この研究は、カザフスタン、イタリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ゼリーキャンディは砂糖やブドウ糖シロップを多く含み、人工の香料・着色料が使われることが多い菓子です。研究チームは、こうした従来品を見直し、天然の素材を用いた新しい配合を設計することを目的としました。
この研究では、ラズベリーのピューレと、黒ニンジンから得られた着色用の濃縮液を加えたラズベリー風味のゼリーキャンディを開発しています。固める仕組みには、ペクチンとゼラチンを組み合わせた二重のゲル化系を用いました。ゼラチンは弾力や噛みごたえを、ペクチンは硬さと構造の安定性をもたらすとされる組み合わせです。
さらに研究チームは、製品の性質が配合だけでなく保存条件にも左右される点に着目し、包装フィルムの違いが品質保持にどう関わるかもあわせて検討しました。
何をどのように調べたか
研究チームは、キャンディの「乾燥物量(固形分の割合)」を87.2〜92.7%、「pH(酸性度)」を3.00〜3.53の範囲で組み合わせて変化させ、合計6種類の配合を作り分けました。作られたキャンディについて、水分の状態や色、食感、熱に対するふるまい、抗酸化に関わる性質などを測定しています。
水については、含まれる水分量に加えて「水分活性」も測っています。水分活性とは、食品中の水のうち微生物の増殖や化学反応に使われやすい、自由に動ける水の割合を示す指標です。食感については、試料を2回押しつぶす試験から硬さや凝集性、弾力性といった項目を求めました。熱については、加熱しながら熱の出入りを測る示差走査熱量測定を行い、ガラス転移温度などを調べています。ガラス転移温度とは、材料が硬く固まった状態から、分子が動きやすい柔らかい状態へ移り変わる温度のことです。
包装については、白色の金属蒸着BOPP、オレンジ色のBOPP/LDPE、透明のPET/LDPEという3種類のフィルムを比較しました。それぞれについて熱的な安定性、引張強さなどの機械的性質、水蒸気を通しにくさを示すバリア性を測定しています。
報告された主な結果
研究チームは、製品の品質を左右した主な要因は二つ、すなわち乾燥物量と、包装材が光を遮る能力であったと報告しています。
乾燥物量を92.7%まで高めた配合では、水分活性が0.72〜0.74まで低下し、ガラス転移温度は51〜53℃へ上昇しました。あわせて、組織の硬さと抗酸化活性も高まったと報告されています。一方、乾燥物量が低い配合(87.2〜89.1%)では水分活性は0.76〜0.81と高めでした。ただし乾燥物量が高い配合では、赤みや色の鮮やかさを示す値が低下する傾向も示されています。
色の変化については、不透明な白とオレンジのフィルムが光を遮る役割を果たし、色差(ΔE*)を2.36以下に抑えました。これに対し透明フィルムでは色差が3を超える例があり、目に見える色の劣化が生じたと報告されています。研究チームは、この保護効果はフィルムの厚さではなく光を遮る性質によって主に決まると述べており、実際に薄いオレンジのフィルムのほうが厚い透明フィルムより色の安定性で優れていました。また白いフィルムのアルミニウム層は水蒸気の移動を最も抑え、透過係数は9.2×10⁻¹⁰ g/(g·atm·cm²·s)と、3種類の中で最も低い値を示しました。
この研究が示すこと
この研究は、ゼリーキャンディの品質が、どんな素材を使うかだけでなく、固形分やpHといった配合の条件、そしてどう包むかによっても決まることを、一つの製品について体系的に示したものです。
とくに、天然由来の色素を使う場合には光を遮る包装が色の保持に関わるという点は、素材を天然のものへ置き換える際に配合と包装を一緒に考える必要があることを示しています。
著者:Olga Belozertseva(Department of Food Technology, Almaty Technological University)、Katerina Koshenaj(Department of Industrial Engineering, University of Salerno)、Yuliya Pronina(Department of Food Technology, Almaty Technological University)、Serena Carpentieri(Department of Industrial Engineering, University of Salerno)、Giovanna Ferrari(Department of Industrial Engineering, University of Salerno)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Olga Belozertseva, Katerina Koshenaj, Yuliya Pronina, et al. Formulation and comprehensive characterization of raspberry jelly candies enriched with raspberry puree and black carrot concentrate: effects of matrix composition and packaging materials. Frontiers in Sustainable Food Systems 2026-09-03. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1925615. 原著ライセンス:CC BY.