心筋梗塞(心臓の血管が詰まり心筋の一部が壊死する病気)を経験した後、どのような食事を続けるとその後の生存に関係するのか。これまでの食事ガイドラインの多くは、心筋梗塞の既往がない一般の人々を対象にした研究データに基づいており、心筋梗塞を生き延びた人自身を対象に、食事パターンと生存との関連を検討したデータは限られていました。今回、米国の看護師健康調査(Nurses' Health Study)と医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-Up Study)の参加者データを用いて、この点を検討した研究がサーキュレーション誌に2026年08月に掲載予定です。
研究でわかったこと
研究チームは、非致死性の心筋梗塞を経験して生存した女性3277人(看護師健康調査)と男性2618人(医療従事者追跡調査)を対象としました。心筋梗塞と診断された年齢は平均68.2歳(標準偏差10.2)でした。食事内容は、妥当性が確認された食物摂取頻度調査票を用いて評価され、2〜4年ごとに更新されました。
心筋梗塞後の食事について、8種類の健康的な食事パターンへの遵守度をそれぞれスコア化しました。具体的には、Alternate Healthy Eating Index、Healthy Eating Index-2015、Alternate Mediterranean Diet Score、Dietary Approaches to Stop Hypertension(DASH)、Healthful Plant-Based Diet Index、炎症性食事パターンを逆転させた指標、高インスリン血症に関する食事指標を逆転させたもの、インスリン抵抗性に関する食事指標を逆転させたものの8つです。主な評価項目は総死亡、副次的な評価項目として心血管疾患による死亡と非致死性の心筋梗塞の再発が設定されました。
心筋梗塞後の平均15.7年間の追跡期間中に、3858人(65.4%)の死亡が確認され、そのうち1639人(死亡者の42.5%)が心血管疾患による死亡でした。8つの食事パターンいずれについても、遵守度が最も高いグループは最も低いグループと比べて総死亡リスクが低いという関連が一貫して見られました。ハザード比(値が低いほどリスクが低いことを示す指標)は、Alternate Healthy Eating Indexで0.67、Healthy Eating Index-2015で0.73、Alternate Mediterranean Diet Scoreで0.66、DASHで0.77、Healthful Plant-Based Diet Indexで0.74、炎症性食事パターンの逆転指標で0.77、インスリン抵抗性指標の逆転版で0.73、高インスリン血症指標の逆転版で0.71でした。同様の関連は、心血管疾患による死亡や非致死性の心筋梗塞の再発についても認められています。
さらに、心筋梗塞の診断前から診断後にかけてAlternate Healthy Eating Indexのスコアが改善した人では、死亡リスクが低い傾向が見られました(ハザード比0.86)。一方、多くの食事パターンにおいて、診断前後でスコアが低下した(食事の質が悪化した)場合には死亡リスクが高くなる関連が見られました。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、特定の食品や成分を取り上げたものではなく、複数の異なる考え方に基づく食事パターン全体の「質」と、心筋梗塞後の生存との関連を観察した前向きコホート研究です。示された関連は統計的な関連であり、食事パターンを変えることで死亡リスクが下がると断定するものではありません。また、対象は米国の看護師や医療従事者という特定の集団であり、食事内容は本人による回答に基づいて把握されています。一つの研究であり、これのみで結論が確定したわけではない点に留意が必要です。
まとめ
この研究では、心筋梗塞を経験した人において、全体的な食事の質が高い食事パターンへの遵守度が高いほど、総死亡・心血管死亡・心筋梗塞の再発のリスクが低いという関連が示されました。また、診断後に食事の質を改善したことも、より低い死亡リスクと関連していたと報告されています。研究チームは、心筋梗塞を経験した人に対する食事指導において、特定の一つの食事パターンにこだわるのではなく、全体的な食事の質に注目することの重要性を示唆する結果としています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:心筋梗塞生存者における様々な食事パターンの遵守と死亡率との関連:前向きコホート研究(サーキュレーション・2026年08月)