この研究は、ポルトガルの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

農産物や食品を加工する過程では、毎日大量の副産物が出ます。これらは食物繊維やタンパク質、ミネラル、ポリフェノールなどを含んでいるにもかかわらず、多くが廃棄されています。研究チームは、こうした副産物を食品そのものや「活性食品包装」――包装材自体が食品の品質保持に働きかける包装――の材料として活かせないかと考えました。

今回取り上げられたのは、地中海地域で栽培されるカルドン(Cynara cardunculus L.)の葉です。カルドンの花はチーズ作りの植物性凝乳剤として使われており、その際に葉が主な副産物として残ります。カルドンの葉に含まれるポリフェノールについては複数の報告がある一方で、栄養成分そのものを調べた研究は少ないと著者らは述べています。そこで本研究は、第一にカルドンの葉の栄養組成をアミノ酸・脂肪酸・カロテノイドまで含めて詳しく調べ、乾燥という簡便で低コストな保存処理がそれらにどう影響するかを明らかにすること、第二に、同じくチーズ産業の副産物であるホエイタンパク質を土台に、カルドンの葉の抽出物を配合したフィルムを作って性質を調べることを目的としました。さらに、抗酸化性や抗菌性が知られるレモンの皮の抽出物を組み合わせた場合の影響も検討されています。著者らによれば、カルドンの葉とレモンの皮の抽出物を組み合わせて活性フィルムを作る試みはこれまで行われていませんでした。

何をどう調べたか

カルドンの葉はポルトガル・グアルダ地方の生産者から提供されたもので、2024年の春から夏にかけて採取されました。研究チームは葉を二つのグループに分けています。一方は処理をしない「生葉」、もう一方は強制送風式のオーブンで35℃・48時間かけて水分が10%未満になるまで乾かした「乾燥葉」です。レモンの皮はポルトガルのジュース会社から提供され、凍結乾燥して粉砕されました。

栄養面では、水分・灰分(ミネラル分の総量の目安)・タンパク質・脂質・食物繊維・糖質といった一般成分に加え、脂肪酸組成、アミノ酸組成、9種類のミネラル、カロテノイド、ビタミンAとEが分析されました。

フィルムの作製には、ホエイタンパク質濃縮物を水に分散させ、pHを7.0に調整して80℃で30分加熱し、可塑剤としてグリセロールを加えた溶液が用いられました。これをガラス面に流し込んで室温で48時間乾燥させる「キャスティング法」でフィルムが作られています。抽出物はエタノールを溶媒とする固液抽出で得られました。作られたフィルムは合計7種類で、抽出物を含まない対照フィルムのほか、カルドン葉抽出物を0.5%・1.0%・2.0%配合したもの、カルドン葉とレモン皮の抽出物を同じ3段階の濃度で配合したものです。これらについて、厚み、水分量、水への溶解性、水を含んだときの膨潤の度合い、不透明度と透明度、色、引張強さや伸びといった機械的性質、水蒸気の通しやすさ、熱に対する安定性、表面と断面の形態、赤外分光による構造などが調べられました。

報告された主な結果

乾燥による栄養成分の変化については、水分が81.3 g/100 gから7.4 g/100 gへとおよそ90%減少し、乾燥条件が適切に働いたことが確認されました。灰分は12.7 g/100 gから13.7 g/100 gへ増加しており、乾燥の間にミネラル分が保たれたことを示しています。ミネラルの中ではカリウムが最も多く、生葉で3668.1 mg/100 g、乾燥葉で3733.9 mg/100 gと有意差がなく、熱に対して安定でした。カルシウムとリンも多く含まれ、銅と亜鉛はどちらの試料でも少量でした。

食物繊維は生葉で42.1 g/100 g、乾燥葉で43.9 g/100 gと、どちらの試料でも最も多い主要栄養素であり、乾燥による有意な影響を受けませんでした。一方で、タンパク質(22.3→21.2 g/100 g)と全糖(5.0→3.7 g/100 g)は減少しています。著者らはこれをメイラード反応――アミノ酸と還元糖が反応して起こる、加熱時によく見られる化学変化――の典型的な兆候として説明しています。アミノ酸では、必須アミノ酸のメチオニンが433.5から215.8 mg/100 gへと大きく減少した一方、リシンは458.9から1053.2 mg/100 gへと増加しました。著者らは、減少については同じくメイラード反応や酸化などの分解経路を、増加についてはタンパク質の部分的な加水分解でアミノ酸が構造から遊離し、分析で検出されやすくなったことを理由として挙げています。

熱に弱い成分では損失が見られました。カロテノイドは、シス体のβ-カロテンを除いて有意に減少しています。シス体が保たれたのは、乾燥中にトランス体からシス体への異性化が起きたためと考えられると著者らは述べています。ビタミンEは4.92から1.73 mg/100 gへ減少し、ビタミンAはどちらの試料からも検出されませんでした。著者らは、栄養面と、先行する自身の研究で示された抗酸化性・抗菌性を踏まえ、フィルムの作製には乾燥葉のみを用いることにしたと説明しています。

