著者の所属・活動拠点の国は、ポーランドです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

アクリルアミドは、炭水化物を多く含む食品を高温で加熱したときに生じる化学物質です。食品中では、主にアミノ酸の一種であるアスパラギンと、ブドウ糖や果糖などの糖が120℃を超える温度で反応して生じます。国際がん研究機関(IARC)は、動物実験で発がん性が十分に示されていることから、アクリルアミドを「ヒトに対しておそらく発がん性がある」物質に分類しています。一方で、ヒトでの健康影響に関する証拠は限られています。

ポーランドではジャガイモの生産量や総消費量が減少する一方、フライドポテトやポテトチップスなど加熱加工されたジャガイモ製品の消費は増えています。欧州連合(EU)は2011年と2013年の勧告で食品中アクリルアミドの「指標値」を、2017年の規則で、より低い「ベンチマークレベル(目安となる基準値)」と、製造者が取り組むべき低減対策を定めました。

研究チームは、2004年から2025年までにポーランド全国で行われた監視調査の結果を分析しました。目的は、ジャガイモ製品のアクリルアミド量がどう推移したかを明らかにすること、そしてこれらのEUの規定がアクリルアミド量の変化と関連していたかを評価することです。

調べた内容

分析対象は、公的な食品管理・監視の一環として全国の店舗や飲食店から無作為に採取された、ジャガイモ製品1014試料のデータです。製品は、ポテトチップス、ジャガイモを原料とするクラッカー、ポテトパンケーキ、フライドポテト、そしてくし形やスライス状のジャガイモやジャガイモ生地を成形した製品の5群に分けられました。家庭で加熱する冷凍の半調理品は、包装の表示に従って実験室で調理してから測定されました。

20年以上の期間を通じて継続的に調べられたのは、ポテトチップスとフライドポテトだけでした。そこで著者らは、この2品目について、規定のない時期(第1期:2004〜2010年)、指標値の勧告が出ていた時期(第2期:2011〜2017年)、ベンチマークレベルを定めた規則が適用された時期(第3期:2018〜2025年)の3期間に分けて比較しました。数値はすべて、食べられる状態の製品1kgあたりのマイクログラム(µg/kg)で示されています。

主な結果

期間全体での中央値は、ポテトチップスが347µg/kgで最も高く、ポテトパンケーキの338µg/kg、フライドポテトの215µg/kgが続きました。最も低かったのはポテトクラッカーの25µg/kgで、焼いて調理するジャガイモ製品は79µg/kgでした。これらの製品群の差は統計的に有意と報告されています。規定が適用されていた2011〜2025年には、検査した試料の97%以上が指標値やベンチマークレベルを満たしており、超過は個々の試料に散発的に見られる程度でした。

ポテトチップスの中央値は、2004年の754µg/kgから2025年の358µg/kgへと半分以下に下がりました。フライドポテトでも307µg/kgから191µg/kgへと40%近く低下しました。いずれも統計的に有意な減少です。

最も大きく下がったのは、第1期から第2期にかけてでした。第1期の中央値はポテトチップスが667µg/kg、フライドポテトが405µg/kgでしたが、第2期にはそれぞれ246µg/kg、153µg/kgとなりました。指標値以下の試料の割合も、ポテトチップス(1000µg/kg以下)で72.9%から98.9%へ、フライドポテト(600µg/kg以下)で78.5%から98.4%へと増えました。ただし、その後の第3期の中央値はポテトチップスが335µg/kg、フライドポテトが192µg/kgで、低下はそれ以上進まず、横ばいの状態が続きました。

研究が示すこと

著者らは、EUの勧告が導入された後にアクリルアミド量が大きく下がったことについて、ジャガイモ製品の製造者が低減対策を効果的に取り入れたことを示すものだと述べています。一方で、近年の横ばい傾向から、現在行われている低減対策だけでは、ポテトチップスやフライドポテトのアクリルアミド量をこれ以上下げることは難しくなっている可能性があると論文は指摘しています。長期の監視データによって、規制導入前後の変化と、その後の頭打ちの両方が浮かび上がった研究といえます。

原著論文の著者・所属:Iwona Gielecińska(Department of Food Safety and Health Risk Assessment, National Institute of Public Health NIH—National Research Institute, 00-791 Warsaw, Poland)、Hanna Mojska(Department of Nutrition and Nutritive Value of Food, National Institute of Public Health NIH—National Research Institute, 00-791 Warsaw, Poland)、Jacek Postupolski(Department of Food Safety and Health Risk Assessment, National Institute of Public Health NIH—National Research Institute, 00-791 Warsaw, Poland)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Iwona Gielecińska, Hanna Mojska, Jacek Postupolski. Acrylamide in Potato Products in Poland from the Perspective of More than 20 Years of Monitoring Study. Foods 2026-09-29. DOI: 10.3390/foods15193485. 原著ライセンス:CC BY.