子どもの体格や体脂肪のつき方は、生まれたあとの食生活だけでなく、母親が妊娠する前に何を食べていたかとも関係しているかもしれません。今回紹介するのは、中国の太倉市と武強県で実施された母子コホート研究「TAWS(Taicang and Wuqiang Mother-Child Cohort Study)」のデータを用い、母親の妊娠前の食事パターンと、3〜6歳になった子どもの体組成との関連を調べた研究です。著者らは河北省疾病予防管理センター栄養食品安全研究所、中国疾病予防管理センター国家栄養健康研究所、武強県疾病予防管理センターに所属しています。
どのように調べたのか
この研究では582組の母子ペアを対象に、妊娠前1か月間の食事内容を食物摂取頻度調査票で尋ねました。得られたデータは主成分分析という統計手法によって整理され、「動物性食品パターン」「穀物・野菜・果物パターン」「加工肉・乳製品パターン」「野菜・豆類パターン」「漬け野菜パターン」という5つの食事パターンが抽出されました。それぞれのパターンについて、母親がどの程度その傾向の食事を摂っていたかをスコア化し、4つのグループ(Q1〜Q4、最も摂取が少ないQ1を基準)に分けて分析しています。
子どもの体組成は、3〜6歳の時点で生体電気インピーダンス法という方法を用いて測定されました。指標としては、体脂肪率(PBF)、体脂肪指数(FMI)、除脂肪量指数(FFMI)、骨格筋指数(SMI)の4つが使われています。解析では、子どもの特性や母親の社会的背景・妊娠中の状況、家庭の要因、授乳・哺育方法、そして他の食事パターンの影響を調整したモデルで、各パターンと体組成指標との関連が検討されました。さらに、子どもの性別や母親の妊娠前BMIによって関連の強さが変わるかどうかも調べられています。
浮かび上がった関連
調整後の解析では、母親が「加工肉・乳製品パターン」の食事を最も多く摂っていたグループ(Q4)は、最も少なかったグループに比べて子どもの体脂肪指数(FMI)が高い傾向が見られました。一方、「穀物・野菜・果物パターン」を多く摂っていた母親の子どもでは、除脂肪量指数(FFMI)や骨格筋指数(SMI)が低い傾向が示されました。また「野菜・豆類パターン」についても、摂取が多いグループで体脂肪率が高く、骨格筋指数が低いという関連が確認されています。「動物性食品パターン」と「漬け野菜パターン」については、調整後には統計的に意味のある関連は見られませんでした。
性別で分けた解析では、「動物性食品パターン」と子どものFFMI・SMIとの関連が、男児と女児とで逆方向に現れるという結果も報告されています。また、母親の妊娠前BMIは、「加工肉・乳製品パターン」と骨格筋指数との関連の強さに影響していた可能性が示されました。
この結果をどう受け止めるか
著者らは、これらの関連はあくまで観察研究によるものであり、因果関係を示すものではないと強調しています。特に、植物性食品を中心とした「穀物・野菜・果物パターン」や「野菜・豆類パターン」と筋肉量の指標との関連については、慎重な解釈が必要であり、植物性中心の食事そのものに悪影響があると捉えるべきではないと述べられています。この研究は特定の地域のコホートを対象にした一つの研究であり、これだけで母親の食事と子どもの体組成の関係が確定したわけではありません。
まとめ
今回の研究では、母親が妊娠前にどのような食事パターンを摂っていたかが、就学前の子どもの体脂肪や筋肉量の指標と一定の関連を示すことが報告されました。ただし、これは統計的な関連を示したものであり、特定の食品パターンが子どもの体組成を「変化させる」と断定するものではありません。今後、他の集団でも同様の関連が確認されるかどうかが注目されます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Qi Zhang, Yongli Zhao, Yifan Duan, et al. Associations Between Maternal Pre-Pregnancy Dietary Patterns and Body Composition in Preschool Children: A Prospective Cohort Study. ニュートリエンツ (2026). DOI: 10.3390/nu18172895. 原著ライセンス: cc-by.