著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ホエイプロテインは、牛乳由来のたんぱく質で、体内で作れない必須アミノ酸をそろって含み、なかでも分岐鎖アミノ酸(BCAA:ロイシン、イソロイシン、バリン)が多く、消化・吸収が速いことから、運動後の回復を目的に広く使われています。一方で、運動中は汗によって体の水分が失われ、練習中に体重の1%程度が失われることも珍しくないとされています。
研究チームは、これまでのホエイプロテイン研究がたんぱく質の種類、量、摂取タイミングなどに注目してきた一方、運動中の水分状態が摂取後の反応にどう影響するかは検討されてこなかったと指摘しています。そこで本研究では、運動中の水分補給の程度を変えて体の水分不足(脱水)の度合いを変え、同じ量のホエイプロテインを飲んだ後の血液中のアミノ酸の増え方を比べました。著者らは、脱水が強いほど摂取後早い段階でのアミノ酸の上昇が小さくなると予想していました。
どのように調べたか
対象は健康な若年男性13人で、日常的な運動は週3回以下の、専門的なトレーニングを受けていない人たちです。各参加者は少なくとも7日の間隔をあけて、3種類の条件でトレッドミル走を行いました。運動中に水を飲まない「脱水条件」、失われる水分の50%を補う「50%補水条件」、100%を補う「完全補水条件」です。
まず脱水条件を最初に実施し、体重が約2%減るまでに必要な運動時間と、各人が失う水分量を決めました。20分間のランニングと15分間の休憩(体重測定)を繰り返す方式です。その後、残る2条件を順番をランダムにして実施し、同じ運動内容のまま、脱水条件で失われた量の50%または100%に相当する水を運動中に少しずつ飲みました。
運動後5分以内に、参加者は45gのホエイプロテインを450mLの水に溶かして飲みました。血液は運動前、運動直後、摂取から60分後と120分後に採取し、血清中のアミノ酸濃度を測定しました。回復中の120分間はほかの飲食をせず、のどの渇き、きつさの感覚、胃腸の症状も記録しています。
主な結果
水分補給の違いによって、運動後の体重減少は脱水条件で平均2.20%、50%補水条件で1.18%、完全補水条件で0.27%となり、3つの異なる水分状態がつくり出されました。運動中の平均心拍数やきつさの感覚には条件間で差がみられませんでしたが、のどの渇きは脱水条件で一貫して強く、プロテイン飲料を飲んだ後の回復期間中も高いままでした。
ホエイプロテインを飲んだ後、血液中のアミノ酸濃度はどの条件でも上昇しました。しかし摂取60分後の時点で、脱水条件ではアミノ酸全体、BCAA、ロイシン、イソロイシン、グルタミンの濃度が、50%補水条件と完全補水条件のいずれよりも低くなっていました。
摂取後120分間にアミノ酸濃度が運動直後からどれだけ上乗せされたかを面積として表した指標でも、アミノ酸全体、BCAA、イソロイシン、グルタミンは脱水条件で他の2条件より小さくなりました。ロイシンは完全補水条件との比較でのみ差があり、バリンでは条件による違いはみられませんでした。また、50%補水条件と完全補水条件の間には、いずれの指標でも差がありませんでした。
胃腸の症状はすべての条件で軽く、強い症状とされる評価は全項目評価のうち1.0%にとどまり、条件による違いもありませんでした。著者らは、脱水条件でアミノ酸の上昇が弱まったことは、はっきりした胃腸の不調によるものではないと考えています。
この研究が示すこと
著者らは、運動によって体重の約2.2%に相当する水分が失われた状態では、運動後に摂ったホエイプロテインによる早い段階での血中アミノ酸の上昇が弱まると結論づけています。その原因として、胃から腸への送り出しの遅れや腸での吸収の低下などが考えられるとしていますが、本研究ではこれらを直接測定しておらず、仕組みは推測の段階です。
また本研究で測ったのは血液中のアミノ酸であり、筋肉でのたんぱく質合成そのものは調べていません。対象も健康な若年男性に限られています。それでも、運動後のたんぱく質摂取の効果を考える際に、運動中の水分状態という見落とされがちな要因が関わりうることを、実験で示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Zekun Xin(Department of Sport Biochemistry, School of Sport Science, Beijing Sport University, Beijing 100084, China)、Mengtong Gao(Department of Sport Biochemistry, School of Sport Science, Beijing Sport University, Beijing 100084, China)、Xinjie Wu(Department of Sport Biochemistry, School of Sport Science, Beijing Sport University, Beijing 100084, China)、Min See(Department of Sport Biochemistry, School of Sport Science, Beijing Sport University, Beijing 100084, China)、Peng Cheng(China Institute of Sport and Health Science, Beijing Sport University, Beijing 100084, China)、Yi Yan(Department of Sport Biochemistry, School of Sport Science, Beijing Sport University, Beijing 100084, China; Key Laboratory of Sports Stress and Adaptation, General Administration of Sport, Beijing Sport University, Beijing 100084, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zekun Xin, Mengtong Gao, Xinjie Wu, et al. Exercise-Induced Dehydration Limits the Effectiveness of Post-Exercise Whey Protein Supplementation in Healthy Young Men. Nutrients 2026-10-04. DOI: 10.3390/nu18193267. 原著ライセンス:CC BY.