掲載誌:Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research)
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: DataCite
研究の目的
米国の連邦政府は100年以上にわたり、国内の食品供給に関与してきました。現在は、2025年の「Make America Healthy Again(米国を再び健康に)」戦略と、2025〜2030年版の「米国人のための食事指針」を通じて、「超加工食品」や「高度加工食品」の摂取を減らす方向を打ち出しています。
この論文で著者らは、こうした連邦政府の介入がどのように行われてきたのかを、公的な文書記録をもとに整理しています。抄録によると、論文は互いに関連する三つの問いを軸に構成されています。
何をどのように調べたか
一つ目の問いは、1990年に制定された「全国栄養モニタリング及び関連研究法」がその後どうなったかです。この法律は、連邦政府が人々の栄養状態を継続的に調べる仕組みを各機関で連携して運用すること、そして調整の中心となる体制を設けることを求めていました。
二つ目は、穀物製品などに葉酸を加える「葉酸強化」政策です。著者らは、この政策が決定された経緯の記録、報告されている効果、経済評価、そして意図しなかった影響を検討しています。
三つ目は、連邦政府の施策が食品の工業的な加工を増やす方向に働いた事例です。著者らは、確認できた事例をすべて記録することを目指しています。
研究の進め方にも特徴があります。著者らは、どの連邦機関や施策、批判者に対しても賛否の立場をとらないとしています。証拠の評価が分かれる論点では、両方の立場をほぼ同じ分量で示しています。また、すべての主張に「どこまで確認できたか」を示す表示を付けています。一次資料で確認できなかった主張も削除せず、その旨を明示したうえで残しています。
主な報告結果
栄養モニタリング法について、法律に基づく10か年総合計画は1993年に公表されていました。また、関係機関による合同委員会は1991年から2002年まで開かれていました。しかし、事業の終了報告、成果の報告、事後評価の報告は見つからなかったと著者らは報告しています。法律が構想した連携型の監視の仕組みは、現在は一つにまとまった全体としては機能していないとされています。
葉酸強化について、論文は、神経管閉鎖障害の影響を受けた出生が年間約1,326件防がれているという測定結果を紹介しています。神経管閉鎖障害とは、胎児期に脳や脊髄のもとになる管がうまく閉じないことで起こる先天的な異常です。経済評価も好ましい結果だったとされています。
一方で、意図しなかった影響として、次の三点が取り上げられています。いずれも、文書で確認されたものと仮説段階のものを含みます。
・ビタミンB12不足の兆候が見えにくくなる可能性
・体内で代謝されないまま残る葉酸の存在
・大腸がんとの関連を示唆する、評価の分かれる兆候
著者らは、葉酸強化が1970年代の低脂肪の食事指導と同じような「誤った対策」ではないかという仮説も検討しました。その結果、この仮説を支持する根拠は弱いものにとどまったと報告しています。
食品加工については、少なくとも9つの連邦の施策が、食品に何かを工業的に加える工程を義務づけていたとされています。さらに少なくとも5つの施策が、工業的な原材料を使う方向への製品の作り替えを促していました。ただし、これらの施策を定めた規則制定の記録では、こうした措置が「加工を増やすもの」としてほとんど説明されていなかったと著者らは指摘しています。
この研究が示すこと
現在の米国では、加工度の高い食品を減らすことが政策目標として掲げられています。この論文は、それ以前の連邦政府の施策の中に、栄養強化などを通じて食品の工業的な加工を求めたり促したりしたものがあったことを、文書記録から整理しています。
あわせて、栄養モニタリングの仕組みのように、法律で定められた取り組みについて、その成果を確認できる記録が見当たらない例があることも示しています。評価の分かれる論点については両方の見方を並べ、確認の程度を明示するという方法で、食品・栄養政策の歴史を振り返るための材料を提供した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Murff, Paul(Morf Engineering Inc.)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Murff, Paul. Studies on Federal Nutrition Initiatives and Outcomes 1900s-Present. Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research) 2026-08-07. DOI: 10.5281/zenodo.21830828. 原著ライセンス:CC BY.