著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Molecules

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:赤米の硬い外皮をどう生かすか

赤米は、ぬか(外側の皮の層)に色素や生理活性成分を多く含む穀物です。高齢者向け食品、クッキー、グルテンフリー食品などの原料として期待されています。一方で、ぬかの層は硬く緻密で、細胞壁が壁のように成分を閉じ込めています。著者らによると、通常の粉砕では粗い破片にしかならず、細胞内の成分が細胞壁の中に残ったままになります。

そこで研究チームが注目したのが「超微粉砕」です。これは穀物を非常に細かい粒子にする物理的な加工法です。ただし、細かくしすぎると、熱に弱い成分の分解、脂質の酸化、粉の固まりやすさや流れにくさといった問題も起こり得ます。玄米や小麦などでは研究例があるものの、赤米は穀粒の形やぬか層の緻密さ、でんぷんの組成が異なり、他の穀物の結果をそのまま当てはめることはできません。この研究は、粉砕の強さの違いが赤米粉の性質にどう影響するかを体系的に調べることを目的としています。

何を調べたか:4段階の細かさの赤米粉を比較

研究チームは、粉砕機の細かさ調整ダイヤルを4段階に設定し、最も粗い粉から最も細かい粉までの4種類の赤米粉を作りました。粉砕中は粉砕室を冷却水で冷やし、出てくる粉の温度を40℃未満に保っています。

これらの粉について、粒子の大きさ、色、粉の流れやすさ、電子顕微鏡で見た粒子の形、でんぷんの結晶構造、化学構造、総ポリフェノール量、水や油を保持する力、加熱したときの粘りの出方(糊化特性)を測定しました。さらに、試験管内で消化酵素を働かせ、でんぷんがどれだけ分解されるか(in vitro消化性)を調べました。

主な結果:細かくなるほど何が変わったか

粒子の中央の大きさは、最も粗い粉で35.6マイクロメートル、最も細かい粉で14.0マイクロメートルでした。粉が細かくなるにつれて、重さあたりの表面積は大きくなりました。電子顕微鏡では、細かい粉ほど粒子が壊れ、球に近い形で表面がなめらかになっていました。色は細かいほど明るくなり、赤みと黄みは弱まりました。一方で、粉は流れにくくなりました。著者らは、粒子同士の距離が近づき、粒子間に働く引力が強まったためと推測しています。

でんぷんの結晶の割合は、最も粗い粉の約20%から最も細かい粉の約12%へ低下しました。一方、化学構造の分析では新しい化学的な結合の形は見られませんでした。論文はこの結果を、主に粒子が小さくなっただけで、赤米の基本的な化学構造は大きく変わっていないことを示すものとしています。

総ポリフェノール量は粉砕によって増え、細かさの3段階目で最大となりました。最も細かい粉もほぼ同じ値でした。著者らは、細胞壁が壊れて閉じ込められていた成分が出てきたものの、3段階目で細胞壁の破砕がほぼ限界に達したと解釈しています。水を保持する力は1.26から1.56グラム毎グラムへ高まり、油を保持する力も高まりました。

加熱時の粘りには、粉砕の強さによって異なる傾向が見られました。軽く超微粉砕した粉は粘りが最も強くなりましたが、それ以上細かくすると粘りは徐々に下がりました。また、冷めたときにでんぷんが硬く戻る性質(老化)を示す値は、粉砕を強めるほど小さくなりました。試験管内の消化試験では、細かい粉ほどでんぷんが分解されやすく、最も粗い粉が最も分解されにくいという結果でした。

この研究が示すこと

この研究は、赤米を細かく挽く度合いによって、粉の見た目、扱いやすさ、成分の取り出されやすさ、加熱時の粘り、でんぷんの分解されやすさがそれぞれ異なる方向に変わることを示しました。たとえば、軽い超微粉砕は粘りを高め、強い超微粉砕は老化を抑える傾向がありました。著者らは、用途に応じて適した粉砕の強さを選ぶための基礎データとして、この結果を位置づけています。なお、消化性の結果は試験管内の実験によるもので、人の体内での働きを直接調べたものではありません。

原著論文の著者・所属:Xiaojuan Guo(College of Chemistry and Food Science, Nanchang Normal University, Nanchang 330023, China; Jiangxi Provincial Research Center for National Nutrition Health Education, Nanchang 330023, China)、Liang Shuai(College of Chemistry and Food Science, Nanchang Normal University, Nanchang 330023, China; Jiangxi Provincial Research Center for National Nutrition Health Education, Nanchang 330023, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xiaojuan Guo, Liang Shuai. Effects of Superfine Grinding on Physicochemical Properties and In Vitro Starch Digestibility of Red Rice Powder. Molecules 2026-10-11. DOI: 10.3390/molecules31203622. 原著ライセンス:CC BY.