著者の所属・活動拠点の国は、イランです。
掲載誌:Applied Food Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
キンセンカ(カレンデュラ)の抽出物には、フェノール類と呼ばれる植物由来の成分が含まれています。研究チームは、この抽出物を粉末の粒子に閉じ込める「マイクロカプセル化」を行い、できた粉末が食品の中でどのように働くかを調べました。
粒子の外側を包む材料(壁材)には、牛乳由来のホエイたんぱく質濃縮物を使いました。著者らは、処理をしていないもの、加水分解処理をしたもの、超音波処理をしたものの3種類を比べました。たんぱく質の構造を変えると、粉末の性質や中の成分の保持にどのような違いが出るかを確かめることが目的です。抽出物と壁材の液体を霧状にして熱風で乾かす「噴霧乾燥」によって、粉末を作りました。
粉末の性質の違い
論文によると、粉末化の収率は41.11〜49.73%でした。超音波処理したホエイたんぱく質を使った場合に、最も高い効率が得られたと報告されています。どの粉末も水分は1.66〜4.33%と低い値でした。食品中の水の状態を表す「水分活性」も0.31〜0.39にとどまり、著者らは保存安定性が良いことを示すとしています。
壁材の種類によって粉末の性質ははっきり異なりました。加水分解処理したものは水への溶けやすさが最も高く(78.0%)、一方で空気中の水分を吸いやすい性質も最も強く示しました(27.3%)。超音波処理したものは、粒子が最も小さく、最も球に近い形になりました。平均直径は22.6マイクロメートル、球形度の指標は0.89でした。
粉末から取り出せるフェノール類の量と抗酸化活性は、処理なし、加水分解処理、超音波処理の順に高い値でした。抗酸化活性は、DPPHという試薬を使った試験で測定されました。著者らはこの結果について、よりコンパクトな粒子の内部では成分が外へ拡散しにくく、取り出しにくくなることを反映していると説明しています。
ゼリーへの応用
研究チームは実際の食品への応用として、ゼラチンを使ったゼリーを作りました。粉末化した抽出物を5%加えたゼリーと、粉末化していない抽出物をそのまま加えたゼリーを比べています。
抽出物をそのまま加えたゼリーは、取り出せるフェノール類の量(100グラムあたり没食子酸換算で2.67ミリグラム)と抗酸化活性(62.68%)が最も高い値でした。しかし、ゼリーから水がしみ出す「離水」が44.85%と多く、硬さは2.38ニュートンと低く、官能評価(人が食べて好ましさなどを評価する試験)の得点も3.10と最も低い結果でした。
これに対して、粉末化した抽出物を加えたゼリーでは、ゲルの安定性が改善しました。離水は33.30%に抑えられ、硬さは3.82ニュートンに高まりました。官能評価は4.30と良好で、対照のゼリーに近い評価だったと報告されています。
研究が示すこと
著者らは、ホエイたんぱく質を壁材にしたマイクロカプセル化、とくに超音波処理したたんぱく質を使う方法が、植物由来成分を安定させる有効な手段になると結論づけています。また、物理化学的な性質や構造、官能評価の面で優れたゲル状食品づくりにも役立つとしています。
この研究では、壁材のたんぱく質に施す処理によって粒子の大きさや形、取り出せる成分の量に違いが見られました。著者らはこれを粒子構造の違いによるものと解釈しています。また、抽出物を粉末化して加えるか、そのまま加えるかで、ゼリーの離水や硬さ、官能評価に差が出たことが報告されています。
原著論文の著者・所属:Morteza Radkhah(Department of Food Science, College of Agriculture, University of Tabriz, Tabriz 5166616471, I.R. Iran)、Seyed Hadi Peighambardoust(Department of Food Science, College of Agriculture, University of Tabriz, Tabriz 5166616471, I.R. Iran)、Nima Roshandoost(Department of Food Science, College of Agriculture, University of Tabriz, Tabriz 5166616471, I.R. Iran)、Amir Akbarmehr(Department of Food Science, College of Agriculture, University of Tabriz, Tabriz 5166616471, I.R. Iran)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Morteza Radkhah, Seyed Hadi Peighambardoust, Nima Roshandoost, et al. Evaluation of spray‑dried microencapsulated Calendula officinalis extract using modified whey‑protein carriers highlighting morphology‑driven bioactive retention and application in functional jelly. Applied Food Research 2026-07-31. DOI: 10.1016/j.afres.2026.102473. 原著ライセンス:CC BY.