パンやパスタ、麺類などの食品には、食物繊維とでんぷんが同時に含まれていることがよくあります。この二つの成分は食品の中でただ混ざっているだけでなく、互いに影響し合いながら食品の食感や品質、さらには消化のされ方まで左右すると考えられています。今回紹介する研究では、小麦ふすま由来の不溶性食物繊維(WBIDF)と、性質の異なる3種類のトウモロコシでんぷん(普通種・ワキシー種・高アミロース種)を組み合わせたときに、何が起きるのかが調べられました。

研究でわかったこと

この研究では、普通トウモロコシでんぷん(NMS)、ワキシートウモロコシでんぷん(WMS)、高アミロースコーンスターチ(HAMS)という、アミロースの含有量が異なる3種類のでんぷんに、小麦ふすま由来の不溶性食物繊維(WBIDF)を加えて、その物理化学的な性質や構造、消化されやすさへの影響が検討されました。

まず、WBIDFを15%添加すると、離水率(ゲル状になった食品から水分が分離して出てくる割合)がNMSでは15.36%、WMSでは3.79%、HAMSでは40.19%まで低下したと報告されています。あわせて、糊化のしやすさ(パスティング特性)やレオロジー特性(流動・変形のしやすさ)、食感に関わるテクスチャー特性にも変化が見られたとされています。

消化のされやすさについても興味深い結果が示されています。WBIDFの添加により、いずれのでんぷんとの組み合わせでも「速く消化されるでんぷん(rapidly digestible starch)」の割合が減少したとのことです。一方で、消化されにくい「レジスタントスターチ」の割合は、添加量の範囲内で最大値を迎え、NMSでは40.92%、WMSでは31.47%、HAMSでは60.07%に達したと報告されています。

こうした変化の背景として、WBIDFとでんぷんの間には水素結合や物理的な絡み合い、水分を奪い合う「水分競合」といった相互作用が関わっており、これによってより緻密な構造が形成され、熱に対する安定性や結晶化の度合いも高まったことが示唆されています。研究チームは、これらの結果から、WBIDFがトウモロコシでんぷんの物理化学的な性質や栄養価を改善する可能性があり、消化されにくいでんぷんを使った食品づくりの理論的な基盤になりうると述べています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、実験室レベルで小麦ふすまの食物繊維とトウモロコシでんぷんを混ぜ合わせ、その物理的・化学的な性質や消化特性を分析したものです。人が実際にこうした食品を食べた場合の体内での消化・吸収や健康への影響を直接検証したものではない点には注意が必要です。また、一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。今後さらに研究が積み重ねられることで、理解が深まっていくと考えられます。

まとめ

小麦ふすま由来の不溶性食物繊維をトウモロコシでんぷんに加えることで、水分の分離が抑えられたり、消化されにくいレジスタントスターチの割合が増えたりする可能性が、この研究では示されました。でんぷんの種類によって変化の度合いは異なっていましたが、食物繊維とでんぷんの相互作用が食品の性質を左右しうるという点は、今後の食品開発を考えるうえで興味深い知見だといえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:小麦ふすま不溶性食物繊維がアミロース含量の異なるトウモロコシでんぷんの理化学的・構造的・消化特性に及ぼす影響(フード・ケミストリー:エックス・2026年07月)