著者の所属・活動拠点の国は、マレーシアです。
掲載誌:Quantum Journal of Social Sciences and Humanities
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ナシ・アンベンは、ジャワ系移民の食文化に由来するマレーシアの伝統料理で、大きな盆を囲んで食べる習慣には、結束や協力といった意味が込められています。従来の研究は、その歴史や調理法、保存・継承の課題を主に扱ってきました。
研究チームは、若い国内旅行者がナシ・アンベンを体験するために旅行したいと思うことに、何が関係するのかを調べました。大学生を対象に、料理についての知識、自国の文化への帰属意識、SNS上の情報に触れることという三つの要因に着目しました。
何を、どのように調べたか
対象は、マレーシアのマラ工科大学ペナン校ペルマタン・パウの学生365人です。18~30歳で、過去12か月に国内旅行を経験し、食を目的とする観光についてある程度知っていることなどを参加条件としました。無作為に選んだ標本ではなく、条件に合う学生を募った調査です。
研究チームは6週間にわたりオンライン質問票を配布しました。料理の知識、文化への帰属意識、SNSへの接触、ナシ・アンベンに関連する食の観光への参加意向について、各設問への同意の程度を6段階で尋ねました。料理の知識には、食材や調理法、文化的価値などへの理解が含まれます。
分析では、三つの要因を同時に扱う重回帰分析を用い、それぞれが旅行への意向とどのように関連するかを調べました。一時点での回答を集めた調査であり、実際に旅行したかどうかを追跡したものではありません。
主な報告結果
研究チームによると、三つの要因のうち、旅行への意向と最も強い正の関連を示したのはSNSへの接触でした。他の二つの要因を考慮した分析で、関連の強さを比較する標準化回帰係数は0.454で、統計的に有意でした(p<0.001)。料理に関する画像や動画、レビューなどに触れる程度が高い学生ほど、ナシ・アンベンを体験する旅への意向も高いという結果です。
料理についての知識にも、有意な正の関連が認められました。標準化回帰係数は0.186(p<0.001)で、SNSへの接触より関連は小さいものの、知識が豊富な学生ほど旅行への意向が高いと報告されています。
一方、文化への帰属意識については、旅行への意向との統計的に有意な関連は認められませんでした。三つの要因を合わせたモデルは、学生間の旅行意向のばらつきの33.8%を説明しました。
この報告が示すこと
著者らは、伝統料理を文化遺産として大切に思うことが、その料理を求めて旅行する意欲に必ずしも結び付くわけではないと解釈しています。観光としての魅力を伝えるうえでは、文化的価値を訴えるだけでなく、料理への理解を深める情報や、デジタル媒体での見せ方が重要だと述べています。
ただし、対象は一つの大学で条件に合う学生を募った集団に限られます。著者らは、共通の大学環境によって文化への認識が似ていた可能性や、質問がマレーシア文化全般への帰属意識を測っており、ナシ・アンベン固有のジャワ系の伝統への結び付きを十分に捉えていなかった可能性を挙げています。この報告は、こうした学生集団における旅行への意向の特徴を示すもので、SNS接触や知識が実際の旅行を引き起こすと確かめたものではありません。
原著論文の著者・所属:SHAHROOL REZZA SALIM(Faculty of Hotel and Tourism Management, UiTM Penang Branch, Penang, Malaysia)、AFRINA SHAFRI MOHAMAD SYUKOR(Faculty of Hotel and Tourism Management, UiTM Penang Branch, Penang, Malaysia)、DAYANG SITI MAISARA ABANG RIDZUAN(Faculty of Hotel and Tourism Management, UiTM Penang Branch, Penang, Malaysia)、FARHAN FAAT(Faculty of Hotel and Tourism Management, UiTM Penang Branch, Penang, Malaysia)、MUHAMMAD 'ARIF AIZAT BASHIR(Faculty of Hotel and Tourism Management, UiTM Penang Branch, Penang, Malaysia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):SHAHROOL REZZA SALIM, AFRINA SHAFRI MOHAMAD SYUKOR, DAYANG SITI MAISARA ABANG RIDZUAN, et al. THE ROLE OF NASI AMBENG IN GASTRONOMIC TOURISM: EXAMINING BEHAVIOURAL INTENTIONS OF UNIVERSITY STUDENTS. Quantum Journal of Social Sciences and Humanities 2026-11-07. DOI: 10.55197/qjssh.v7si5.1761. 原著ライセンス:CC BY.