著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ごまペーストは、ごまを焙煎してすりつぶした半固形の調味料で、香ばしくナッツのような香りが特徴です。焙煎の温度や時間は、色や香りを大きく左右すると考えられてきました。ただし、市販品は原料や製法が製品ごとに異なるため、色や香りの違いを焙煎の強さだけで説明することはできません。

研究チームは、市販ごまペーストについて、色の濃さ(褐変の程度)、人が感じる香りの特徴、香りに関わる化学成分の三つがどう関係しているかを総合的に調べました。焙煎条件は製品から分からないため、著者らは実際の焙煎度ではなく、色や香りから見た「見かけ上の焙煎らしさ」として結果を解釈しています。

何をどう調べたか

対象は、色や香りの幅が広い市販ごまペースト15製品です。製品ごとに3パッケージを入手し、いずれも同じ日に開封して、同じ順序で分析しました。

色は分光測色計で測り、明るさを示すL*値、赤みや黄みを示す値、そしてそれらから計算する褐変指数で表しました。香りは、訓練を受けた13人の評価者が「ロースト・ナッツ様」「焦げ」「ごまらしさ」「青臭さ」「油脂感」の5項目の強さを0〜9点で採点しました。さらに、複数のセンサーで香り全体の傾向をとらえる電子鼻と、香り成分を一つずつ分離・同定するガスクロマトグラフィー質量分析を用いました。著者らは、人が分離した成分を直接かいで香りを確かめる方法や、成分を添加して香りの変化を確かめる実験も計画に含めています。

主な結果

色には製品間ではっきりした差がありました。最も明るい製品はS5、最も暗い製品はS11で、明るさが下がるほど赤みと黄みが増し、褐変指数も高くなる傾向がありました。明るさと褐変指数による分類では、明るく褐変の少ないS1〜S6と、中程度から暗い色で褐変の強いS7〜S15の二つのグループに分かれました。ただし、中間的な製品と焙煎らしさがより強い製品は、色だけでは十分に区別できませんでした。

香りの評価では、明るい色のS1〜S5は青臭さが強く、焙煎らしい香りは弱めでした。一方、S7〜S15は焙煎らしい香りが強く、青臭さは弱くなりました。中でもS11〜S15は、焦げや油脂感がより目立っていました。電子鼻による香り全体の分析でも、S1〜S6とS7〜S15はおおむね異なる位置に分布しました。

香り成分は合計91種類が検出され、そのうち14種類がピラジン類でした。ピラジン類は加熱による反応でできる化合物群で、ロースト香やナッツ様の香りに重要とされています。ピラジン類の合計量の平均は、S1〜S5では1キログラムあたり39.63マイクログラムでした。これに対し、S7〜S10では724.39マイクログラム、S11〜S15では2797.65マイクログラムでした。S11〜S15の平均はS1〜S5の約70.6倍と報告されています。

相関分析では、色が暗い(L*値が低い)製品ほど、ロースト・ナッツ様の香りと焦げの香りが強く、青臭さが弱いという強い関連が見られました。ピラジン類の合計量も、ロースト・ナッツ様の香りや焦げの香りの強さと正の関連を示し、青臭さとは負の関連を示しました。ただし、これらは同時に見られた傾向を示すもので、因果関係を直接示すものではありません。

注目されたのが製品S6です。S6は色の上では明るく褐変の少ないグループに入りましたが、ロースト・ナッツ様や焦げの香りは比較的強く、ピラジン類も他の明るい製品より大幅に多く含んでいました。著者らはこの結果から、色の変化と香りの変化は必ずしも足並みがそろわないと指摘しています。

研究が示すこと

市販ごまペーストでは、色が濃いほど、またピラジン類が多いほど焙煎らしい香りが強いという関係が、全体としてははっきり見られました。一方で、S6のように色と香りが一致しない製品もあり、著者らは、色だけでは市販品の焙煎の強さを決めつけられないと述べています。色の測定に、香りの評価や成分分析を組み合わせることで、製品ごとの焙煎らしさの違いをより多面的にとらえられることを、この研究は示しています。

原著論文の著者・所属:Sirou Gu(College of Food Engineering and Nutritional Science, Shaanxi Normal University, Xi’an 710119, China)、Ping Zhan(College of Food Engineering and Nutritional Science, Shaanxi Normal University, Xi’an 710119, China)、Zhonghong Wu(Institute of Agro-Products Processing, Xinjiang Key Laboratory of Processing and Preservation of Agricultural Products, Xinjiang Academy of Agricultural Science, Urumqi 830091, China)、Peng Wang(College of Food Engineering and Nutritional Science, Shaanxi Normal University, Xi’an 710119, China; Xinjiang Changji Agricultural Science and Technology Park Agricultural Science and Technology Development Co., Ltd., Changji 831100, China)、Honglei Tian(College of Food Engineering and Nutritional Science, Shaanxi Normal University, Xi’an 710119, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sirou Gu, Ping Zhan, Zhonghong Wu, et al. Color Darkening and Pyrazine Accumulation Associated with Apparent Roasting Intensity and Aroma Quality in Commercial Sesame Paste. Foods 2026-09-11. DOI: 10.3390/foods15183225. 原著ライセンス:CC BY.