著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Agricultural Power Journal
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
災害後も農業を続けられる仕組みを調べる
洪水や干ばつ、豪雨などで稲が被害を受けたとき、農家は収入を失うだけでなく、次の作付けに必要な資金にも困ることがあります。著者は、国が支援する稲作保険制度が、こうした経済的な打撃に耐え、立ち直り、農業と暮らしを維持する力をどのように支えているかを調べました。
研究では、新たな現地調査ではなく、既存の研究を一定の手順で集めて整理する「システマティックレビュー」を行いました。2015~2026年に発表された英語またはインドネシア語の査読付き論文を検索し、112件から最終的に20件を選び、保険の働きや制度運営上の課題を比較しました。
損失の補償が暮らしと次の作付けを支える
論文は、対象研究に共通する結果として、稲作保険が生産損失の一部を補い、農家の収入の安定や災害後の営農再開に貢献すると報告しています。保険金は、生活費や教育費、借入金の返済を支えるとともに、次の作付けに必要な種子や肥料などを購入する資金になります。
著者は、保険の役割が損失の補償だけではないことも指摘しています。対象研究では、保険加入者は金融機関から返済リスクが低いとみなされ、農業向け融資を受けやすくなることが報告されていました。また、損失が部分的に補償されることで、農家が生産資材や設備への投資を続けやすくなると整理しています。
保険料の負担と支払いの速さが重要
一方、著者によると、保険の有効性は制度の設計や運営によって大きく異なります。政府による保険料の補助は、資金に余裕のない小規模農家が加入するうえで重要でした。反対に、複雑な手続き、制度の説明不足、保険への理解不足は、加入を妨げる要因として挙げられています。
保険金がいつ届くかも重要です。論文は、支払いが遅れると次の作付け資金を確保できず、保険への信頼も損なわれると報告しています。衛星画像などを使って被害を確認する制度では、人による現地確認だけに頼る制度よりも、支払い手続きが速い傾向が整理されました。
補償を営農の継続につなげるために
この研究は、複数の研究結果を文章で比較・整理したもので、保険による効果の大きさを統計的に算出したものではありません。そのうえで著者は、保険を単独の対策とせず、災害の早期警報や灌漑設備、農家への情報提供などと組み合わせる重要性を示しています。
研究が伝えるのは、稲作保険は損失を埋めるだけでなく、農家が災害後も暮らしと生産をつなぐ支えになるということです。その役割を果たすには、加入しやすく、必要な時期に補償が届く制度であることが重要だと著者は結論づけています。
原著論文の著者・所属:Risyart Alberth Far Far(Universitas Pattimura)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Risyart Alberth Far Far. Strengthening Farmer Financial Resilience Against Hydrometeorological Disasters Through the Performance Evaluation of National Rice Crop Insurance Schemes. Agricultural Power Journal 2026-08-28. DOI: 10.70076/apj.v3i3.209. 原著ライセンス:CC BY.