「たんぱく質が豊富」「鉄分が多い」といった食品の栄養成分表示は、あくまで食品に含まれる量を示しているに過ぎません。実際に体内に取り込まれ、利用される量(生体利用率)は、その栄養素が食品の中でどんな形で存在し、他の成分とどう組み合わさっているかによって大きく変わることが知られています。ポーランドのジェシュフ大学(University of Rzeszów)食品加工・商品科学部門の研究者が、この生体利用率という切り口から、動物性食品と植物性食品の栄養価を比較した文献レビューをまとめ、ニュートリエンツ誌に2026年9月に掲載予定です。

何を、どうやって調べたのか

この研究は新しい実験を行ったものではなく、Web of Science、Scopus、PubMed、ScienceDirectという学術データベースに収められた既存の研究論文を横断的に集めて整理した「レビュー論文」です。対象としたのは、たんぱく質、ビタミン(A、D、B12)、そして鉄・亜鉛・カルシウムといった主要ミネラルで、これらが動物性食品と植物性の代替食品からどれくらい体内に吸収・利用されるかを比較しました。あわせて、吸収を妨げる「抗栄養因子」や、逆に健康に有益とされる成分など、食品全体の構造(フードマトリックス)が栄養素の吸収にどう影響するかも整理されています。

研究でわかったこと

整理された文献によると、動物性食品はフィチン酸やシュウ酸といった、ミネラルの吸収を妨げる成分をそもそも含まないため、鉄・亜鉛・カルシウムなど複数の必須微量栄養素や、たんぱく質(PDCAASやDIAASという指標で評価)について、素の状態での生体利用率が高い傾向にあると報告されています。一方で植物性食品にも独自の利点があり、食物繊維やフィトケミカル(phytonutrients)といった、動物性食品には無い生理的なメリットが挙げられています。

さらに注目すべき点として、植物性食品の栄養素の吸収率の低さは固定的なものではなく、発酵、発芽、加熱処理といった食品加工の工夫や、食品同士の組み合わせ方(例えば吸収を助ける成分と一緒に摂る、といった食べ方の工夫)によって、大きく改善できることが示されています。つまり、ある栄養素がどれだけ体に取り込まれるかは、その食品が動物性か植物性かという由来だけで決まるのではなく、調理・加工の方法や食事全体の組み合わせ方に左右される、という整理がなされています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この論文は特定の食品や成分が病気を防ぐ、あるいは健康を改善すると主張するものではなく、既存の研究知見を集めて栄養素の吸収されやすさという観点から整理し直した文献レビューです。レビューという性質上、個々の元論文の対象者や実験条件のばらつきをこの記事だけから detailed に検証することはできず、あくまで研究分野全体の傾向を俯瞰する内容として読む必要があります。また、著者自身が指摘している通り、望ましい食事のあり方は栄養面での充足だけでなく、個人および環境にとっての持続可能性も踏まえて考える必要があるとされており、栄養吸収率の高さだけを基準に食品を序列化するような単純な結論は導かれていません。

まとめ

今回のレビューは、動物性食品が一部の栄養素について吸収されやすいという傾向がある一方、植物性食品も加工や組み合わせの工夫によって栄養価を高められる余地があることを、既存文献の整理を通じて示唆するものです。どちらか一方が優れているという単純な話ではなく、食品の選び方だけでなく調理法や食べ合わせ、そして食生活全体のバランスが栄養素の実際の利用効率に関わってくる、という視点を与えてくれる研究といえそうです。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:M. Rudy. Bioavailability of Nutrients from Animal-Derived Foods Versus Other Sources of Foods: A Comprehensive Literature Review. ニュートリエンツ (2026). DOI: 10.3390/nu18172882. 原著ライセンス: cc-by.