がん治療の選択肢として、免疫の力を利用して腫瘍を攻撃する『免疫療法』が広がっています。近年、この治療の効果には腸内細菌の状態が関わっているのではないかという報告が増えており、腸内細菌に影響を与える身近な要素として食物繊維の摂取が注目されるようになりました。今回紹介するのは、がん患者における食物繊維摂取と免疫療法への反応との関係を、これまでの研究から整理した『スコーピングレビュー』と呼ばれるタイプの論文です。スコーピングレビューとは、ある テーマについて既存の研究がどれだけあり、何が分かっているかを見取り図のように整理する研究手法です。

著者らはMEDLINE、BVS、EMBASEという3つの医学文献データベースを使い、『腫瘍(Neoplasms)』『食物繊維(Dietary Fiber)』『免疫調節(Immunomodulation)』というキーワードで文献を検索しました。対象としたのは、免疫療法を受けているがん患者において、日常の食事・食事介入・サプリメントのいずれかの形で食物繊維の摂取量を調べ、それが免疫反応や腸内細菌、あるいは治療の臨床的な結果と関連しているかを検討した原著論文です。検索の結果325件の文献が見つかり、そのうち条件に合致したのは3件でした。この3件はいずれも、免疫チェックポイント阻害薬(主に抗PD-1療法)による治療を受けたメラノーマ(悪性黒色腫)患者を対象とした研究だったと報告されています。

研究でわかったこと

この3件の研究を通じて著者らが見出したのは、食物繊維の摂取量が多い患者ほど、治療への反応が良好である傾向や、腸内細菌の構成に好ましい変化が見られる傾向があったという点です。腸内細菌は免疫チェックポイント阻害薬の効果に影響を与える可能性が指摘されており、食物繊維はその腸内細菌に作用しうる身近な栄養素として位置づけられています。ただし、これはあくまで限られた研究の中で観察された関連であり、食物繊維の摂取が治療効果を高めると断定するものではない点に注意が必要です。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

今回のレビューで最終的に採用された研究はわずか3件にとどまります。著者らは、325件という多数の候補文献の中からこの数まで絞り込まれたこと自体が、この分野の研究がまだ少ないことを示していると述べています。また、対象となった患者はメラノーマに対して抗PD-1療法を中心とする免疫チェックポイント阻害薬を受けた人々に限られており、他の種類のがんや他の免疫療法についても同じ傾向が当てはまるかどうかは、この論文の範囲では分かりません。今回の情報には日本の研究機関や日本の食品・食習慣に関する具体的な言及は含まれておらず、著者らの所属はブラジルの大学の研究者らによるものです。あくまで一つのスコーピングレビューであり、今後さらに研究が積み重ねられることで理解が深まっていく段階にあるといえます。

まとめ

食物繊維は腸内細菌の状態を左右する要素の一つであり、この研究では免疫療法を受けるがん患者においてその摂取量と治療反応や腸内細菌の変化との間に関連が示唆されたと報告されています。ただし根拠となった研究は3件と少なく、対象もメラノーマ患者に限られているため、食物繊維の摂取が免疫療法の効果を高めると結論づけるにはさらなる研究が必要な段階です。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Sousa MES, de Almeida VD, da Silva Júnior RR, et al. Impact of Dietary Fiber Intake on the Immunological Response to Immunotherapy in Cancer Patients: A Scoping Review. キャンサー・メディシン (2026). DOI: 10.1002/cam4.72108. 原著ライセンス: cc-by-nc.