著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。
掲載誌:Journal of Food and Nutrition Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
大学への進学は、食事や運動の習慣が大きく変わる時期です。研究チームは、この変化が体重増加や、のちの慢性疾患のリスクを高める可能性があると指摘しています。大学で行われる健康づくりの取り組みは、個人の知識や行動に働きかけるものが中心で、学生自身の意見を取り入れて設計されることは少なく、生活環境や人間関係、学業の事情も十分に考慮されてこなかったといいます。
そこで著者らは、対象となる人々の必要や好み、行動を妨げる要因を事前に把握する「形成的研究」の手法を用いました。この研究の目的は、「Be Fit, Active, and Balanced(BeFAB)」という大きなプロジェクトで得た事前調査の結果を、対面式の料理・栄養・運動ワークショップの設計にどう生かしたかを示すことです。
何を調べたか
調査は、米国南東部の公立大学に在籍する18歳以上の学生170人を対象に、プログラム開始前に行われました。ある時点での状況をまとめて尋ねる横断調査です。参加者の平均年齢は20.5歳で、97%が黒人またはアフリカ系米国人でした。約3分の2がキャンパス内に住んでいました。
論文では、調査項目のうちワークショップづくりに関わるものを取り上げています。食事の回数や時間帯、果物と野菜の摂取量、食料の入手しやすさと費用、食べ物をどこで手に入れるか、調理の環境、運動の習慣や動機、好みなどです。結果は記述的に集計され、栄養学や看護学、運動学などさまざまな分野の専門家からなるチームが検討しました。そのうえで、講座の内容、実習、届け方をどう決めるかに結びつけていきました。学生や教員、地域の関係者でつくる諮問委員会も、学生の実情に合っているかについて意見を出しました。
主な結果と講座への反映
食事については、47%の学生が1日2食しか食べておらず、27%が日常的に朝食を抜き、決まった時間に食事をしていたのは26%でした。62%は果物と野菜を1日1〜2皿分しか食べておらず、5皿分以上は4%でした。多くの学生は、十分な台所設備がない寮などで暮らしていました。こうした結果から、不規則な授業日程にも合う手軽な食事の工夫を取り入れることになりました。具体的には、電子レンジや小型冷蔵庫だけでできる調理や、火を使わない料理、なじみのあるレシピに果物や野菜を加える実習です。
費用の面では、59%が食費を、57%が健康的な食事の費用を、少なくとも時々は心配していました。一方で、学内の食料支援(フードパントリー)を利用していたのは26%にとどまりました。ファストフードは週平均2.8日食べていました。著者らはこれらを踏まえ、予算に配慮したレシピ、買い物の工夫、学内の食料支援の情報を講座に盛り込みました。また、鶏肉やサンドイッチ、ピザ、パスタなど学生が好む身近な食べ物を出発点に、より健康的な材料や調理法を紹介する方針を立てました。ファストフードを避けるよう求めるだけでなく、外食時の選び方も扱うことにしています。
運動については、週3日以上体を動かしている学生が42%いた一方、「時々しか活動しない」と答えた学生も31%いました。運動の動機として挙がったのは、効果を実感すること、強くなったと感じること、楽しさ、ストレス解消などです。ウォーキングを好む学生は35%で、9割が友人となら少なくともある程度は運動しそうだと答えました。ただし、実際には半数近くが一人で運動していました。そこで講座では、道具がいらず続けやすいウォーキングを選び、仲間と行う形と一人で取り組める形の両方を用意しました。運動は減量だけでなく、楽しさやストレス解消といった利点を重視して紹介する方針です。
健康情報については、学生は医療者を最も信頼しており、SNSへの信頼は低い傾向でした。この結果から、信頼できる人が直接教える対面式を基本とし、デジタル教材で補う形がとられました。
研究が示すこと
著者らは、学生の実際の食べ方や暮らし方、費用の悩み、運動の好みを事前に調べることで、手軽さ、手頃な費用、なじみのある食べ物、寮の設備でできる調理、柔軟な運動の選択肢といった講座づくりの指針が得られたと報告しています。この事前調査が「Fuel & Fit」ワークショップシリーズの土台になりました。
なお、データは一つの大学の自己申告によるもので、回答数の少ない質問もあったことを、著者らは限界として挙げています。それでも本研究は、学生の声に基づく調査結果を、大学での健康づくり講座の具体的な内容や進め方へと結びつける過程の一例を示しています。
原著論文の著者・所属:Karen L Webb(Department of Nursing , North Carolina Central University , Durham , NC 27707 , USA)、Crystal McLean(Department of Nutrition Sciences , North Carolina Central University , Durham , NC 27707 , USA)、Aaron Moore(Department of Biotechnology Research Institute , North Carolina Central University , Durham , NC 27707 , USA)、Kimberly Powell(Department of Nutrition Sciences , North Carolina Central University , Durham , NC 27707 , USA)、Amy Linder(Department of Kinesiology and Recreation , North Carolina Central University , Durham , NC 27707 , USA)、Cherise B. Harrington(Department of Public Health Education , North Carolina Central University , Durham , NC 27707 , USA)、Bertha Nikki Wilson(Department of Biotechnology Research Institute , North Carolina Central University , Durham , NC 27707 , USA)、Carmen Linate(Department of Biotechnology Research Institute , North Carolina Central University , Durham , NC 27707 , USA)、Doris Campbell(Department of Biotechnology Research Institute , North Carolina Central University , Durham , NC 27707 , USA)、Kyla Hill(Department of Biotechnology Research Institute , North Carolina Central University , Durham , NC 27707 , USA)、Tamara Henry(Department of Prevention and Community Health , The George Washington University , Washington , DC 20052 , USA)、Irene A. Doherty(Department of Biotechnology Research Institute , North Carolina Central University , Durham , NC 27707 , USA)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Karen L Webb, Crystal McLean, Aaron Moore, et al. Using Formative Research to Develop Cooking, Nutrition, and Physical Activity Workshop Series for University Students. Journal of Food and Nutrition Research 2026-09-14. DOI: 10.12691/jfnr-14-8-1. 原著ライセンス:CC BY.