大学に進学したばかりの若者は、親元を離れて生活習慣が大きく変わる時期にあたる。インドでは若年人口の増加が続く一方、低栄養と過体重・肥満が同時に存在する『栄養の二重負担』が指摘されており、特に大学生世代でその実態を詳しく調べた研究はこれまで限られていた。今回紹介する研究は、インド国内の農業系大学に通う学生3,150人を対象に、食事内容だけでなく心理状態や周囲との関係が体格(BMI)にどう関わっているかを大規模に調べたものである。

調査はインドの北・南・東・西・中央・北東の6地域にまたがる21の州立農業大学などから、各校おおむね150人ずつ、18〜25歳の学部生を集めて実施された。身長・体重を実測してBMIを算出したほか、食事の頻度や内容、感情に基づく食行動、家族や友人からの影響などを尋ねる自記式の質問票を使っている。質問票は事前に210人を対象とした予備調査で信頼性が確認され(クロンバックのアルファ係数0.725〜0.812)、食事内容については24時間思い出し法による聞き取りでも裏付けを取ったという。

食事は足りているようで偏っていた

穀類の摂取は対象者全員が毎日摂取しており「充足」していたが、それ以外の食品には偏りが見られた。インド医学研究評議会(ICMR)の推奨量と比べると、緑黄色葉野菜の摂取量は推奨より約31〜34%少なく、牛乳・乳製品は約13〜18%、果物は約10〜20%不足していたという。一方で毎日3食を規則的に取っている学生は66.6%にとどまり、果物を毎日食べる学生はわずか6.6%だった。喫煙(20.6%)や飲酒(6%)は男子のみに見られ、定期的に運動をしている学生は32.6%にとどまった。年齢や喫煙・飲酒の有無、運動習慣によって食習慣の得点(規則正しさなどを点数化したもの)に統計的な差があり、たとえば喫煙者は非喫煙者より、飲酒者は非飲酒者より食習慣の得点が低い傾向が示された。

『何を食べるか』より『なぜ食べるか』が体格と結びついていた

この研究の中心は、14の食行動・心理・社会的な項目を主成分分析という統計手法でまとめ、体格と関連が強い行動パターンを抽出した点にある。特にBMIとの関連が強かったのは次の3つの傾向だった。

  • 食品広告への反応や不安な気持ちからつい食べてしまうといった「外的刺激・感情反応」の傾向は、BMIと強い正の関連を示した(回帰係数+2.04、相関係数+0.77)。
  • 文化的な食習慣にとらわれず、規則正しく食事を摂る「構造化された食習慣」の傾向は、BMIと負の関連を示した(回帰係数-1.54、相関係数-0.58)。
  • 友人に依存せず前向きな気持ちで食事をする傾向も、BMIと負の関連を示した(回帰係数-0.84、相関係数-0.31)。

また、女子学生の72.6%が「孤独感」から食べると回答したのに対し男子は52%、逆に「幸福感」から食べると答えたのは男子77.4%に対し女子35.3%だった。テレビやラジオの食品広告に影響されると答えたのは男子41.3%・女子27.3%である一方、文化的な考え方に食行動が左右されると答えたのは女子52%・男子22.6%と、性別によって食行動の背景にある心理・社会的要因の傾向が異なっていた。友人からの同調圧力を感じると答えた学生は男女とも7割を超えていた(男子79.4%、女子74.6%)。研究チームはこれらの結果から、感情面での脆さや周囲の刺激に流されやすいことが高いBMIと結びつく一方、規則正しい食事や情緒的な安定は体格の面で保護的に働く可能性があるとまとめている。

この研究の読み方

この研究は特定の時点で行われた横断調査であり、食行動とBMIの間に関連が見られたとしても、どちらが原因でどちらが結果かを直接示すものではない。また対象は農業系の大学に通う学生に限られており、都市部の総合大学の学生など他の集団にそのまま当てはまるとは限らない点にも注意が必要である。主成分分析で抽出された6つの行動パターンは、食行動全体のばらつきのうち46.01%を説明するにとどまっており、著者らも「探索的な行動パターン」であって確定的な構造ではないと位置づけている。研究チームは、インドの大学において肥満と低栄養の両方を防ぐには、性別や社会的背景に配慮した栄養プログラムが必要だとしている。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Girijesh Singh Mahra, Pratibha Joshi, Satyapriya, et al. Psychosocial and dietary influences on eating behaviors and body mass index among geographically diverse Indian university students. サイエンティフィック・リポーツ (2026). DOI: 10.1038/s41598-026-48491-6. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.