著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

砂糖入り飲料(炭酸飲料や果汁飲料など、糖を加えた飲み物)は、世界的に子どもや若者の日常的な食生活に定着しつつあります。論文によると、中国でもこうした飲料の市場は急速に拡大し、飲料を口にする子どもや若者の割合も増えてきました。著者らは、こうした状況が公衆衛生上の懸念を生んでいると指摘しています。

研究チームが注目したのは、家族以外で子どもに大きな影響を与える存在である「仲間(ピア)」です。思春期の子どもは家族中心の関係から少しずつ離れ、仲間からの承認や居場所を求めるようになります。著者らは、周囲の子どもが甘い飲み物をよく飲んでいると、それをまねたり、仲間に合わせようとしたりして、本人の摂取も増えるのではないかと考えました。さらに、仲間の飲み方が栄養についての認識を弱め、それを通じて摂取が増えるという道筋も想定しました。この研究は、こうした「仲間効果」が中国農村部の子どもや若者にみられるかを確かめることを目的としています。

何を調べたか

分析には、2020年11月に中国・内モンゴル自治区ウランチャブ市集寧区で行われた健康と栄養に関する抽出調査のデータが使われました。この地域は農業と牧畜が混在する地帯にあり、農村住民の割合が比較的高い地域です。また、親と離れて暮らす子ども(いわゆる留守児童)や寄宿生も多いとされます。調査では、学校の段階(小学校・中学校)と所在地で学校を分け、小学校25校と中学校11校を選びました。対象は小学5・6年生と中学2・3年生で、学年に複数のクラスがある場合は1クラスを無作為に選んでいます。

生徒は教室で質問票に答え、甘い飲み物の摂取状況、栄養に関する知識、食べ物の好み、仲間との関係などを回答しました。「仲間の摂取量」は、本人を除いた同じクラスの他の生徒の1日あたり摂取量の平均として定義されています。

研究チームは、性別、年齢、家庭の状況、学校ごとの違いなどを考慮したうえで、仲間の摂取量と本人の摂取量の関係を統計的に分析しました。本人と仲間が互いに影響し合う可能性などによる偏りを減らすため、仲間の飲料の好みと家庭の所得を手がかりとする「操作変数法」も用いています。さらに、似た条件の生徒どうしを比べる手法で、仲間の摂取量の多さに応じて本人の摂取がどう変わるかも検討しました。

主な結果

基本の分析では、仲間の摂取量が多いほど本人の摂取量も多いという、統計的に有意な正の関係がみられました。仲間の摂取量が1単位増えると、本人の摂取量はおよそ0.918単位多いという推定結果です。操作変数法を用いた分析でも関係は正のまま保たれ、推定値は約1.111単位でした。ただし著者ら自身も、この手がかりがクラスや学校に共通する食文化などを反映している可能性は否定できないとしています。そのため、因果関係については特定の前提のもとでの近似として解釈すべきだと述べています。

このほか、男子は女子より摂取が多く、ジャンクフードを好む生徒、お小遣いがある生徒、家庭の所得が高い生徒も摂取が多いという関係が報告されています。

生活環境による違いも調べられました。仲間の摂取量が1単位増えたときの本人の摂取量の増え方は、寄宿生で0.929単位、親と同居していない生徒で1.242単位でした。これに対し、通学生では0.789単位、親と同居している生徒では0.871単位です。著者らは、寄宿生や親と離れて暮らす生徒で仲間の影響がより強く表れたとしています。仲間の摂取量の大きさに応じた分析では、通学生や親と同居する生徒の場合、仲間の摂取量が増えるにつれて関係が次第に弱まりました。一方、寄宿生や親と同居しない生徒では、逆に関係が強まる傾向がみられました。

栄養への認識についても検討されました。仲間の摂取量が多いほど本人の栄養に関する認識は低いという関係があり、仲間の摂取量1単位あたり0.015単位低いと推定されています。研究チームはこの結果から、仲間の飲み方が直接本人の摂取と結びつく経路と、栄養への認識の低下を通じて結びつく経路の二つがあると解釈しました。ただしこのデータは一時点の調査に基づくため、出来事の前後関係は確かめられていません。著者らはこの経路について、仕組みを探る段階の手がかりとして扱うべきだとしています。

研究が示すこと

この研究は、中国農村部の子どもや若者において、同じクラスの仲間の甘い飲み物の摂取と本人の摂取との間に関係があることを示しました。特に、親の目が届きにくい寄宿生や親と離れて暮らす生徒でこの関係が強く表れました。著者らは、こうした結果を踏まえ、学校が健康づくりの取り組みの場として重要になりうると述べています。

一方で、調査は一つの地域に限られており、摂取量は生徒の自己申告に基づいています。また、クラスの平均摂取量には学校の飲料の提供環境など共通の要因も反映されうるため、純粋な仲間の影響とそれ以外を完全に区別することは難しいと著者らは認めています。子どもの飲み物の選択を本人や家庭だけの問題としてではなく、仲間や生活環境との関わりの中で捉える視点を示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Chaozhu Li(School of Economics and Management, Huzhou College)、Zeqi Liu(Public Administration College of Inner Mongolia University)、Xiumei Zhou(Jiyang College, Zhejiang Agriculture and Forestry University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Chaozhu Li, Zeqi Liu, Xiumei Zhou. Peer effects on sugar-sweetened beverage consumption among children and adolescents: evidence from rural Western China. Frontiers in Nutrition 2026-08-05. DOI: 10.3389/fnut.2026.1851273. 原著ライセンス:CC BY.