インドネシアのフローレス海は、キハダマグロなどが獲れる漁場として知られていますが、実は漁船や漁具、漁場の位置、漁獲量、獲れる魚のサイズといった基礎的なデータがこれまで十分に整理されていませんでした。今回紹介する研究は、この海域で行われている小規模な一本釣り漁業に着目し、漁場の分布や漁獲物の季節性、そして水揚げされたマグロのサイズを調べたものです。ハサヌディン大学やハイルン大学(いずれもインドネシア)に所属する研究者らによってまとめられました。

マグロ漁というと大型船による遠洋漁業のイメージがあるかもしれませんが、フローレス海では手釣り(ハンドライン)漁具を使う小規模漁船が活躍しています。研究では、こうした漁船がマグロの一本釣りに適した仕様であり、一年を通じて操業していることが確認されました。また、漁場はマグロの生息域や回遊ルートと重なっており、漁期によって漁場の位置が変化する様子も示されています。

1,210匹の漁獲物からわかったこと

研究チームは、実際に水揚げされた1,210匹の漁獲物を対象にサイズや魚種の構成を調べました。その結果、最も多かったのは体長34〜46.2センチメートル、体重1.5〜3.9キログラムの比較的小型のキハダマグロ(Thunnus albacares)で、全体の84.5パーセント(1,023匹)を占めました。

これに次いで、現地で「オポ(opo')」と呼ばれる、より大型のキハダマグロ(体長61〜211センチメートル、体重10.5〜80キログラム)が183匹(15.1パーセント)確認されました。さらに、メバチマグロ(Thunnus obesus、体長110〜189センチメートル、体重38.5〜58キログラム)はわずか4匹(0.33パーセント)にとどまっています。

漁場の南下は何を意味するのか

研究チームは、こうした漁獲物のサイズ構成や種類の偏りから、キハダマグロ漁が持続可能でない可能性があると指摘しています。具体的には、これまで獲れていた漁場の範囲が縮小し(レンジ・コラプスと呼ばれる状態)、漁船の拠点からより遠い南方の海域へと漁場が移動しつつある傾向がみられたとされています。これは、漁業者が魚を求めてより遠くまで出漁せざるを得なくなっている可能性を示す手がかりとして報告されています。

この研究を読むうえでの注意点

この研究は、フローレス海における特定の小規模一本釣り漁業を対象に、Ebataによる調査手法に沿って行われたものです。得られた知見はこの海域・この漁法における観察に基づくものであり、他の海域や異なる漁法にそのまま当てはまるとは限りません。また、漁獲物の持続可能性に関する指摘についても、この一つの調査結果から断定的な結論が確定したわけではなく、今後さらなるデータの蓄積が求められる段階にあると考えられます。

まとめ

今回の研究は、これまで統計的な情報が乏しかったフローレス海の小規模マグロ漁について、漁船・漁具・漁場・漁獲物のサイズという基礎的な実態を丁寧に記録した点に意義があります。水揚げされたキハダマグロの多くが比較的小型であったことや、漁場が南へと広がりつつある傾向は、今後この地域の漁業資源管理を考えるうえでの基礎情報になると位置づけられています。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Andi Agus, Najamuddin Najamuddin, Abd. Rasyid Jalil, et al. Small-Scale Tuna Seasonality and Fishing Grounds in the Flores Sea. マリン・フィッシャリーズ・ジャーナル・オブ・マリン・フィッシャリーズ・テクノロジー・アンド・マネジメント (2026). DOI: 10.29244/asfhg981. 原著ライセンス: cc-by-nc.