著者の所属・活動拠点の国は、イランです。

掲載誌:Food Science & Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

液体の油を脂肪の代わりに使うための工夫

牛肉ハンバーグはたんぱく質やビタミン、ミネラルを含む身近な加工食品です。一方で、原料の動物性脂肪には飽和脂肪酸が多く含まれ、その栄養面が問題視されてきました。そこで、動物性脂肪を植物油などの不飽和の油に置き換える試みが行われています。ただし、脂肪は食感や風味を大きく左右するため、液体の油をそのまま固形脂肪の代わりにするのは簡単ではありません。

この課題への対策の一つが「オレオゲル」です。オレオゲルとは、ゲル化剤が作る立体的な網目の中に液体の油を閉じ込め、ゲル状にしたものです。研究チームは、ブラックシード(ニゲラ・サティバ)の種子から採れる油を材料に選びました。ゲル化剤には、食品添加物として使われるミツロウ(ビーズワックス)と、ビートやサトウキビにも含まれるアジピン酸を使いました。両者を併用すると互いの働きを高め合う相乗効果があるかを調べています。さらに、最も適したオレオゲルで動物性脂肪の一部を置き換えたハンバーグを作り、その性質を評価しました。

ゲル化剤の組み合わせを比べた結果

研究チームは、ミツロウとアジピン酸の配合比を変えながら、ゲル化剤の合計を油に対して5%(重量比)としてオレオゲルを作りました。そのうえで、硬さ、結晶の形、油を保持する力、色、熱による溶け方、弾性などの性質を比べています。

その結果、ミツロウだけで作ったオレオゲルが最も硬く、アジピン酸だけのものが最も柔らかくなりました。両者を混ぜたものは、ミツロウの割合が多いほど硬くなりましたが、ミツロウ単独を上回ることはありませんでした。論文はこの結果から、硬さについて相乗効果は見られなかったと結論づけています。顕微鏡で観察すると、ミツロウのオレオゲルには針状のまとまった結晶ができていました。一方、アジピン酸のオレオゲルの結晶は大きく不規則な形でした。

油を閉じ込めておく力は、試料によって約25%から100%まで差がありました。ミツロウ単独が最も高く、アジピン酸の割合が減るほど高くなりました。ゲルの弾性を調べる試験では、アジピン酸を含むものに構造の弱さが見られました。振動の速さが一定以上になると、固体らしい性質より液体らしい性質が上回ったためです。この試験でも、組み合わせによる相乗効果は確認されませんでした。なお、どのオレオゲルも黒っぽい色をしており、著者らはブラックシードオイル自体の色によるものとみています。

最も性質が良かったミツロウ5%のオレオゲルについては、追加の分析も行われました。脂肪酸の組成は元の油とほとんど変わらず、ゲル化の工程による影響は小さいと報告されています。元の油は、不飽和脂肪酸が77.88%を占めていました。また、冷蔵で30日間保存したときの酸化の指標である過酸化物価も調べられています。オレオゲルは初期値こそ元の油より高かったものの、その後の上昇幅は液体の油より小さかったとされています。

ハンバーグに使ったときの変化

次に研究チームは、ミツロウ5%のオレオゲルを使ってハンバーグを作りました。比較の基準は、脂肪を18%含む通常の配合です。これに対し、脂肪の一部をオレオゲルに置き換え、置き換えの度合いを6%、9%、12%の3段階としました。ハンバーグは冷凍保存し、1日目、15日目、30日目に評価しています。

オレオゲルの置き換えを増やすほど、加熱後も水分が保たれやすくなりました。水分保持は12%置き換えたものが最も高く、通常の配合が最も低い結果でした。加熱による重量の減少(クッキングロス)も、置き換えが多いほど小さくなりました。焼き縮みによる直径の減少も同様に少なくなっています。重量減少と焼き縮みは、通常の配合で最も大きく、12%置き換えたもので最も小さいという結果でした。

一方、色は好ましい方向には変わりませんでした。置き換えの割合が増えるほど明るさと赤みが低下し、著者らは全体として通常の配合のほうが色の面では優れていたと述べています。その原因として、緑がかったブラックシードオイルの色を挙げています。

研究から見えてきたこと

この研究では、ミツロウとアジピン酸を組み合わせても、ブラックシードオイルのオレオゲルの硬さや弾性は高まりませんでした。ミツロウ単独のほうが、構造のしっかりしたゲルになることが示されています。そのオレオゲルで動物性脂肪の一部を置き換えたハンバーグでは、加熱後の水分が保たれやすくなりました。加熱による重量の減少や焼き縮みも抑えられています。一方で、油の色に由来するとみられる色の変化という課題も報告されました。動物性脂肪を植物油由来の素材に置き換える際には、加熱時の性質の変化と見た目の変化の両方を見ていく必要があることを伝える報告です。

原著論文の著者・所属:Shadieh Roon(Department of Food Science and Technology, Faculty of Agriculture Urmia University Urmia Iran)、Hadi Almasi(Department of Food Science and Technology, Faculty of Agriculture Urmia University Urmia Iran)、Fariba Zeynali(Department of Food Science and Technology, Faculty of Agriculture Urmia University Urmia Iran)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shadieh Roon, Hadi Almasi, Fariba Zeynali. Preparation and Characterization of Black Seed Oil Oleogel and Its Application in Reduced Animal Fat Beef Hamburger Formulations. Food Science & Nutrition 2026-08-01. DOI: 10.1002/fsn3.72257. 原著ライセンス:CC BY.