この研究は、ラトビアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:International Journal of Science Technology and Society

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を目的とした研究か

朝食用の手軽な食品として親しまれているミューズリーは、オーツ麦フレークとナッツ類を主な材料とすることが多く、健康志向の高まりとともに注目を集めています。論文によれば、オーツ麦は水溶性食物繊維やβ-グルカンなどを含み、グルテンを含まない穀物として利用できます。一方ブラジルナッツは、セレンを非常に豊富に含む食材として知られていると紹介されています。

これらの原料は、そのまま使うよりも「トースティング(焙煎・焙焼)」と呼ばれる加熱処理を加えることで、香りや風味、歯ごたえが生まれます。ただし加熱が強すぎれば焦げや異臭が生じ、脂質の多いナッツでは酸化が進むおそれもあります。そこで著者らは、焙煎の温度と時間を変えたときに、官能特性(見た目・食感・香り・味)や水分量、脂質の酸化の指標、総ポリフェノール量、抗酸化能がどう変わるのかを調べ、ミューズリー用原料として適した加熱条件を見いだすことを目的としました。研究はラトビア生命科学技術大学で2025年に実施されたと記されています。

どのように調べたか

著者らは、グルテンフリーのオーツ麦フレークを120℃・150℃・180℃の3温度で、ブラジルナッツを120℃・130℃・140℃・150℃の4温度で、それぞれ5分・10分・15分・20分の4通りの時間で加熱しました。オーツ麦は12種類、ナッツは16種類の試料が得られ、未加熱の原料を対照としています。

評価項目は複数あります。官能評価は、訓練を受けた評価者1名と一般の評価者1名の計2名が、見た目・食感(コンシステンシー)・香り・味と後味の4項目を1〜3点で採点し、合計点で品質を区分する方式で行われました。なお著者ら自身、パネルの人数が少なく記述的な設計であるため、一部の項目では統計解析を行っていないと断っています。

このほか、乾燥による重量減少から水分量を測定し、ブラジルナッツについては油を抽出して過酸化物価(脂質酸化の初期段階を示す指標)を測定しました。さらに、総ポリフェノール量をフォリン・チオカルト法で、抗酸化能をDPPH法とABTS法という2種類のラジカル消去活性の測定法で調べています。

報告された主な結果

総合的な品質測定と官能スコアを合わせて判断した結果、著者らは最も良好な条件として、オーツ麦フレークでは180.0±0.5℃で5分、ブラジルナッツでは140.0±0.5℃で10分を挙げています。焙煎は官能品質に有意な影響を与えました(p<0.05)。

水分量は、温度が高く時間が長いほど低下しました。オーツ麦フレークは未加熱で10.90%だったものが、180℃・20分では1.95%まで下がっています。ブラジルナッツも未加熱の3.24%から、150℃・20分では0.04%まで低下しました。論文では、望ましい水準としてオーツ麦フレークで3〜5%、ブラジルナッツで0.5〜0.8%という範囲が示されています。

ブラジルナッツの過酸化物価は、未加熱の油1kgあたり1.12ミリ当量から、150℃・20分では3.75ミリ当量へと上昇しました。著者らはこれを、過度な加熱のもとで脂質の酸化が加速したことを示すものと述べています。

一方、総ポリフェノール量は加熱によって増える傾向が報告されています。オーツ麦フレークでは試料全体が0.070〜0.448 mg GAE/gの範囲に収まり、未加熱が最も低い0.070、最も高かったのは180℃・20分の0.448でした。ブラジルナッツでは試料全体の範囲が0.487〜1.171 mg GAE/gで、未加熱の値は0.573、最も高かったのは140℃・20分の1.171と報告されています。つまりナッツでは、範囲の下限である0.487は未加熱の測定値ではなく、加熱した試料の中に未加熱を下回るものもあったことになります。DPPH法とABTS法によるラジカル消去活性も高まる傾向が見られましたが、変化の方向は条件によって一様ではなく、オーツ麦では長時間の加熱で一時的に活性が下がる場面もありました。著者らはこうした増加の背景として、細胞壁の構造がほどけて結合していたポリフェノールが取り出されやすくなること、およびメイラード反応(加熱による非酵素的な褐変反応)で抗酸化性をもつ物質が生じることを挙げています。

この研究が示すこと

この研究が浮かび上がらせたのは、加熱の「ほどよさ」が原料ごとに異なるという点です。同じミューズリーに入る材料でも、穀物であるオーツ麦フレークと脂質の多いブラジルナッツとでは、望ましい温度と時間が一致しませんでした。

また、加熱を強めれば香りやポリフェノール量の面で得るものがある一方で、見た目や味、そしてナッツでは脂質の酸化という面で失うものがあることも示されました。著者らは、感覚的な品質と抗酸化性、保存時の安定性を両立させるうえで、管理された条件での焙煎が欠かせないと結論づけています。原料それぞれの性質に合わせて加熱条件を設計するという考え方を、具体的な測定値とともに示した研究といえます。

著者:Maija Gertsone(Food Institute & Faculty of Agriculture and Food Technology, Latvia University of Life Sciences and Technologies, Jelgava, Latvia)、Asnate Ķirse-Ozoliņa(Food Institute & Faculty of Agriculture and Food Technology, Latvia University of Life Sciences and Technologies, Jelgava, Latvia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Maija Gertsone, Asnate Ķirse-Ozoliņa. Effect of Toasting on Quality and Sensory Attributes of Oat Flakes and Brazil Nuts Intended for Use in Functional Muesli. International Journal of Science Technology and Society 2026-09-08. DOI: 10.11648/j.ijsts.20261405.11. 原著ライセンス:CC BY.