フィルムについては、7種類すべてがキャスティング法で問題なく作製できました。抽出物を加えると水分は19.8%から15.8%へ下がり、膨潤の度合いも低下しました(カルドン1.0%配合で7.5%と最低値)。水への溶解性も対照より低く、カルドン・レモン1.0%配合が48.81%と最も低い値でした。著者らは、これらの変化は抽出物中のフェノール化合物がフィルムの吸湿性を下げたためと考えられ、湿った環境でのフィルムの耐性が高まることを示すとしています。

光学的な性質では、抽出物の濃度が上がるほど不透明度が増し、透明度は下がりました。色の測定でも明るさが低下して暗くなり、緑みが増して黄色みが減る変化が見られました。著者らは、光の透過が減ることは食品を酸化から守るうえで有利になりうる一方、中身が見えにくくなるため消費者の受け止め方との兼ね合いを考える必要があると指摘しています。

機械的性質では、抽出物の添加によって引張強さと破断時の伸びがおおむね低下し、一方でヤング率(変形しにくさの指標)は上昇する傾向が見られました。破断時の伸びは対照の13.12%からカルドン2.0%配合で6.58%まで下がっています。著者らはこれを、フェノール化合物が高分子鎖の動きを制限して硬さを増す一方、タンパク質マトリックスのまとまりを損なって強度を下げたためと解釈し、柔軟性と剛性の間にトレードオフがあるとまとめています。この解釈は、電子顕微鏡で観察された表面の粗さや不均一さ、赤外分光で確認された抽出物由来成分の取り込みとも整合するとされています。

この研究が示すこと

この研究は、チーズ作りの傍らで捨てられてきたカルドンの葉が、食物繊維・ミネラル・アミノ酸の供給源として見るべき栄養組成を持つことを詳しく示しました。同時に、35℃での乾燥という手軽な保存方法が、食物繊維やカリウムのような成分を保つ一方で、カロテノイドやビタミンEのような熱に弱い成分では損失を伴うことも明らかにしています。乾燥の効果は成分によって異なるという事実は、この副産物をどう保存し利用するかを考えるうえでの手がかりになります。

フィルムに関しては、同じくチーズ産業の副産物であるホエイタンパク質に、カルドンの葉やレモンの皮の抽出物を加えることで、吸湿性や水への溶解性が下がり、光の透過が減り、硬さが増すといった性質の変化が起きることが報告されました。得られた材料には、強度や柔軟性が下がるという側面もあり、用途に応じた配慮が必要になります。二つの副産物を組み合わせて一つの材料に変えるという発想は、循環型経済の考え方に沿って農産加工の廃棄物に新しい役割を与えようとする試みとして位置づけられます。

著者:Cássia H. Barbosa(Department of Food and Nutrition, National Institute of Health Doutor Ricardo Jorge, Av. Padre Cruz, 1649-016 Lisbon, Portugal)、Mariana Andrade(Department of Food and Nutrition, National Institute of Health Doutor Ricardo Jorge, Av. Padre Cruz, 1649-016 Lisbon, Portugal)、Victor Gomes Lauriano Souza(MEtRICs, Department of Chemistry, NOVA School of Science and Technology, NOVA University of Lisbon, Campus de Caparica, 2829-516 Caparica, Portugal)、Francisco Ravasco(Department of Food and Nutrition, National Institute of Health Doutor Ricardo Jorge, Av. Padre Cruz, 1649-016 Lisbon, Portugal)、Carla Motta(Department of Food and Nutrition, National Institute of Health Doutor Ricardo Jorge, Av. Padre Cruz, 1649-016 Lisbon, Portugal)、Miguel Ângelo Cerqueira(International Iberian Nanotechnology Laboratory, Av. Mestre José Veiga, 4715-330 Braga, Portugal)、Vasco D. F. Martins(Centre of Biological Engineering, University of Minho, Campus de Gualtar, 4710-057 Braga, Portugal)、Andreia F. M. Santos(LAQV-REQUIMTE, Department of Chemistry, NOVA School of Science and Technology, NOVA University of Lisbon, Campus de Caparica, 2819-516 Caparica, Portugal)、Sidney Tomé(Department of Food and Nutrition, National Institute of Health Doutor Ricardo Jorge, Av. Padre Cruz, 1649-016 Lisbon, Portugal)、Fernanda Vilarinho(Centre for Study in Animal Science (CECA), Instituto de Ciências, Tecnologias e Agroambiente (ICETA), University of Porto, 4050-053 Porto, Portugal)、Ana T. Sanches-Silva(Associate Laboratory for Animal and Veterinary Sciences (AL4AnimalS), 1300-477 Lisbon, Portugal)、Ana Luísa Almaça da Cruz Fernando(MEtRICs, Department of Chemistry, NOVA School of Science and Technology, NOVA University of Lisbon, Campus de Caparica, 2829-516 Caparica, Portugal)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Cássia H. Barbosa, Mariana Andrade, Victor Gomes Lauriano Souza, et al. Valorisation of Cardoon Leaves and Lemon Peel for Potential Active Food Packaging: Impact of Drying on Nutritional Profile and Functional Performance of Whey Protein Films. Foods 2026-09-12. DOI: 10.3390/foods15183229. 原著ライセンス:CC BY.