりにくくなります。これを「交絡」と呼びます。
著者らは、ROBINS-Eという比較的新しい評価ツールを使ってバイアスのリスクを判定したとき、その判定の違いによって食事と病気の関連の大きさが系統的に変わるのかを調べることを目的としました。著者らによれば、このツールを使ってこうした分析を行った研究はこれまでありませんでした。
何をどのように調べたか
研究チームは、栄養分野のメタアナリシス(複数の研究結果をまとめて分析する研究)の代表的なサンプルから、1987年から2018年に発表された前向きの観察研究を選びました。最終的に26件のメタアナリシスに含まれる77件の研究を対象とし、病気などの結果ごとに計155件のバイアス評価を行いました。
ROBINS-Eでは、交絡、食事などの「曝露」の測定、参加者の選び方、データの欠けなど7つの領域ごとにバイアスのリスクを判定し、最後に全体として「低リスク」「いくらか懸念あり」「高リスク」「非常に高リスク」の4段階で評価します。評価は2人の研究者がそれぞれ独立して行い、意見が分かれた場合は話し合いや第三の研究者の判断で決めました。
そのうえで、リスクの高い評価を受けた研究と低い評価を受けた研究とで、報告された関連の大きさを比べました。比較には「リスク比の比(RRR)」という指標を使っています。これは2つのグループの効果の推定値の比で、1であれば両者に差がないことを意味します。
主な結果
155件の評価のうち、「低リスク」と判定されたものは1件もありませんでした。52.9%が「高リスク」、44.5%が「いくらか懸念あり」、2.6%が「非常に高リスク」でした。高リスクと判定された主な理由は、交絡への対処が不十分だったことと、食事の測定方法の問題でした。
全体のバイアス評価で「高リスク」または「非常に高リスク」の研究と「いくらか懸念あり」の研究を比べたところ、食事と病気の関連の大きさに平均的な差は見られませんでした(RRR 1.00、95%信頼区間0.94〜1.06)。交絡など多くの個別の領域でも、差は見られませんでした。
例外は2つの領域でした。食事の測定に関する領域では、高リスクと判定された研究で推定値に差が見られ(RRR 1.14、95%信頼区間1.01〜1.28)、この差は主に食事パターンを調べた研究によるものでした。データの欠けに関する領域では、懸念ありと判定された研究で関連が過大に見積もられている可能性が示されました(RRR 0.87、95%信頼区間0.77〜0.98)。ただし、同じコホートから複数の結果が含まれることを考慮した分析では、データの欠けに関する結果は確認されませんでした。また、どちらの領域でも結果のばらつきが大きく、今後の研究では関連の向きや大きさが異なる可能性があると著者らは述べています。
この研究が示すこと
著者らは、少なくとも「いくらか懸念あり」から「高リスク」の範囲の研究の間では、栄養の観察研究によくあるバイアスの多くが、食事と病気の関連の大きさに平均して大きな違いをもたらしていないことを示唆する結果だとしています。
ただし、低リスクと判定された研究が1件もなかったため、この分析はバイアスのない基準と比べてどれほどずれているかを示すものではありません。また、データの欠け方や交絡への対処について報告が不十分な研究が多く、それが評価にも影響した可能性があります。著者らは、結果は慎重に解釈し、よりバイアスの少ない研究を含む大きなサンプルで確かめる必要があるとまとめています。
原著論文の著者・所属:Julia Stadelmaier(Institute for Evidence in Medicine, Medical Center - University of Freiburg/Medical Faculty - University of Freiburg, Freiburg, Germany)、Gina Bantle(Institute for Evidence in Medicine, Medical Center - University of Freiburg/Medical Faculty - University of Freiburg, Freiburg, Germany)、Maria Petropoulou(Institute of Medical Biometry and Statistics, Medical Center - University of Freiburg/Medical Faculty - University of Freiburg, Freiburg, Germany)、Joerg J. Meerpohl(Institute for Evidence in Medicine, Medical Center - University of Freiburg/Medical Faculty - University of Freiburg, Freiburg, Germany; Cochrane Germany, Cochrane Germany Foundation, Freiburg, Germany)、Lukas Schwingshackl(Institute for Evidence in Medicine, Medical Center - University of Freiburg/Medical Faculty - University of Freiburg, Freiburg, Germany. Electronic address: [email protected])
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Julia Stadelmaier, Gina Bantle, Maria Petropoulou, et al. Dietary exposure-outcome associations do not systematically differ by risk of bias in observational studies: a meta-epidemiological study. Journal of Clinical Epidemiology 2026-08-03. DOI: 10.1016/j.jclinepi.2026.112440. 原著ライセンス:CC BY.