高血圧は世界的に心血管疾患の主要な危険因子とされていますが、その背景にある食生活との関係は地域によって大きく異なります。ナイジェリアでは高血圧と伝統的な食習慣が同時に見られることが多いとされる一方で、どのような食事パターンが高血圧とどう関連しているのかを地域レベルで示すデータはこれまで限られていました。中国・南方医科大学公衆衛生学院の食品安全健康研究センター(広州)とナイジェリア・エキティ州立大学の研究者らによるこの研究は、ナイジェリア南西部のオヨ州とクワラ州に住む成人を対象に、食事パターンおよび身体活動と高血圧の有病率との関連を調べたものです。
どのように調べたのか
研究チームは、条件を満たした成人608人を対象に、現地の食文化に合わせて妥当性が確認された7日間の食物摂取頻度調査票(FFQ)と、身体活動を評価するための国際的な調査票(GPAQ)を用いて回答を得ました。血圧は標準化された方法で1回の訪問時に測定し、世界保健機関(WHO)の基準に基づいて高血圧の有無を判定しています。得られた食品摂取データは主成分分析(PCA)という統計手法で分類され、バリマックス回転という処理を経て、参加者の食事の傾向が四つのパターンに整理されました。具体的には「多様な伝統食パターン」「典型的な伝統食パターン」「果物・野菜パターン」「脂質・清涼飲料パターン」です。これらのパターンや身体活動量が高血圧の有病率とどう関連するかは、クラスター調整済みのポアソン回帰分析という統計手法を用い、有病率比(PR)として算出されました。
何がわかったのか
今回の調査対象者全体における高血圧の有病率は24.34%で、男性(29.78%)は女性(16.67%)よりも有意に高い値を示しました。食事パターンとの関連では、「典型的な伝統食パターン」への適合度が最も高い群で、他の要因を調整した後も高血圧の有病率が有意に高いという結果が得られました(有病率比1.642、95%信頼区間1.069〜2.252)。一方、「果物・野菜パターン」への適合度が最も高い群では、高血圧の有病率が有意に低いという関連が示されました(有病率比0.408、95%信頼区間0.258〜0.646)。「多様な伝統食パターン」と「脂質・清涼飲料パターン」については、高血圧との統計的に有意な関連は確認されませんでした。また、身体活動量については、単純な比較では高血圧との正の関連がみられたものの、食事パターンを含めた要因を調整すると、その関連は統計的に有意ではなくなったと報告されています。
この研究を読むうえで気をつけたいこと
この研究は、ある一時点での食事や身体活動、血圧の状態を同時に調べた横断的研究であり、食事パターンが高血圧の原因であることを直接証明するものではありません。血圧測定が1回の訪問で行われている点や、対象がナイジェリア南西部の特定の2州に限られている点も、結果を他地域にそのまま当てはめる際には留意が必要です。あくまで一つの地域集団を対象とした関連の分析であり、結論が確定したわけではない点を踏まえて読む必要があります。
まとめ
この研究では、ナイジェリア南西部の成人において、典型的な伝統食パターンへの強い適合が高血圧の有病率の高さと関連し、果物・野菜を中心とした食事パターンへの適合は有病率の低さと関連することが示唆されました。身体活動については、食習慣を考慮すると独立した関連は見られなかったとされています。今後さらに研究が積み重なることで、地域の食文化に即した高血圧対策を考えるうえでの手がかりが増えていくことが期待されます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Animashaun Adeola Faidat, Aliya Yijiati, Xingyu Yu, et al. Cross-Sectional Associations of Dietary Pattern, Physical Activity with Hypertension Among Adults in Southwestern Nigeria. ニュートリエンツ (2026). DOI: 10.3390/nu18172825.