子どもたちが最初に「食べること」について学ぶ場のひとつが、保育園や幼稚園といった早期の教育現場です。そこで日々子どもたちと向き合う教員自身は、食や栄養についてどれくらい理解し、実践できているのでしょうか。この問いに取り組んだのが、ブラジルの公立幼児教育教員を対象にした今回の研究です。
研究のテーマとなっている「食リテラシー(Food Literacy)」とは、食品の選び方や調理、栄養に関する知識を理解し、日常生活の中で活用していく力のことを指す概念です。教員自身の食リテラシーが、子どもへの食育のあり方にも関わってくる可能性があることから、注目されています。
研究でわかったこと
この研究は、ブラジルの連邦区(首都ブラジリアを含む行政区)で働く幼児教育教員203名を対象に行われた横断研究です。「短縮版食リテラシー質問票(SFLQ-Br)」というアンケート形式の指標に加え、年齢や学歴、勤務先といった社会人口学的・職業的な情報についても尋ねる形で調査が実施されました。
回答者の内訳を見ると、女性が98%を占め、年齢層は40〜49歳が39.4%と最も多く、76.4%が教育学(ペダゴジー)の学位を持ち、67.5%は大学院レベルの学歴を有していました。一方で、53.2%の教員は食と栄養に関する研修を受けたことがないと回答しており、その一方で75.9%は「ブラジルの食事ガイドライン」について知っていると答えています。
食リテラシーの平均スコアは36.46(標準偏差7.74)でした。統計的な分析からは、政府ではなく市民社会組織(NPOなど)に雇用されていること、学歴が高いこと、そして食・栄養や健康に関する研修を6件以上受けていることが、より高い食リテラシースコアと関連していたと報告されています(p<0.001)。
研究チームはこれらの結果について、食リテラシーの中でも「機能的」「関係的」と呼ばれる側面が比較的強く表れている一方で、教員養成の初期段階や継続的な研修の面には課題があることを示唆していると述べています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ある一時点における横断的な調査であり、教員の食リテラシーが子どもの食育や健康にどのような影響を与えるかを直接示したものではありません。また、調査対象はブラジルの連邦区という特定の地域の公立幼児教育教員に限られているため、結果をそのまま他の地域や国の状況に当てはめられるとは限りません。一つの研究として得られた知見であり、これだけで結論が確定したわけではない点には留意が必要です。
まとめ
今回の研究では、ブラジルの幼児教育教員の食リテラシーについて、学歴や勤務形態、研修経験との関連が示されました。特に、食・栄養に関する研修を受けた回数が多いほど食リテラシーが高い傾向にあったという点は、教員養成のあり方を考えるうえで興味深い手がかりといえそうです。今後、こうした知見が教員向けの研修プログラムづくりにどう活かされていくのか、注目されるところです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ブラジルの公立幼児教育教員における食リテラシー(ヌトリレ・2026年08月)