肥満は、脂肪肝疾患をはじめとする代謝異常と深く関わる世界的な健康課題とされています。これまでの対策は生活習慣の見直しや薬物療法が中心でしたが、近年、日常的に口にできる「機能性食品」、なかでも発酵乳が新たな選択肢として注目を集めているといいます。今回紹介するのは、プロバイオティクス(体によいとされる微生物)を含む発酵乳が、肥満やその関連疾患である非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)にどう関わりうるかを、これまでの研究成果をもとに整理したレビュー論文です。
研究でわかったこと
この論文は新たな実験を行ったものではなく、プロバイオティクス入り発酵乳と脂質代謝に関するこれまでの研究を整理し、その仕組みを解説する「レビュー(総説)」です。特に注目しているのが、肝臓での脂質合成に関わる「SREBP-1c」というたんぱく質の働きです。
論文によると、プロバイオティクスによる発酵は腸内細菌叢(腸内フローラ)の構成を改善し、短鎖脂肪酸の産生を増やし、胆汁酸の代謝を調節することを通じて、肝臓での脂質合成(肝脂肪生成)を減少させる可能性があるとされています。具体的には、Lactobacillus fermentumやLactobacillus rhamnosusといったプロバイオティクス菌株が、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化、短鎖脂肪酸を介したGPR43というセンサーを通じたシグナル伝達、そして胆汁酸経路(FXR/FGF15)の調節など、複数の経路を介してSREBP-1cの発現を抑える働きを持つことが、これまでの前臨床(動物・細胞など)研究で報告されているといいます。
さらに、プロバイオティクス入り発酵乳は「腸・脾臓・肝臓の連関(腸-脾-肝軸)」を通じて全身の免疫バランスにも働きかけ、NAFLDに関連する慢性的な軽度の炎症を抑える可能性があるとされています。実際、これまでの動物実験や限られた臨床研究では、プロバイオティクス入り発酵乳がSREBP-1cの発現を低下させ、肝臓中の中性脂肪の蓄積を減らし、インスリン感受性(インスリンの効きやすさ)を改善したことが報告されているとまとめられています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この論文は、これまでに発表された研究成果を整理・要約したレビュー論文である点に注意が必要です。つまり、著者ら自身が新たに人や動物を対象とした実験を行った結果ではなく、既存の知見を俯瞰してメカニズムを整理したものです。論文中でも、これまでの臨床研究はまだ「限られた」ものであるとされており、著者らは治療効果を確かめ、目的に応じた製品設計を最適化するためには、さらなる臨床研究が必要だと述べています。特定の菌株や発酵乳製品が肥満や脂肪肝を「治す」と結論づけているわけではない点は、押さえておきたいポイントです。
まとめ
今回紹介した論文は、プロバイオティクスを含む発酵乳が、腸内細菌叢の改善や短鎖脂肪酸・胆汁酸代謝の調節を通じて、肝臓の脂質合成に関わるSREBP-1cという分子の働きを抑える可能性を示唆する、と報告しています。肥満に伴う脂肪肝などの問題に対する食事面からのアプローチとして発酵乳が有望視されている一方で、著者らはヒトを対象としたさらなる研究の必要性を強調しています。一つのレビュー論文であり、今後の研究の積み重ねが待たれる段階だといえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:肥満に対する代替療法としての発酵乳(インターナショナル・ジャーナル・オブ・フード・サイエンス・2026年01月)